vol.6 子どもができても、仕事は続けられる?

子作りを考えるとき、仕事と子育ての両立の壁に悩む女性は少なくありません。 なかには“子どもができたら働くのは無理!”とはなから諦めてしまう人も…。

しかし世の中には、子どもを抱えながらイキイキと仕事をする ワーキングママがたくさんいます!

妊娠中&産後に仕事をするポイントを“(株)キャリアネットワーク” 安藤博子さんにうかがいました。

ピジョンママたちの、子育て&仕事両立体験談も紹介します。

監修/(株)キャリアネットワーク 安藤博子さん

プロフィール●人材育成・研修やキャリアアドバイスなどのキャリアサポート関連事業を中心とする(株)キャリアネットワーク 常務取締役経営企画室長。全国の企業や行政で「両立支援セミナー」などを実施するほか、神奈川県男女共同参画審議会女性人材活用促進部会委員などを務める。書籍「ワーキングマザーの妊娠・出産・育児」(成美堂出版)なども監修。プライベートでは、3人の子どもの母親でもある。

STEP1 子どもができたら・・・

妊娠中に働くポイント

妊娠中とくに気を付けたいのが、職場の人への配慮です。なかには不妊で悩んでいる人がいたり、家族の介護で本当は介護休業をとりたいと思っている人がいるかも知れません。また子どもができても、正社員ならば同等に働くべき!と考える人もいるでしょう。

そうしたさまざまな立場や価値観の人がいる環境の中で、「妊娠しているのだから、産休・育休をとるのは当然!」「妊婦なのだから、残業はしなくてもいい」と言う言動は、職場の雰囲気を壊し、士気の低下にも繋がります。

そのため妊娠中は、謙虚な気持ちで周りにできるだけ迷惑をかけないように配慮するのがマナーです。具体的なポイントは、以下の通りです。

ポイント1 妊娠の報告をする

妊娠が判明したら、早めに職場に報告しましょう。 報告は、まず上司に直接伝えるのがビジネスマナー。報告の前に、うわさ話などから上司の耳に入るのはくれぐれも避けてください。
産後、復職を希望する場合は“子どもができても仕事を続けたい!”という熱意を伝えることが重要です。

また以下の点について話し合えるように準備しておきましょう。

  • 出産予定日と産休、育休の予定
  • 現在の体調
  • 復帰後、予定している子どもの預け先
  • 今後の仕事の進め方
  • 妊婦健診の日は、仕事はどうするか?

例えば慎重な上司の場合は、「保育園に入園できなかったら?」「子どもが病気のときは?」など、あれこれ質問してくることもあります。そのような場合に備えて「保育園に入園できない場合は、私の実家に子どもを預けます」など、上司が納得する答えを用意しておくと話し合いがスムーズです。

ポイント2 引き継ぎをする

上司と産休、育休の時期を相談したら、タイミングを見計らい後任者にしっかり引き継ぎをします。

妊娠中は、急に入院したり、早産になるなど何が起こるかわかりません。そのため引き継ぎは、余裕をもって進めることが肝心! 安定期に入ったらマニュアルなどの作成を始め、妊娠7ヵ月ごろから後任者に引継ぎを始めましょう。

万一の場合に備え、上司と後任者には産休中の連絡先を教えることも忘れずに。

ポイント3 無理をしない

妊娠中は、これまで健康な人であっても、つわりがひどくて起き上がれない、つわりのためにだるい、眠いなど体調が優れないことが多々あります。ときには急にお腹の張りを感じて、安静が必要になる場合も。そのため無理は禁物です。

1.電車の中で吐きそうになる場合はエチケット袋を用意する、2.お腹が大きくなり、トイレが近いときはドア付近に座る、3.職場では、冷え対策にひざ掛けを用意する‐といった対策も忘れずに。

また母子手帳には、医師が体調を考慮して勤務時の注意点などを記入する「母性健康管理指導事項連絡カード」があります。同カードについて、一度、上司にも説明しておきましょう。体調不良で休養や勤務時間の短縮を希望する場合は、医師と相談し、必要な場合は同カードを提出するといいでしょう。

ポイント4 よりよい人間関係を築く

ポイント3でも触れたように、妊娠中は体調不良で休みがちになるなど、周囲のサポートが欠かせない時期です。また産休、育休で長期間休むため、上司や同僚に負担をかけるのは確かです。

しかし“妊娠中なのだから仕方がない!”という開き直った言動はNG。「ありがとうございます」「ご迷惑をおかけします」という謙虚な気持ちを忘れないでください。
また妊娠中でもできることは率先して行い、なるべくgive and takeの関係を築きましょう。

ポイント5 服装に気をつける

お腹が目立ってくると、マタニティウェアを着ることになりますが、服装がラフになり過ぎないように気を付けましょう。そうした服装は、職場の雰囲気を乱すほか、周囲に戦力外の印象を与えます。

妊娠中でも、無理のない範囲でビジネススタイルを心がけてください。ただし靴は、ローヒールで安定性のあるものを。

ちなみに産休とは!?

