Lesson 5 不妊治療を始めるには?

1~2年子作りに励んでも妊娠しない場合は、 念のため不妊専門医に相談したほうがいいでしょう。
しかし初めて受診する方にとっては、 不安やギモンが山積みだと思います。
不妊治療を始める前に知っておきたい病院選びのポイントや、 基本的な検査・治療について、産婦人科医・鈴木先生に教えていただきました。

STEP1 不妊検査・治療を始める前に、夫婦でよく相談する

不妊は、女性だけの問題ではありません。
不妊検査および治療を行なうには、男性側の協力が不可欠です。そのため受診する前に、夫婦でよく話し合ってください。 「治療は、長期化することがある」「治療費は、幾らぐらいかかる」「ときには精子の提供が必要である」など、不妊検査・治療に伴う負担を隠さずに話し、男性側の協力が得られるか確認しましょう。 また“赤ちゃんを授かる”ことに一生懸命になり過ぎると、夫婦仲が悪くなりセックスレスになってしまうカップルも。男性の場合は、子作りのストレスから射精障害や勃起障害になる方もいます。 不妊治療を乗り切るには、夫婦の絆が欠かせません。 お互いの意志を尊重し合いながら、「疲れているな」と思ったら少し休む余裕も忘れないでください。

STEP2 不妊専門クリニックを選ぶ

不妊治療は、長期化するケースが珍しくないため、病院選びは口コミやインターネットで調べるなど慎重に行ってください。
短期間で何度も病院を変えると、時間・費用の無駄になります。 検査・治療を始める前に、一度、相談に出向き、通院するかどうか決めてもいいでしょう。 病院選びのポイントは以下の通りです。

1 医師やスタッフとの相性

不妊治療は、カップルと医師が力を合わせて乗り越えるものです。そのため医師やスタッフとの信頼関係が大切!「質問に、わかりやすく答えてくれない」「治療の進め方に納得できない」「受診するたびに不安が募る」など不満がある場合は、早めに病院を変えたほうがいいでしょう。

2 通院のしやすさ

不妊治療は長期間に及ぶ場合があるため、家から近い、交通の便が良いなどラクに通院できる病院を選ぶと負担になりません。

3 高度生殖医療を行っている

検査の結果や治療の成果によっては、高度生殖医療(体外受精、顕微授精)が勧められる場合もあります。そのため初めから、高度生殖医療に対応可能な病院を選ぶのも一案です。しかし治療費が高額なこともあるため、カップルでよく話し合ってください。

4 妊娠率

施設ごとに公開している妊娠率も、病院選びの目安になります。ただし算出方法は、病院によって異なります。また高度生殖医療を厳密に必要とするカップルの妊娠率は低くなる傾向にあるため、数字だけを判断基準にするのは考えものです。

5 治療費

不妊治療は、長期化すればするほど治療費がかかります。また病院によって治療費が異なるため、最初にリサーチしておくと安心です。

STEP3 基本的な不妊検査

まずは検査して、不妊の原因を調べます。
検査は、低温期、排卵期、高温期の月経周期に合わせて行うため、すべての基本検査をするには1~2カ月必要です。
基本的な検査内容は以下の通りです。

初診

初めて受診する際は、約1カ月記録した基礎体温表を持参してください。排卵の有無や月経周期などを知る目安になります。

また初診では、子宮や卵巣の状態を内診で確認したり、子宮筋腫や卵巣腫瘍などの病気がないか超音波検査で調べます。

低音期の検査

採血をして、妊娠に関わるホルモンが正常に分泌されているかを検査するのをはじめ、卵管の通りが正常かX線造影検査で調べます。

高温期の検査

採血によって、高温期にホルモンが正常に分泌されているか調べるほか、必要に応じて超音波検査などを行います。

排卵期の検査

採血によって、排卵期にホルモンが正常に分泌されているか調べるのをはじめ、卵胞がどのぐらいの大きさに育っているか超音波検査で測定します。

またセックス後12時間以内に検査をして、精子の動きを確認する「フーナーテスト」なども行います。

また男性側は、マスターベーションによって精液を採取して濃度や精子の数、運動率などを調べる「精液検査」を行ないます。場合によっては、精密検査も必要です。

STEP4 不妊治療の開始

検査の結果によって、個々の状態に合わせた治療を開始します。 不妊治療の基本的な流れは、以下の通りです。

女性側にトラブルがある場合は…

ホルモン異常や排卵障害などがある場合は、ホルモンの働きを正常にする薬物療法が行なわれます。また卵管の詰まりや癒着によって妊娠が妨げられている可能性がある場合は、おなかに小さな穴を開けて腹腔鏡手術を行うことがあります。治療は、いずれも保険適用です。

1 タイミング法
保険適用

超音波検査や尿検査などで排卵日を予測し、タイミングを合わせてセックスします。とくに問題がないのに、3カ月~6カ月しても妊娠しない場合は人工授精に進みます。

2 人工授精
保険適用 一部自己負担

男性側の精子の数が少ない、運動率が悪いといったときに行います。マスタベーションで採取した精液を、洗浄・濃縮処理し、子宮腔内に直接注入します。治療費は、1回1~2万円が目安。約半年間行っても成果がない場合は、体外受精が検討されます。

3 体外受精
保険適用外 高度生殖医療

卵子と精子を体外に取り出し、培養液の中で受精させて子宮内に戻す方法。採卵前には、排卵誘発剤を投与し、子宮内に戻したあともスムーズに着床できるようにホルモンを投与します。治療費は、1回約25~35万円が目安です。

4 顕微受精
保険適用外 高度生殖医療

顕微鏡を見ながら、極細のガラス管で運動率の良い精子を1つ取り出し、卵子の細胞質の中に注入し受精を促します。この方法によって、男性不妊の治療が大きく前進したものの、治療費は1回につき約30~40万円以上と高額です。

※治療費は、あくまでも目安です。病院によって異なるため必ず確認を!

取材協力/葛飾赤十字産院(東京都葛飾区)

産婦人科・小児科を併設し、安全・快適な医療を目指す。産婦人科外来のほかに、“自分らしいお産” をサポートする助産師外来やマタニティヨガ、マタニティビクス、双子妊娠のためのツインクラスなど各種教室を開催するなど、幅広いサービスが妊婦さんから好評!

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