vol.5 30歳からの妊娠・出産・子育て

妊娠・出産は、年齢を増すごとにリスクが高まるのが事実。35歳以上で出産する「高齢出産」では、流産の確率が高まるなど不安材料も増えます。
しかし30歳以降の出産は、年々増加傾向にあります。30歳からの妊娠・出産・子育ては、本当にデメリットばかりなの?
3人の子どものママでもある産婦人科医・水谷美貴先生にお話をうかがいました。また万一に備えて知っておきたい不妊についても紹介します。

監修/みきレディースクリニック 院長・水谷美貴先生

プロフィール●日本大学医学部卒業。同大産婦人科、関連病院勤務を経て、2008 年秋、同クリニック(千葉県船橋市)を開業。4歳、7歳、10 歳の3児のママでもあります。

Part1 赤ちゃんはいつまで産めるの?

高齢出産について知っておこう

35歳以上の出産を高齢出産と言います。
高齢出産をはじめとした、30代の初産は年々増加傾向にあります。 30代以降の妊娠・出産は、20代と比べると一般的に、1.経済的に余裕がある、2.精神的に成熟している、3.自分の時間を謳歌した分、子育てに積極的になれる、4.これまで培ってきた豊富な経験・知識が、子育てに活かせる‐‐といったメリットがあります。

しかし以下のような注意点もあります。

流産

流産の主な原因は染色体異常です。35歳以上の妊娠は、とくに加齢に伴い、卵子が老化していたり、精子の機能が低下している可能性が高く、染色体異常を起こしやすいと考えられています。そのため流産しやすいのです。

赤ちゃんの染色体異常

赤ちゃんにダウン症などの染色体異常が見られる確率は、ママの年齢を追うごとに高くなります。そのため高齢出産の場合は希望者に、妊娠15~20週ぐらいに血液検査をして、染色体異常のスクリーニング検査「母体血清マーカーテスト」などが行われます。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群の発症率は、35歳以上の場合、20代の約2倍と言われています。これは加齢に伴い血圧が高くなったり、血管が硬くなるのが原因の1つです。重症化すると、胎児が順調に発育しない子宮内胎児発育遅延や胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離などを起こす可能性も増え、母子ともに危険な状態になることがあります。

ほかにも高齢出産は、「難産の確率が高い」「帝王切開になりやすい」とも言われています。
しかしこれらはあくまでも統計上の話。こうした注意点があることを心に留めておく必要はありますが、過度に神経質になることはありません。高齢出産でも、元気な赤ちゃんを産んでいるママはたくさんいます!

30歳以上で妊娠したピジョンママにリサーチ!

Q:何歳で妊娠しましたか?

ママたち81名にうかがったところ、30歳~34歳までに妊娠した方が約80%いました。30代で妊娠した理由は、「晩婚だったため」「不妊治療に時間がかかったため」「仕事が忙しくて、タイミングがつかめなかった」など多岐に渡りました。

Q:妊娠&出産は、少しでも若いうちがいいと思いますか?

ママたち88名にうかがったところ、60%以上のママたちがYESと回答。「高齢出産のリスクを考えると、やはり若いうちに産んだほうがいいと思う」「子どもが走り回ったりすると着いて行くのが大変」など理由はさまざまでした。またNOと回答したママからは、「35歳で妊娠したけど、今、とても幸せだから!」「20代に自由な生活を楽しんだからこそ、不満なく子育てができる」といった声も。どちらとも言えないというママの中には、「34歳で出産。今はいいけど2人目を考えると微妙」という意見もありました。

ママたちの体験談公開!30歳からの出産メリット&デメリット

デメリット
陣痛促進剤を使っても産まれない!(なおりんさん)

35歳で初めて妊娠しましたが、高齢出産のためか予定日よりも約2週間以上遅れての出産でした。お産がなかなか進まないため陣痛促進剤を使ったのですが、陣痛の痛みは来るものの、なかなか子宮口が開かないんです! “ 体力の限界” を何度感じたことか…。

メリット
自分のことをしたうえで、子どもが産めるって幸せ!(m0chiさん)

30代の出産は、若いうちに自分のやりたいことができる点がいいと思います。私の場合は、仕事で独立後、33歳で妊娠しました。もし20代で子どもができていたら、心のどこかで「こんな仕事がしたかった」「あのとき、こうしていたら…」と後悔していたと思います。妊娠適齢期は、人それぞれなのでは!?

デメリット
高齢出産のため心配がいろいろ(キムキムさん)

37歳で妊娠した私。高齢出産は、さまざまなリスクがあることは知っていました。しかしそれが現実のものとなると受け止めるのが大変でした。医師からは「高齢出産は、染色体異常の確率が高いから」と検査を勧められたり、「高齢出産は、流産の確率も高い」と言われ出産まで気が気でありませんでした。

30歳からの子育てメリット&デメリット

メリット
寛大に子育てできるのは、今だから!?(トーマスママさん)

私は34歳で妊娠。2歳2カ月の息子を育てています。子どもを生んで初めてわかったのですが、子育ては忍耐力の世界。「ダメ!」と言ったって、子どもはすぐに言うことを聞かないし、私がどんなに忙しくても「待ってね」が通用しない。トイレやお風呂にだって、ゆっくり入れません。個人差はあるでしょうが、20 代の私には耐えられないだろうな~。

デメリット
コンディションの悪さが隠せません(とあママさん)

