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いざという時のために!ちゃんと知っておきたい 心肺蘇生法  〜Vol.3 様々な場面で赤ちゃんの命を救う 〜

2回にわたって心肺蘇生法を取り上げてきましたが、「難しくて、私にはとてもできない」というママもいそうですね。
今回は、救急救命士で講習の指導もしている専門家に、「こうするといい」というコツ、「ここが大事」というポイントをお聞きしました。

●お話
池袋防災館インストラクター
救命救急士 山本 茂さん


消防隊、救急隊として35年間勤めた後、池袋防災館のインストラクターに。救急隊時代、命を救えた時には、言葉では言い表せないほど感激されたとのこと。
そうした体験も生かして、パパやママに心肺蘇生法や事故の予防を丁寧に分かりやすく指導していらっしゃいます。


1.脳がダメージを受けると元に戻らない|  2.赤ちゃんならではのポイント       
     3.できる範囲でやることが大切  |4.AED(自動体外式除細動器)って?


1.心肺停止で脳がダメージを受けると、元に戻らないんです


心臓の活動や呼吸が停止すると、血流が止まり、脳に酸素が届かなくなります。
脳細胞というのは、数分間酸素が供給されないだけで死滅してしまうんです。


そうですね。今の医学では、残念ながら元に戻せません。そうなると、命を取り留めたとしても神経障害を残してしまいます。
ですから、一刻も早く心肺蘇生法を行って、脳に酸素を送ることが大切なんですね。


様々なケースがありますが、受傷形態で多い順番では、まずは歩き始めの時期の転倒です。
まだ3頭身で不安定で転んでしまい、頭部をぶつけてしまったというようなケースです。
次に、階段などからの転落や、玄関のような段差のあるところからの墜落。
やけど、溺水(できすい)、異物の誤飲による窒息なども多いですね。


そうではなくて、家庭のお風呂や洗濯機です。
最近の洗濯機はふたが閉まりますが、ふたを閉め忘れていたり、ふたのない洗濯機に落ちたという事故が結構あります。
赤ちゃんは頭が重いので、中をのぞき込んでいて落っこっちゃっうんです。


煙で酸欠になることもありますし、気道熱傷と言って、空気の通り道がやけどを起こすと、呼吸ができなくなります。
また、体表面積の1/3以上のやけどになるとショックを起こして、心肺停止状態になる場合もあります。


そうですね。でも、非常に高い発熱で呼吸障害を起こしたりしますし、
SIDS(シズまたはエス・アイ・ディー・エス。乳幼児突然死症候群)というケースもあります。


もちろんです。心肺蘇生法はいろいろな場面で赤ちゃんの救命に役立ちます。
ですから、お母さんには是非心肺蘇生法をマスターして欲しいですね。

2.赤ちゃんならではのポイントがあります


難しいことはありませんよ。では、反応の確認(意識の確認)から行きましょう。
大人の場合は肩を叩いて反応を見ますが、赤ちゃんはあわてて叩くと強く叩きがちなので、足の裏を軽く叩いたりつねったりしながら、名前を呼んでください。この時、側頭部を押さえながら反応を見ますが、1歳未満だとまだ大泉門(額の少し上にある、頭蓋骨の継ぎ目の部分)が柔らかいので、ギュッとつかむのではなく、軽く手をかけるのがポイントです。
「○○ちゃん! ○○ちゃん! ○○ちゃん!」と3回呼びかけながら足の裏も同時に刺激し、何も反応がなければすぐに気道確保に移ります。


そうですね。頭を後ろに反らし、あご先を上げるというのが気道確保の基本です。
こうすると気道が開き、それだけで呼吸が回復することもあるし、 人工呼吸をする時もスムーズに空気が入っていきます。
ただ、赤ちゃんの気管は細く柔らかいので、 あまり大きく頭を反らせると逆に気管が曲がって閉塞してしまうんですね。
大人の場合はあごが天井を向くぐらい反らしますが、 赤ちゃんはわずかに反らせる程度でいいんです。
手を離すと元に戻ってしまいますから、 手を離したら再び両手で気道確保を実施してください。
胸骨圧迫の時も左手は常に側頭部を押さえて気道確保をキープしてください。

▲頭を反らせ、あご先を上げて気道を確保します。赤ちゃんの場合は頭を反らせすぎないことが大事。

▲頭を反らせ、あご先を上げて気道を確保します。赤ちゃんの場合は頭を反らせすぎないことが大事。


呼吸の確認をする場合は、お母さんが自分の左のほっぺを赤ちゃんの鼻と口に近づけます。
そして、目で胸とお腹の動きを見て、耳で呼吸音を聞いて、 ほっぺたで吐く息を感じ取る。見て聞いて感じて、4、5、6〜10と数え、10秒で確認します。
それで呼吸が確認できなければ、口を大きく開けて息を1回1秒で2回吹き込んでください。

▲左のほおを赤ちゃんの顔に近づけ、目と耳とほおで呼吸の有無を確認します。

▲左のほおを赤ちゃんの顔に近づけ、目と耳とほおで呼吸の有無を確認します。


いいえ。大人の場合は、“マウス・ツー・マウス”で口と口といいんですが、赤ちゃんは顔が小さいですから、お母さんの口で赤ちゃんの口と鼻を包み込んで、“口対口鼻法”で行います。
注意点は、胸が少し膨らむぐらいの量の空気を入れるということです。自分の手を鎖骨の少し下あたりに当てて2〜3回深呼吸をしてみると分かりますが、深呼吸をしても胸が多少上がる程度ですよね。ですから、息を吹き込みながら横目で赤ちゃんの胸を見て、胸が軽く上がっていたら、適切に空気が入っていると思っていいんです。


