母乳育児をサポートする“さく乳”
母乳育児の“困った”、どうする?
母乳育児では赤ちゃんがママのおっぱいから飲むことになりますが、はじめはスムーズにいかないことがほとんど。「こうすれば誰でも必ずうまくいく」といった方法はありません。
授乳のタイミングや姿勢、ママの乳首の形や大きさ、赤ちゃんのお口の大きさや吸う力など十人十色でいろいろな要素があるので、自分たちなりのスタイルを見つけていく必要があります。トライ&エラーの繰り返しでだんだんと確立していくものなので、焦らず、じっくりと取り組んでみてください。
一方、何らかの理由で直接おっぱいから授乳できない場合もあります。
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赤ちゃんが入院中でママが先に退院している時
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赤ちゃんの吸う力がまだ強くなくておっぱいが出にくい時
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お胸が張って辛いけど赤ちゃんが寝てしまって飲んでくれない時
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赤ちゃんが1回の授乳で母乳を飲み切れず母乳が溜まって辛い時
など
そんな時、「さく乳」という方法があります。さく乳は、胸の張りを解消するために行うことがもっともよく知られていますが、さく乳が母乳育児の継続を助ける役割があることをご存知でしょうか。母乳の生成には直接おっぱいから何度も吸ってもらうことが一番ですが、直接おっぱいから飲めない場合には、さく乳をすることで母乳の分泌量を減らさず、キープすることができます。
赤ちゃんの飲む量に対して母乳が多い、または少ないなど不安を感じた時には、迷わず助産師さんに確認しましょう。
さく乳の方法
さく乳は、手による「手しぼり」と「さく乳器」を使う方法があります。
手しぼりは、最初のうちは力加減を助産師さんに見てもらいながらやってみましょう。無理なくやさしくおこなってくださいね。何度もさく乳する時には、さく乳器を使うことで手が疲れにくくなります。
さく乳器を使ったさく乳方法はこちらの動画をチェック!
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Point 1
さく乳口を赤ちゃんのお口と同じようにおっぱいとぴったりフィットさせましょう。
また、乳首の位置がさく乳口の中心にきているか、スキマがあいて空気が漏れていないか注意してください。
ぴったりフィットさせることで空気モレを防ぎ、効率よく快適にさく乳ができます。 -
Point 2
1回のさく乳にかかる時間は、片胸で10分前後を目安にしましょう。
さく乳の頻度が多いと手が疲れて腱鞘炎になることがあります。自動でさく乳ができる電動タイプなら手の疲れの心配もいらないので、おすすめですよ!
専門家からのアドバイス
大切なことはママがリラックスすること。ママがホッとした気持ちになることで分泌が促進されることがわかっています。
さく乳した母乳を哺乳びんなどで与える期間があっても、赤ちゃんの成長や、ママとのトライ&エラーを繰り返すことで、赤ちゃんがママのおっぱいから母乳を直接飲めるようになる日がやってきます。「直接授乳に戻りたい」「授乳が軌道に乗ったかも」「職場復帰を検討したい」といった節目を迎えたら、助産師へ都度ご相談くださいね。
さく乳した母乳は保存できる?
母乳の保存方法
赤ちゃんが1回の授乳で母乳を飲み切れず母乳が溜まって辛い時、赤ちゃんが入院中でママが先に退院している時など何らかの理由で赤ちゃんが直接母乳を飲めない時にさく乳した母乳は、冷凍または冷蔵で保存することができます。
専用のパックを使えば、冷凍なら3ヵ月、冷蔵なら24時間くらいまでを目安に衛生的に保存することが可能です。
冷凍(約-18℃) | 冷蔵(4℃以下) | |
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保存期間の目安 (さく乳直後の母乳) |
3ヵ月 ※(推奨) | 24時間 |
こんな時に | ママが疲れてしまった時や乳首にトラブル、外出や仕事などに備えて | 授乳のタイミングが合わなかった時、母乳をもう少し足したい時に |
冷凍した母乳を保冷バッグに入れれば、おうちでさく乳した大切な母乳を入院している赤ちゃんのもとへ届けることも可能になります。
また職場復帰後や、お子さまの入園後にも役立ちます。保育園によっては、母乳を預かってお子さんに与えてくれる施設もあるので、母乳育児を継続したい方は相談してみてくださいね。
さく乳した母乳の保存方法と
保存した母乳の使い方
母乳を保存するために用意するもの
・さく乳器
・母乳フリーザーパック
・母乳フリーザーパック アダプター
手しぼりの場合は、母乳を受ける哺乳びんなどが必要です。 すぐに飲ませず保存する場合は、衛生的に保存できる専用のパックを使いましょう。 アダプターを使うと、さく乳器から母乳フリーザーパックに直接さく乳できるので便利です。 母乳フリーザーパックとアダプターの使い方と、保存した母乳を授乳する方法はこちらの動画をチェック!