33歳で妊娠し、子どもが生まれてから、ずっと寝不足気味です。そのため気がつけば、肌はボロボロだし、目の下のくまが消えなくなってしまって…。20代だと少しくらい無理しても、こういうトラブルはないんだろうな~と思います。

デメリット
産後、ずっと体が痛い!(パンさん)

35歳で妊娠。今、2カ月のベビーの子育て真っ最中です。妊娠中は、年齢の壁を感じなかったのですが、歳のせいかな!?と思うのが、腰痛と全身の関節痛が産後ずっと続いていること。赤ちゃんが泣くたび、動くのがホントつらくて…。最近、夜中の3~4時間おきの授乳からやっと開放されましたが、今でも続いていたら倒れていると思います。

30代、40代でも安産の方はたくさんいます

妊娠・出産は、加齢とともにリスクが高まると言われています。
しかし30代、40代の初産でも、定期的にスポーツをするなどハツラツと生活していた方は、トラブルなく元気な赤ちゃんを産んでいる場合が多いようです。
また年齢的な問題を自覚しているため、妊娠・出産についてよく勉強し、医師のアドバイスを素直に受け入れる方が多いように思います。

子育てが大変なときは周りの人に頼って

30歳以降で出産すると、ハードな子育ての現実に直面したとき「やっぱり若いうちに産んだほうが良かった…」と思うママが少なくないようです。
私も3人の子どもがいますが、夜中の授乳で毎日3時間ごとに起きるのが、本当につらかった時期があります。「自宅でも当直…」と何度、思ったことか(笑)。しかし「大変だな」と思うのは一時的なこと。子どもの可愛い顔を見たり、可愛い声を聞けば、疲れが吹き飛び、悩みも忘れてしまうはず!もし子育てが負担なときは、パパや実家、ママ友達などを頼ってください。ママひとりで抱え込まないことが大切です。

妊娠しないときは・・・

不妊について知っておこう

妊娠を希望しているのに、2年間夫婦生活を営んでも子どもが授からない場合を「不妊」と言います。

不妊の原因はさまざまで、女性の場合は卵管や卵の問題をはじめ、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系の病気が原因のことも。
一方男性の場合は、運動率が悪い、数が少ないといった精子の問題をはじめ、疲労やストレスなどが不妊に繋がることもあります。また原因不明の場合もあります。
排卵日にタイミングを合わせてセックスしているのに、2年近く子どもが授からない場合は、念のため不妊専門クリニックを受診したほうがいいでしょう。

また不妊治療は長期化することがあるため、30 歳前後の方は早めに受診してください。
なお不妊検査・治療は、夫婦で臨むのがベストです。しかし男性側の協力が得られない場合は、まずは女性側が先に検査を。そして時期を見計らい、再度協力を求めましょう。

不妊治療をしたピジョンママにリサーチ!

Q:何年妊娠しなかったために不妊治療をしましたか?

不妊治療を開始するまでの期間はさまざま。「念のためと思い、半年で受診」という方がいる一方で、「“そのうちできる”と思っていたのになかなか妊娠せず、結婚5年目に不妊治療を開始しました」「“おかしいな? ”と思ったものの不妊治療する勇気がなくて、治療を決意するまで6年かかりました」という意見もありました。

Q:不妊治療の結果、妊娠しましたか?

不妊治療した30名のママたちにうかがったところ、「不妊治療に成功した」という方が7割いました。ママたちからは「卵管の詰まりを治療したら妊娠!」「2回目の体外受精に成功」といった治療の成果が聞かれました。またNOと回答した方の中で目立ったのが「不妊治療をやめてから妊娠した」という意見でした。どちらとも言えないと回答した方は、「治療を一時休んでいる間、妊娠したため」と言う理由が大半でした。

ママたちの体験談公開!不妊治療、私の場合…

治療費約5万円
治療を一時中断したら妊娠!(しばっこさん)

8カ月間の不妊治療を経て、34歳で妊娠しました。私の場合は、とくに原因が見当たらなかったため、半年ほど医師の指導に従いタイミング法で様子をみることに。その後、妊娠に欠かせない黄体ホルモン値が低いと診断され、ホルモン注射による治療などを行いました。しかしなかなか結果が出ないため、治療を少し休んで「人工授精にトライしようか?」と夫婦で話し合っていた矢先、妊娠が判明!本当に嬉しかったです。

治療費約20万円
30才から本気で治療をスタート(マッキーチャさん)

1年間の不妊治療の末、31歳で妊娠しました。私の場合は、結婚半年後に出血が1カ月以上続き、近所の婦人科へ。「無排卵の可能性がある」と診断され治療を開始したものの、そのときは真剣に取り組まなかったんです。それから約5年が経ち、30歳になったとき本気で子作りを考えて、不妊専門クリニックを受診しました。検査の結果、PCOS(多のう胞性卵巣症候群・卵巣の皮膜が硬く、卵胞が育っているのに飛び出せない状態)と診断され不妊治療を開始。排卵誘発剤によって自然妊娠しました。

治療費約120万円
3回目の体外受精で授かりました(コタツさん)

1年3カ月不妊治療を続けて、32歳で妊娠しました。医師に、排卵日を調べてもらいトライするタイミング法などを試みたのですが成果がなく、結局、保険適用外の体外受精にチャレンジすることに。3回目で無事、赤ちゃんを授かりました! 私の場合は「原因不明」と診断されたため、さまざまな治療法で妊娠の可能性を探ったのですが、それが本当につらくて…。でも息子の笑顔を見るたび、「あきらめなくて良かった」と思います。

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