赤ちゃんの成長と発達には、
母乳育児が第一の選択肢
母乳育児について
知っておきたいこと
母乳には、生後6ヵ月までの赤ちゃんの成長と発達をサポートするために必要なすべての栄養素が含まれています。
また母乳に含まれるのは栄養素だけではなく、ママがこれまでに経験した病原体に対して形成された抗体*1、腸内細菌叢を形成する母乳に特有のオリゴ糖、必須の免疫因子を伝達して最初の数日赤ちゃんを守るオキシステロールなど、赤ちゃんを感染症から保護するために役立つ因子が含まれています。
赤ちゃんが母乳を飲む最良の方法は、ママのおっぱいから直接授乳し、赤ちゃんが望むだけの頻度と量を継続することです。
肌と肌が触れ合うことで、ママと赤ちゃんの間には親密で愛情のこもった関係が生まれますが、直接授乳には時間、忍耐力、体力が必要であり、サポートも欠かせません。
直接授乳を成功させるためには、効果的な授乳姿勢、乳首のふくませ方、といった授乳方法を学ぶ必要があり、スムーズな直接授乳ができるようになるためには時間がかかることがあります。
赤ちゃんの健康へのメリット
- 急性感染のリスクを減らす
(下痢、髄膜炎、肺炎、耳感染、尿路感染など) - 慢性疾患の抑制
(1型糖尿病、潰瘍性大腸炎、クローン病など)
ママの健康へのメリット
- 循環器疾患のリスクを10%*2 程度減らす
- 閉経前の乳がんや卵巣がんのリスクを減らす
- 次の妊娠を遅らせ、出産間隔を改善
- その他の効果
(血圧低下、出血量低下、出産後の早期回復)
*1:WHO (2009) Infant and young child feeding: model chapter for textbooks for medical students and allied health professionals. Geneva. WHO
*2:PETERS SANNE A. E. et al,Breastfeeding and the Risk of MaternalCardiovascular Disease: A Prospective Study of 300 000 Chinese
Women.Journal of the American Heart Association. 2017. Accessed May 2020.
さく乳した母乳は、
第二の選択肢
赤ちゃんがママのおっぱいから直接授乳できない問題を抱えていたり、ママの健康状態や出産時の外傷からの回復状況によっては直接授乳が難しい場合があります。*3 このような場合には、さく乳した母乳を与える授乳方法が、第二の選択肢となります。
何らかの理由で直接授乳が叶わない場合、分娩後できるだけ早くさく乳を始めます。本来赤ちゃんに授乳するような2~3時間おきのタイミングでさく乳を続けることで、母乳分泌を開始し、母乳育児の確立・維持につなげます。
さく乳した母乳を与えるには、経管栄養、シリンジ、スプーン、カップ、哺乳びんなどの方法があり、ママと赤ちゃんの状況に合わせて用いられます。
さまざまな感染症や病気に罹るリスクが高い早産・極低出生体重児(1,500g未満で生まれた赤ちゃん)においては、母乳を与えることによって、生死に関わる壊死性腸炎に罹るリスクを、人工乳に比べおよそ1/3に低下させる効果があるといわれています。*4
しかし、すべてのママが出産直後から十分な母乳が出るわけではなく、必要量の母乳を与えられないこともあります。そのような場合、ドナーから寄付された母乳を低温殺菌処理した「ドナーミルク」を与えることが推奨されています。*5
*3:BOURDILLON K, McCAUSLAND T, and JONES S (2020) The impact of birth-related injury and pain on breastfeeding outcomes. Br J Midwifery28(1): 760-769.
*4:QUIGLEY MA. HENDERSON G. ANTHONY MY. ET AL. Formula milk versus donor breast milk for feeding preterm or low birth weight infants. Cochrane Database Syst Rev. 2007; (4):CD002971.
*5:早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言, 日本小児医療保健協議会栄養委員会, 日本小児科学会雑誌, 第123巻第7号1108-1111.
新生児が摂取できる
母乳の量
ママは最初、母乳がこんなに少なくていいのだろうかと心配になるかもしれませんが、最初の数週間に新生児が飲める母乳の量はほんの少しです。
新生児の胃の大きさと母乳の量
-
生後 1日目
さくらんぼ大
5-7ml -
3日目
くるみ大
22-27ml -
10日目
アプリコット大
60-80ml -
1カ月
たまご大
80-150ml
新生児の授乳回数
新生児期には、1~3時間ごと、あるいは24時間で最低でも8~12回授乳します。
特に、母乳は粉ミルクよりも消化されやすいため、母乳育児をしているママは、より頻繁に授乳する必要があります。
参考文献:・Based on average full-term baby weight.Scammon, R. and L. Doyle. Observations on the capacity of the stomach in the first ten days of postnatal life.Am JDis Child 1920; 20:516-38. Zangen, S., C. Di Lorenzo, T. Zangen, H. Mertz, L. Schwankowvsky, and P. Hyman. Rapid maturation of gastic relaxation in newborn infants.Pediatr Res 2001; 50(5):629-32.
・Kent, Jacqueline & Prime, Danielle & Garbin, Catherine. (2011). Principles for Maintaining or Increasing Breast Milk Production.Journal of obstetric, gynecologic, and neonatal nursing :JOGNN / NAACOG. 41.10.1111/j.1552-6909.2011.01313
母乳の成分
母乳は、初乳・移行乳・成熟乳と変化し、乳児が最初の6ヵ月を生きるのに必要な栄養素がすべて含まれています。また乳児の免疫力を強化し、感染症から身を守ってくれます。