Lesson 1 妊娠成立のメカニズム

赤ちゃんを授かるということは、たった1つの卵子と、多くのライバルの中から勝ち抜いた1つの精子がうまく結びついて、初めて成立する奇跡のストーリーです。

妊娠を考えたら、知っているようで意外と知らないことが多い、妊娠成立までの流れをまずおさらいしましょう。

監修／葛飾赤十字産院
副院長　鈴木俊治先生

精子＆卵子の特徴

精子：健康的な男性の場合、セックスをすると1ml 中2,000 万個以上の精子（体長0.05～0.06mm）を射精します。そのうち卵管にたどり着くのは約60 個で、受精に成功するのはその中の1個だけ。膣内に射精した精子の寿命は3～5日です。

卵子：健康的な女性の場合、卵子のもとになる原始卵胞は約700 万個あり、その中から毎月20 個程度が成長し、排卵期に1個の卵子（直径0.2ｍ）を排卵します。排卵後、受精が可能なのは24 時間以内です。

妊娠成立までの道のり

1.女性側の受け入れ準備スタート

月経が終わると、いくつもの女性ホルモンの働きにより、女性の体は、妊娠の準備を始めます。

卵巣では、毎月、左右どちらかの原始卵胞のうち20 個程度が成長します。その中で、主席卵胞と呼ばれる1個の卵胞だけが成長を続け、そして排卵します。

排卵が起こると、子宮内膜は受精卵が着床しやすいように、じょじょに厚く・やわらかくなり始めます。

ちなみに2 個の卵子が排卵され、それぞれが別の精子と受精し妊娠が成立することがあります。これが双子妊娠です。

2.精子と卵子が出合って受精

排卵された卵子は、卵管采から卵管に入り卵管膨大部で、約24時間精子を待ちます。

射精によって女性の膣内に入った精子は、卵子を目指して卵管膨大部に進みます。

そして最初に到着した、最も健康的でパワフルな1個の精子が、卵膜に入り込むと卵子はバリアを張って、ほかの精子の侵入をシャットアウトして受精が成立します。

3.着床に成功して妊娠成立！

受精卵は、1個から2個、4個、8個…と細胞分裂を繰り返しながら、卵管の中を子宮に向かって進みます。

そして無事子宮にたどり着き、子宮内膜にうまく着床すると妊娠成立！

妊娠周期でいうと妊娠2週6日～3週0日。月経周期でいうと、予定月経の約1週間前に当たります。

妊娠成立と同時に、女性の体の中では受精卵を育て始めます。

この時点では、まだ妊娠に気づくような兆候は現れませんが、子宮内膜では、胎盤（赤ちゃんの栄養補給源）のもとになる絨毛が少しずつ根のように広がり始めるなど、小さい命を守り・はぐくむ準備が始まります。

知ってた？排卵日のホント

以前は、計画的に妊娠を考えた場合、欠かせないのが基礎体温の記録でした。低温期から高温期に変わるとき、体温が急激に下がる日が排卵日で、そのあたりでパートナーとエッチを重ねると、妊娠の可能性が高まるというのが一般的な考え方でした。

しかし最近では、基礎体温を参考にするだけでは、正確な妊娠のタイミングはつかめないといわれています。その理由は、体温がガクンと下がる日と排卵が一致する女性は約１割しかいないうえ、8割の女性は、排卵があっても、基礎体温表には排卵日が顕著に表われないことが判明したからです。また基礎体温表で排卵日を知るには、低温期最終日が最も近いとされています。しかしその後、高温期が6日以上続かないと排卵があったとはいえません。

そのため高確率で妊娠のチャンスをつかむには、基礎体温表である程度の排卵日の予測を立てたうえ、市販の排卵検査薬を使用してチェックするのがいいでしょう。

★ホルモン異常などがある方は、排卵検査薬の結果が正確に出ない場合があります。