そうですね。強く吹き込むと、入りすぎた空気は胃に入ります。
そうなると胃がどんどん膨らんで肺を圧迫しますし、胃の内容物が逆流したりして、いいことは何もないんですね。
あわてているとつい強くなりがちですが、軽くでいいんです。


最初に、圧迫する位置を決めます。左右の乳頭を結んだ線の真ん中より指1本分、足側の位置が圧迫部位になりますが、もっと分かりやすいやり方をお教えしましょう。
お母さんの右手の人差し指・中指・薬指をそろえ、赤ちゃんの左右の乳頭を結んだ線の上に人差し指が重なるように置いてください。赤ちゃんは服を着たままで構いません。そして、左右の乳頭を結んだ線のちょうど真ん中(胸の中央にある胸骨と交差する部分)で3本の指を立て、人差し指だけ浮かせます。
この時の中指と薬指が圧迫部位になるので、そのまま2本の指で圧迫してください。
指を真っ直ぐに立てて、垂直に押すことが大切です。指の腹で押すと、斜めに押すことになるからです(1歳以上8歳未満の幼児の場合は、左右の乳頭を結んだ線の真ん中が圧迫部位。この部分を片手(または両手)の手のひらの付け根で、肘を曲げずに垂直に圧迫します)。

▲胸骨圧迫の位置を決めます。左右の乳頭を結んだ線の上に、人差し指を置きます。 ▲胸の中央を走っている胸骨と交差するところで指を立て、人差し指を浮かせます。この時の中指と薬指が圧迫部位になります。 ▲圧迫する時は指を真っ直ぐに立て、垂直に押すのがポイントです。

▲胸骨圧迫の位置を決めます。左右の乳頭を結んだ線の上に、人差し指を置きます。

▲胸の中央を走っている胸骨と交差するところで指を立て、人差し指を浮かせます。この時の中指と薬指が圧迫部位になります。

▲圧迫する時は指を真っ直ぐに立て、垂直に押すのがポイントです。




TVアニメの「ドラえもん」の前の主題歌、ご存じですか。あの歌がだいたい1分間に約100回のテンポなんですね。
他には、「あんたがたどこさ 肥後さ」のわらべ歌も。胸骨圧迫を練習する時は、「ドラえもん」の主題歌や「あんたがたどこさ」を意識しながら圧迫すると、リズミカルにテンポ良く押せると思いますよ。


圧迫することで心臓を強制的に動かして血液を循環させるので、かなり強く押しているように見えるかもしれません。
講習では「こんなに強く押して大丈夫ですか」と言うお母さんもいますが、これでも普段の40%ぐらいの血液しか心臓から出て行かないんですよと説明すると、「そうなんですか!?」とビックリされます。


胸骨圧迫を30回やったら人工呼吸を2回やり、また胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を医師や救急隊が来るまで繰り返します。
胸骨圧迫で押す位置は、そのつど確認してください。「このへんだな」と適当に決めるのはだめです。


3.完璧ではなくても、できる範囲でやることが大切です


完璧でなくてもいいんですよ。できる範囲でいいからやっていただきたいんです。
例えば、胸骨圧迫と人工呼吸を両方やるのが難しければ、胸骨圧迫を優先していい。救急隊と電話でやりとりして、指示に従って何とか心肺蘇生法を行ったら呼吸が回復した、というケースも結構あります。
「よく分からないから」「怖いから」と何もしないのが一番良くありません。


あわてないことですね。落ち着いて、あわてないで、よく見ることです。
まず深呼吸を3回するといいと思います。「深呼吸なんかしていないで、早く赤ちゃんを助けなければ……」と思われるかもしれませんが、深呼吸を3回してもロスタイムはせいぜい10秒。
それでしっかり落ち着けるなら、その方がいいのではないでしょうか。


心肺蘇生法を始めとした応急手当を学べる3時間の普通救命講習があります。
都内だと東京救急協会が行っていますし、消防署で受けられる場合もあります。最寄りの消防署で問い合わせてみるといいでしょう。ただしこれは、成人用の応急手当です。赤ちゃんや幼児の応急手当を学ぶコースとしては、8時間の上級救命講習があり、東京救急協会が行っています。
また、池袋防災館、本所防災館、立川防災館では、赤ちゃんのいるパパやママ向けに、1時間の応急手当講習を毎月行っています。


そんなことはありませんよ。今行われている心肺蘇生法は、1歳未満の乳児用・1歳以上8歳未満の小児用・8歳以上の成人用の三つの区分に分かれていますが、基本は同じで、それほど大きな違いがあるわけではありません。
成人用だけでもマスターできていれば、いざという時に救急隊と電話で話して赤ちゃんや幼児に応用することもできると思います。ですから、できれば1回講習を受けておくと安心です。
“百聞は一見にしかず”という言葉通りだと思いますよ。



心臓が細かいけいれんを起こして正常に血液を送り出せなくなった状態を、電気ショックを与えることにより、正常な働きに戻すのがAED(自動体外式除細動器)です。
2004年7月から一般の人でも使えるようになり、徐々に駅や空港、公共施設など設置場所も増えてきています。操作はとても簡単。AEDの電源を入れると自動音声で指示してくれるので、その指示に従うだけで、誰でも使えます。外出時に心臓の異常などを起こして倒れている人と遭遇するケースもありえるので、使い方を知っておけば役立つでしょう。
ただし、1歳未満の赤ちゃんには使えません。また、止まってしまった心臓を動かす機械ではありません。
心肺停止状態の場合にまずしなければならないのは、気道確保・人工呼吸・胸骨圧迫などの心肺蘇生法です。

▲AED(自動体外式除細動器)。電源を入れると音声で使い方を指示してくれます。

★Vol1. 心配蘇生法って?なんで大事なの?
★Vol2. How to 心肺蘇生法

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