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Point 1
さく乳が終わったら、さく乳器とアダプターを取り外して、パックの中の空気をしっかり抜きます。チャックの端を指でおさえ、指を横にずらしながらチャックをしっかり閉じましょう。
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Point 2
電子レンジで温めると、母乳に含まれている大切な成分が壊れてしまいます。
必ず流水またはぬるま湯で解凍しましょう。
専門家からのアドバイス
大切な母乳を赤ちゃんへ無理なくお届けできるよう、母乳の保存グッズを活用したり、周りのサポーターにもどんどん頼ってくださいね。
妊娠中からはじめるおっぱいケア
妊娠中にできる母乳育児の準備は?
赤ちゃんは、舌を使ってママの乳首を引き出すようにおっぱいを飲むため、ママのおっぱいがやわらかいと吸いやすくなります。
そのため、妊娠中にできる準備として、赤ちゃんにとって吸いやすいやわらかいおっぱいになるよう「おっぱいケア」をしてみましょう。
やわらかさの目安は「耳たぶと同じくらい」です。
おっぱいケアのやり方
おっぱいケアには、「保湿」が大切です。
乳首と乳輪を保湿することで、やわらかいおっぱいに整っていきます。
保湿剤の種類 オイルやクリームなどいろいろなものがありますが、なかでもおすすめは、ラノリン・馬油などの100%動物由来のオイルか、バージンオリーブオイル・グレープシードオイルなどの植物由来のオイルです。
産後は毎日の授乳で乳首が乾燥したりキズができたりして痛みで授乳がつらくなることもあります。産後も保湿ケアが大切です。
専門家からのアドバイス
授乳ははじめからスムーズにできなくて当たり前です。授乳は赤ちゃんとママの共同作業であり、赤ちゃんに繰り返しおっぱいを吸ってもらうことで徐々に軌道にのっていくものです。
これからの赤ちゃんとの生活を想像してリラックスしながら、妊娠中からのおっぱいケアをはじめてみてくださいね。
乳首のかたちに悩んだら
自分の乳首のタイプは?
授乳のはじめの一歩は「自分のおっぱいを知る」ことです。
乳首にはさまざまなかたちがあります。
陥没乳頭は、乳首がおっぱいに入り込んでいる状態です。へん平乳頭は、乳首の突出が少なく平らになった状態の乳首です。どちらも乳頭が突出していない状態のため、赤ちゃんが慣れていないと吸いづらい場合があります。
また、乳首が大きめの方もいます。赤ちゃんが乳輪部まで深く含めない場合があるかもしれません。
事前に自分の乳首のタイプを知り、助産師さんへ相談することで、ケアの方法を具体的に教えてもらえて産後の授乳の見通しも立てやすくなりますよ。
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陥没乳頭(かんぼつにゅうとう)
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へん平乳頭(へんぺいにゅうとう)
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大きめの乳頭
陥没・へん平乳頭のサポートの仕方
乳頭が突出していない「陥没乳頭」「へん平乳頭」の方で、マッサージをしても乳頭が出づらい場合は、「乳頭吸引器」を使ってサポートもできます。助産師さんに相談のうえで使ってみてください。こちらは、助産師さんに相談のうえで使ってみてください。
専門家からのアドバイス
どんなおっぱいの形でも、赤ちゃんは吸えるようになります。焦らず、ご自身と赤ちゃんのペースで取り組んでみてくださいね。
乳首にキズや痛みが出たら
乳首にキズができて痛い時は?
キズや痛みなどおっぱいのトラブルで直接おっぱいをあげられない時は、助産師さんに早めに相談しましょう。
かかりつけの病院以外にも、病院や助産院に開設されている母乳外来や産後ケアセンターなど、地域のサポートを受けることもできます。精神的につらくなった時も無理せず相談しましょう。
またおっぱいトラブルがある時に、アイテムに頼ることもひとつの手です。
乳首に痛みがある時のサポート
乳首にキズや痛みのある時などに、乳首をカバーして授乳をやさしくサポートする保護アイテムとして、「乳頭保護器」があります。
乳首にキズができてしまった時、赤ちゃんの口が直接キズにあたらないよう保護しながら、継続して授乳ができます。
また陥没乳頭やへん平乳頭、乳首が小さくて赤ちゃんが吸いつきにくい時の補助としても授乳をサポートしてくれます。
乳頭保護器を一時的に使用しても、キズが回復したり、赤ちゃんの成長や、ママとのトライ&エラーを繰り返すことで、また直接授乳ができるようになります。
専門家からのアドバイス
うまく吸わせられない時、精神的につらくなった時などは、助産師さんへ早めに相談することが解決のカギになります。
ママだけ、夫婦2人だけで悩みを抱え込もうとはせず、周囲のサポートを受けながら進めていきましょう。
育児は誰かの手を借りて行うのがコツですよ!