赤ちゃんのお肌といえば、キメが細かく、つるつるすべすべでトラブルとは無縁のイメージがありますが、実はとてもデリケートです。大人よりも外部からの刺激を受けやすく、昨日までは何ともなかったのに、突然顔じゅうに湿疹ができて驚くママやパパも少なくありません。 そこで本記事では、赤ちゃんの肌荒れの原因や効果的なケア方法をわかりやすく解説します。敏感な赤ちゃんの肌を守るための知識を身につけ、健やかな成長をサポートしていきましょう。
- 1.赤ちゃんの肌荒れは起こりやすいもの? 肌トラブルの種類と原因
- 2.乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いは?
- 3.乳児湿疹を治す方法は? 放っておくとどうなる?
- 4.赤ちゃんの肌を健やかに保つための洗い方
- 5.乳児湿疹予防に欠かせない、保湿剤の正しい使い方
- 6.乳児湿疹におすすめの保湿成分、セラミドとは?
- 7.セラミドには種類がある? 赤ちゃんの肌にやさしいセラミドは?
1.赤ちゃんの肌荒れは起こりやすいもの?
肌トラブルの種類と原因
赤ちゃんの皮膚は大人の約半分の厚さしかなく、とても薄いうえに、アレルギーの原因物質や細菌・ウイルスなど、外界からの刺激や異物の侵入を防ぐバリア機能も未発達なため、肌トラブルが起こりやすいといえます。ほこり、乾燥、摩擦といった刺激に弱く、よだれや汗が原因でかぶれを起こすこともあります。
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赤ちゃんに起こりやすい3大肌トラブル
代表的な赤ちゃんの肌トラブルは以下の3つです。
1)脂漏性湿疹(しろうせいしっしん)
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ホルモンバランスの影響で皮脂分泌が盛んになる生後2週間から数週間の間に起こりやすい皮膚炎です。顔周りに湿疹を引き起こしやすく、特に髪の生え際や眉毛など皮脂腺の多い部分に黄色いかさぶたのような皮脂の塊が見られることが多いです。皮脂分泌が落ち着く生後3〜4ヵ月頃には症状が軽減します。
2)おむつかぶれ
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おむつによる蒸れや、おしっこやうんちと皮膚が接触することで皮膚に炎症が起きる症状のことです。皮膚が真っ赤にただれたり、あせものようなブツブツとした湿疹ができたりするほか、悪化すると皮膚がむけてしまい、湿ってじゅくじゅくしたり、血がにじんだりすることもあります。特におむつの中が蒸れやすい夏場に発生しやすい特徴があります。
3)あせも
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あせもとは、大量の汗をかくことが原因で発生します。赤ちゃんは大人と同じ数の汗腺を持っているため、体が小さい分、相対的に多くの汗をかきやすいのが特徴です。その結果、汗腺が詰まりやすく、あせもが発生しやすくなります。特にあせもができやすいのは、ひじ・ひざの内側、首筋、足の付け根、お尻など、汗腺が多く汗が溜まりやすい部位です。あせもはおむつかぶれ同様に、汗をかきやすい夏場に特に発生しやすい傾向があります。
このほかにも、以下のような肌トラブルがあります。
・生後1週間~1ヵ月頃によく見られる「新生児ニキビ」
・よだれが原因で口の周りがかぶれる「よだれかぶれ」
・おむつかぶれと見分けがつきにくい「皮膚真菌感染症(ひふしんきんかんせんしょう)(皮膚カンジダ症)」
また、生後数ヵ月が経って外出の機会が増えると、感染症由来の皮膚炎やアレルギー物質によるかぶれ、乾燥による湿疹などの肌トラブルが発生する場合もあります。
まだある!乳児期に見られる肌トラブル
新生児ニキビ
新生児の顔にできる赤や白色をした発疹で、皮脂の過剰な分泌が主な原因で起こります。
よだれかぶれ
おむつかぶれと並び、接触性皮膚炎の1つ。よだれが刺激となり、口の周りが炎症を起こします。ひどくなると口の周りが赤くただれ、赤い湿疹ができることも。歯が生え始める生後6ヵ月頃から多くみられます。
皮膚真菌感染症(皮膚カンジダ症)
皮膚に真菌というカビの一種である、カンジタ菌が繁殖することによって起こります。湿疹状をした発疹で、おむつかぶれと見分けがつきにくいのが特徴です。ただ、おむつかぶれはおむつがあたる部分に湿疹ができますが、皮膚真菌感染症(皮膚カンジダ症)は、股のくびれや足の付け根のシワなどにも広がります。
2.乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違いは?
