母乳育児をしていると痩せやすいって本当? 産後の生活で気をつけたいことは?【助産師が解説】

「母乳育児だと自然と体重が落ちるらしい」という話を聞いたことはありませんか? この話が本当であれば、ちょっと安心ですよね。でも、実際のところはどうなのでしょうか? 授乳中はお腹が空いて妊娠前よりもたくさん食べているという方も多いようです。今回は、杏林大学保健学部看護学科の准教授である助産師の加藤千晶先生に、「母乳育児は痩せやすい?」の本当のところと、母乳育児中のママたちの健康のために気を付けてほしいことなどを解説していただきました。

「母乳育児は痩せやすい」というウワサの根拠とは?

赤ちゃんは1回の授乳で100ml程度の母乳を飲み、1日の平均は約800mlと言われています。授乳の消費エネルギーは、母乳100mlで60キロカロリー程度です。そのため、800mlの母乳を授乳する場合、480キロカロリーのエネルギーを消費することに。このように、授乳中は多くのエネルギーを消費するので、「母乳育児は痩せやすい」と言われるのかもしれません。

授乳中のママたちは、妊娠前の1日に必要なカロリーエネルギーの量に、350キロカロリーを追加して摂取することが推奨されています。この「1日あたり、+350キロカロリー」は、母乳育児をしつつ、産後直後の体重を妊娠前と同じぐらいに戻すという考え方から出てきている数字です。産後は痩せることやダイエットに目を向けるのではなく、健康的に体重を妊娠前に戻す期間と考えてもらえるとよいでしょう。

産後のカラダ、痩せるよりまず考えて欲しいこと

眠っているママと赤ちゃん

産後すぐ~1ヵ月ごろまでのママの体は、妊娠・出産での変化やダメージを徐々に元に戻している時期です。大きくなった子宮が元の大きさに戻り、ゆるんだ骨盤も正常な位置や状態に戻っていきます。ホルモンバランスの変化も大きく、イライラや不眠などの不調が現れる場合も。そのためとくに産後すぐ~1ヵ月健診ごろは、バランスよく栄養をとって、体を十分に休ませることが大切です。赤ちゃんのお世話に追われ睡眠不足になりがちな時期ですが、パートナーや家族にサポートしてもらう、産後ケア施設を利用するなどしつつ、できるだけ心身ともにリラックスして過ごせるとよいですね。

母乳育児をしながら、健康的な生活・身体になるためには?

赤ちゃんの横でヨガをしているママ

母乳育児中、摂取カロリーを増やしつつ、健康的に体重を妊娠前に戻すために大切なことを3つお伝えします。

・対策1:カロリーオーバーをしない(食べすぎない)バランスのよい栄養摂取

バランスよく栄養をとるためには、「主食」、「主菜」、「副菜」がそろった食事をとることが大切です。授乳のために補う350キロカロリーを、3食それぞれの量を増やして調整してもいいですし、間食で補ってもいいでしょう。菓子や菓子パン類は消化が早いため、食べてもすぐにお腹が空いてしまい食べ過ぎてしまう恐れがあります。また、脂質が多くカロリーも高いため、食べ過ぎはカロリーオーバーの原因に。できるだけ菓子や菓子パンなどは控えるようにしましょう。母乳の約88%は水分でできているので、1日2L程度の水分補給も意識すると◎。

授乳中の栄養が不足する時はサプリメントもおすすめです

・対策2:1ヵ月健診以降の産後の運動について

1ヵ月健診で問題がなければ、体に負担をかけない程度の運動なら始めてもよいと言われています。ただし、ストレッチなどで体を整える運動を、無理のない範囲でゆっくり行うことが大切です。産後のダイエットや筋力低下が気になる人もいると思いますが、産後は生活を元に戻す(活動を戻す)ことを優先して考えるとよいでしょう。今までの生活に育児が加わるので、自然と活動量は増えると思います。だから、無理に運動を始めるよりは、体調が落ち着いた日などに赤ちゃんとの散歩を楽しみましょう。無理はせず、ゆっくり体重を元に戻す生活を意識するとよいでしょう。

・対策3:睡眠不足は食欲増進の要因にもなりやすい!パートナーや家族の協力でなるべく睡眠時間を確保しよう

出産直後の母乳育児は、しばらくは欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる自律授乳が基本となるため、授乳は頻回になり、ママはまとまった睡眠がとりづらくなります。睡眠不足は、イライラや不安感で食欲が増したり、グレリンというホルモンが増えて食欲増進したりすることがわかっています。高カロリーな食べ物が食べたくなる傾向もあるため、栄養バランスも崩れがちに。パートナーや家族の協力、家事代行サービス、産後ケア施設などの利用も検討して、ママがこまめに休める体制を作るといいでしょう。

まとめ

妊娠中は体重が増えすぎないように頑張ったから、産後は好きなものを食べるぞ……、と思っているママも多いでしょう。でも、「甘いもの」「カロリーの高いもの」などは、頑張っている自分へのご褒美に、時々おいしくいただく程度にするのがよいでしょう。「食事はしっかり、間食は時々」を目標にして、「目指せ妊娠前の体重!!」です。ママの食生活は、赤ちゃんの食生活にもつながっていくので、その点を意識しながら美味しく家族で食事を楽しんでくださいね。

【プロフィール】

加藤千晶先生

加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院に勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として、助産師教育に携わっている。ママたちの応援団として、ママ目線での情報発信、サポートを続けている。

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