乳児湿疹
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生後1年以内に発症する湿疹を総称したものです。代表的なものには脂漏性湿疹や新生児ニキビが挙げられます。おむつかぶれやあせもなども、湿疹が見られる場合には乳児湿疹の一種と考えられます。
アトピー性皮膚炎
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赤くなったり、小さなブツブツができたり、皮膚が厚くなったり、カサカサしたりしてかゆみのある湿疹が継続している状態の皮膚炎のこと。乳児湿疹には含まれませんが、湿疹との見分けが非常に難しいため、最終的な診断は皮膚科や小児科の医師に相談する必要があります。
ただ、アトピー性皮膚炎には、以下の特徴があります。
・特定の部位に症状が現れやすく、顔や首、ひじ、ひざ、さらにはおなかから背中にかけて出やすい傾向がある。
・左右対称に症状が現れることが多い。たとえば、右ひじに湿疹が出た場合、左ひじにも同様のカサカサした症状が出るなど。
もし乳児湿疹とアトピー性皮膚炎のような症状がある場合には、早めに医師に相談して専門的な診断を受けることをおすすめします。乳児湿疹がなかなか治らない場合も、アトピー性皮膚炎の可能性が考えられるため、早めに受診しましょう。
乳児湿疹ができやすい赤ちゃんとできにくい赤ちゃん
赤ちゃんにも個人差があります。皮脂分泌が多いお子さんもいれば、少ないお子さんもいます。また、汗をかきやすい子もいれば、そうでない子もいます。こうした個性によって、湿疹が出やすいかどうかは異なります。ただし、赤ちゃんは総じて大人に比べて肌トラブルが起きやすい状態にあると言えます。
3.乳児湿疹を治す方法は? 放っておくとどうなる?
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通常、乳児湿疹は成長に伴って自然に治癒することがほとんどです。しかし、炎症を繰り返したり、なかなか治らなかったりする場合は、肌のバリア機能が低下している可能性があります。この状態を放置すると、アレルゲン=アレルギーの原因物質が皮膚から侵入し、アレルギーを発症するリスクが高まることも。通常、アレルギーの原因物質は口から摂取する食べ物などですが、皮膚からアレルゲンが侵入することでアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを引き起こすリスクが高まります。
乳児湿疹が出たらすぐに病院を受診すべき?
以下の場合は、病院を受診しましょう。
<乳児湿疹の受診の目安>
・湿疹が膿んできた場合
・発熱を伴う場合
・湿疹を何度も繰り返している場合
・湿疹がなかなか治らない場合
・かゆみや赤みがひどい場合
特に、膿んだり発熱している場合には、すみやかに受診しましょう。
一方で、赤ちゃんは肌トラブルが起こりやすいため、乳児湿疹が出るたびに病院に行くことは現実的ではありません。また、軽い症状で病院に行くと、逆にほかの病気をもらってしまうリスクも。だからこそ、肌トラブルのないときから日々のスキンケアで乳児湿疹を予防して、きれいなお肌をキープすることが大切です。
赤ちゃんのうちは、自分でかゆいところを掻くことができません。湿疹などがない状態でもかゆみがあることもあり、しきりに顔をこすりつけたりする場合は、かゆがっている可能性があります。
かゆいのに掻けないことは、赤ちゃんにとって大きなストレスです。そのため、機嫌が悪くなったり、睡眠に支障をきたしたりするなど、赤ちゃんの基本的な健康に影響を及ぼす可能性も。赤ちゃんのお世話をするママやパパにとっても、大きな負担です。さらに、1歳近くになると、かゆい場所を掻けるようになる赤ちゃんも増え、かゆみに耐えきれず掻きむしることで、とびひを発症する場合もあります。
だからこそ、肌トラブルのないときから日々のスキンケアで乳児湿疹を予防して、きれいなお肌をキープすることが大切です。
4.赤ちゃんの肌を健やかに保つための洗い方
赤ちゃんの肌を健康に保つためには、常に清潔にし、適切に保湿することが重要です。赤ちゃんの肌は未熟でバリア機能が発達していないため、刺激に敏感であることは前述の通りです。汗や汚れを放置すると湿疹などの肌トラブルを引き起こす原因になるので、1日1回は洗浄料を使ってしっかりと汚れを落としてあげましょう。
赤ちゃんの体を洗うときのポイント
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1)手で洗う
スポンジやガーゼを使うと、肌を強くこすりすぎて赤ちゃんのデリケートは肌を傷つけてしまう可能性があります。手で洗ってあげるのがベストです。
2)「泡」でやさしく洗う
洗浄料は十分に泡立てて、その泡で揉みこむようにやさしく洗います。また、洗浄料は赤ちゃんの肌に合った低刺激のものを選びましょう。さらに、赤ちゃんを抱いた状態でも使いやすい、泡が出てくるタイプの製品がおすすめです。石鹸や液体ソープを使用する場合も、しっかり泡立ててから使うようにしましょう。
3)こすらない
こするのではなく、泡で汚れを浮かせて滑らせるように洗ってあげるのが、赤ちゃんにとってやさしい洗い方です。特に、首やひじ、ひざの裏など、汚れが溜まりやすい関節部分は丁寧に泡で洗いましょう。
4)洗浄成分を残さない
洗浄成分が肌に残ると、それが刺激となり肌トラブルの原因になります。とくに首のシワや、腕・脚のくびれ、わきの下は洗い残しが多い部位なので、弱めのシャワーでしっかりと洗い流してください。
5.乳児湿疹予防に欠かせない、
保湿剤の正しい使い方
赤ちゃんの体を洗った後は、伸びがよく肌になじみやすいローションなどでしっかりと保湿して肌のバリア機能を高めてあげることが大切です。特にお風呂上がりは肌の水分が急速に失われやすく、乾燥しやすい状態になるため、体を拭いた後はできるだけ早く保湿しましょう。
保湿剤を塗るときのポイント
1)肌にやさしく広げるように塗る
保湿剤を使用する際には、強くこすったり塗り込んだりせず、肌にやさしく広げるように塗りましょう。おでこ、鼻、ほっぺた、あごなどのパーツごとに保湿剤をのせてから伸ばすと、均一に塗ることができます。顔に塗った直後は少しベタつきを感じるかもしれませんが、時間が経つと肌になじんで気にならなくなります。
2)体は保湿剤を点々に置いてから塗り広げる
おなかやおしり、手、足など、広い面積に保湿剤を塗る際は、各部位に点々と保湿剤を置いてから、軽くなでるように塗り広げるのがコツです。首のシワ、腕や脚のくびれ、わきの下、ひじ、ひざ、股関節などなどの細かい部分も忘れずに塗りましょう。
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3)保湿剤はたっぷりと使う
保湿剤は、たっぷりと皮膚にのせるように塗るのが理想的です。塗布後は肌がうっすらと光り、ティッシュが軽く貼りつくくらいの量を目安にしましょう。バリア機能が弱い赤ちゃんの肌は、わずかな刺激でもかゆみを感じることがありますが、しっかり保湿をして乾燥を防ぐことで、かゆみが和らぐ場合が少なくありません。
保湿剤を塗るタイミング
保湿剤を塗るタイミングは、お風呂の後や朝のおむつ替えの際に、1日2回ほどが理想的です。尚、どの入浴方法(アウトバス法、沐浴剤を使った沐浴、お湯だけでの洗浄)であっても、入浴後は必ず保湿剤でしっかり保湿をしましょう。また、肌の乾燥が続くなど保湿が足りないと感じたら、お昼前後に保湿剤を塗るなど、スキンケアの回数を増やしてみましょう。
頭皮にも塗ったほうがいいの?
日常的には、頭皮の保湿は必須ではありません。ただし、乾燥がひどくカサカサしている場合には、お風呂上がりに保湿しましょう。保湿剤は顔や体に使っている保湿剤と同じものでOKです。日常的に使いやすいのは、水溶性の保湿成分がバランスよく含まれているミルクローションです。頭皮に塗る場合にも、粘度が少なく伸びのよいミルクローションがおすすめです。髪の毛をかき分けて、ローションを頭皮にのせ、軽く指先でなじませるように塗りましょう。
肌トラブルがない状態でも保湿は必要?
赤ちゃんの皮脂量は、生後1年間で大きく変化します。生後数ヵ月間は皮脂分泌が盛んでトラブルが起こりやすい一方、その時期を過ぎると皮脂の分泌がほとんどなくなり、肌が非常に乾燥しやすい状態になります。このため、肌トラブルがないときでも、適切な洗浄と保湿を行うことが大切です。トラブルがないときこそ、丁寧なスキンケアを習慣にすることが、つるつるすべすべの赤ちゃんの肌を健やかに保つ秘訣です。
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6.乳児湿疹におすすめの保湿成分、セラミドとは?
化粧水やローションなど、スキンケア製品でよく耳にする「セラミド」。セラミドとは、皮膚の表面にある「角層」に多く含まれるうるおい成分です。角層は細胞が積み重なった構造をしており、その細胞同士をつなぐ役割を果たし、角層内の水分の蒸発を防いでいるのが「細胞間脂質」と呼ばれる部分です。セラミドは、この細胞間脂質の主成分なのです。角層の構造は、よく「レンガとモルタル」に例えられます。レンガが細胞、モルタルがセラミドや細胞間脂質にあたります。つまり、セラミドは細胞同士をつなぎ合わせ、肌のバリア機能を保つのに欠かせない存在なのです。
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肌トラブルとセラミド不足の関係
セラミドには、何層にも水と油が重なり合って水分を保持する「ラメラ構造」を形成する働きがあります。セラミドが水分と結びついて層を作ることで、肌の水分を保つ仕組みです。セラミドが不足すると細胞間の水分が保てなくなり、肌の乾燥が進んだり、角層の並びが乱れることでバリア機能が低下します。その結果、外部刺激を受けやすくなり、肌トラブルが生じやすくなるのです。
セラミドは、生まれたときから角層の細胞間脂質に存在し、生成されています。しかし、洗浄によって流れ出てしまう性質があります。また、セラミドを生成するために必要な細胞間脂質は常に十分にあるわけではないため、生成が追いつかない場合があります。ほかにも、肌の乾燥そのものが、セラミドが流出する原因にもなります。
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セラミドは赤ちゃんや敏感肌の人に欠かせない成分
アトピー性皮膚炎のお子さんは、健康な肌の人と比べてセラミドの量が少ない傾向にあるため、保湿能力が弱く、角質層の水分量が不足しやすいとされています。肌のバリア機能が未発達な赤ちゃんの肌も、セラミドの量が不足しがちで、言うなれば敏感肌の状態と同じ状態です。
つまり、赤ちゃんや敏感肌の人が洗浄料や保湿剤を選ぶうえで、セラミドは欠かすことのできない成分なのです。
7.セラミドには種類がある?
赤ちゃんの肌にやさしいセラミドは?
セラミドは、原材料によって「ヒト型セラミド」「植物性セラミド」「天然セラミド」「擬似セラミド」の4種類に分類されます。
ヒト型セラミド
人の細胞間脂質に含まれているセラミドに似せて、おもに酵母から作られたセラミドのこと。肌になじみやすく、水分を保持する力に優れ、刺激から肌を守るバリア機能をサポートする働きがあります。
植物性セラミド
コメ、とうもろこし、イモ、大豆などの植物から抽出したセラミドのこと。ヒト型セラミドとは、一部構造的に異なります。
天然セラミド
馬や牛など動物由来のセラミドで、動物性セラミドとも呼ばれます。植物由来の植物性セラミドも含め、「天然セラミド」と呼ばれる場合もあります。
擬似セラミド
人の肌にあるセラミドに似た物質を化学的に合成して作られたセラミドのこと。安価ですが、ヒト型セラミドや天然セラミドに比べて効果は劣るとも言われています。
人の肌に使うなら、ヒト型セラミド
保湿剤などセラミド配合のスキンケアアイテムを選ぶときは、人の肌に含まれるセラミドに似せたヒト型セラミドを配合している製品がベストです。ヒト型セラミドは、4種類のセラミドの中でも最も肌になじみやすく保湿力に優れ、人の肌との親和性が高いためです。乳児湿疹をはじめ肌トラブルが起こりやすい赤ちゃんのデリケートなお肌は、敏感肌向けの保湿成分・セラミド配合の保湿剤でしっかりと保湿することが大切です。
乳児湿疹や肌トラブルを防ぐためには、正しい知識を持ち、適切なケアを続けることがポイントです。赤ちゃんの健やかな肌を守るために、洗い方や保湿剤の使い方を見直しながら、セラミドの力を上手に取り入れましょう。
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廣田さん
ピジョンホームプロダクツ株式会社 ベビースキンケア開発担当
赤ちゃん用の保湿剤を中心に、ベビースキンケア商品の開発を幅広く担当。