産休とは産前産後休業の略。労働基準法で定められた制度で、出産予定日を基準に産前休業を最低6週間、産後休業を最低8週間とることができます。 職場によっては、産休がとりづらいこともあるでしょうが、産後8週間は仕事をすることが法律で禁止されています。母子の健康のためにも、産後は必ず休みましょう。

子供が生まれたら

育児中の過ごし方のポイント

育休中は、子育てに没頭するだけでなく、復職に向けて準備を進めることも大切です。

子育てと仕事の両立は、多くの人の助けがないと乗り切れない一面があります。例えば急な休日出勤で、子どもの預け先がなく困ったとき、助けてくれるのは近所のママ友達かも知れません。育休中は、そうした人間関係を築くことも重要です。

また自治体などが主宰する母親学級や離乳食講座、赤ちゃん連れのママたちが集う会などに積極的に参加し、地域の情報を集めましょう。保育園のことや子どもが病気をした場合のサポートサービスなど、復職に役立つ情報を得られることもあります。
育休中の過ごし方のポイントは、以下の通りです。

ポイント1 職場に出産報告をする

出産報告は、上司に直接します。職場では「そろそろ産まれたかな?」と話題になっていたり、得意先から「もう産まれた?」と聞かれることもあるでしょう。そのため報告は早めに。出産の当日または翌日には電話で連絡をしましょう。体調が優れないときは、とりあえず家族に連絡してもらい、体調が回復してから改めて電話で報告します。

ポイント2 職場と連絡を取り合う

産休中、育休中も月1回ぐらいは職場の人にメールで連絡を入れましょう。

休み中だからと言って連絡が途絶えると、仕事へのブランクはより深くなります。産休をとった直後には、「何かわからないことはありますか?」など引継ぎについて連絡をしたり、産後は子どもの様子や預け先の状況などを伝えるといいでしょう。定期的にコンタクトをとることは、復帰への強い意志表示にもなります。

また社内報や自分宛の郵便物など送って欲しい場合は、自宅の住所を書いた封筒と切手を用意し、同僚や後輩に頼むのも一案です。

ポイント3 子どもの預け先を探す

子どもの預け先を探すのは、意外と時間がかかるものです。

例えば、保育園とひと口に言っても、園にはさまざまな特徴があり、保育料も異なります。また競争率が高く、なかなか入園できない地域もあります。

そのため妊娠中から見学に行ったり、資料を集めて預け先の候補を幾つか上げておきましょう。復職が近付いてから慌てないようにリサーチは早めに!

ポイント4 サポート体制を確立する

子どもを抱えながら仕事をするには、家族の協力が欠かせません。復職前に、パートナーとよく話し合い、具体的にどのような態勢を組むか相談しておきましょう。

また子どもが小さいうちは、よく病気をします。発熱などで、保育園から呼び出されることも少なくありません。そのときお迎えは誰がするのか? 子どもが病気になったとき、看病はどうするのか? 家族で話し合ってください。

病児保育を行うベビーシッター会社や、保育園のお迎え代行などを行うファミリーサポートセンターなどを調べておくことも大切です。

ちなみに育休とは!?

育休とは、育児休業の略。育児・介護休業法で定められた制度で、1歳未満の子どもを養育している父母は、育児休業をとることが認められています(子どもが1歳を過ぎても、休業が必要と認められる場合は1歳6ヵ月まで延長可能)。期間を定めて雇用される契約社員なども対象です。ただし、ひとりの子どもに対して1回連続した期間でとらなくてはならず、2回以上に分けてとることはできません。 また企業によっては、法定を上回る制度を備えている場合もあります。自社の制度を確認しておきましょう。

みんなはどうしてる!?仕事と子育ての両立

Q:復職したのは、子どもが何歳代?

ママの復職時期は、子どもが0歳代から1歳代が8割強も! 理由は「保育園の0歳児クラスに空きがあり、チャンス!と思い復職しました」「会社の育休が1歳までだから」「卒乳できたので、もういいかな!? と思い1歳代で復職」などの声がありました。また2歳以降は、「求職中だと認可保育園になかなか入園できず、3歳でやっと入園できたため」「小学校に入学したのを機に6歳代で復職」という方もいました。

Q:子どもの預け先は?

子どもの預け先は、保育園が6割以上でトップ!「友達がいっぱいできる」「順番を待つなど集団生活のルールが身に付く」など、みなさん保育園の良さを実感しているようです。また「保育園に空きがないため」「子どもが懐いているので安心」といった理由で実家に子守をお願いするママも。そのほかには職場内の託児所や、家庭の一室で有資格者が子どもを預かる家庭福祉員(保育ママ)に子どもを預けている方もいました。

Q:雇用形態は?

正社員、パートがともに4割以上でした。正社員は、産休・育休が明けて職場復帰した方ばかり。パートは「定時に上がれて、自分にも子どもにも負担をかけない働き方をしたかった」「子どもの具合が悪いときなどに、休みやすい職場で働きたかった」などの理由で、子どもが生まれてから転職した方が目立ちました。また「子どもを見ながら働ける」という理由で、在宅ワークをしているママも。そのほかは自営業の方が大半でした。

ピジョンママに聞きました! 妊娠中・産後の仕事 悲喜こもごもストーリー

妊娠編

BAD

●とにかく大変だったのがつわりの時期です。満員電車に乗って通勤していたため、途中で気持ちが悪くなることも。また臭いに敏感になり、タバコの臭いがするだけでも気分が悪くなるんですよね~。そのため仕事が思うようにはかどりませんでした。(雄kunのママさん)

●妊娠初期は、外見からは妊婦ということがわかりません。そのため力仕事などを代わってもらうときすごく気を遣いました。ホントは安定期に入るまでが大事なんだけどね。(100%MILKさん)

GOOD

●妊娠したら、これまではあまり話したことがなかった子持ちの先輩と子どものことをよく話すようになったり、孫が生まれたばかりと言う他部署の方から「いつまで働くの?」と声をかけられるなど、社内の人脈が広がりました。(チョロさん)

産後編

BAD

●1歳2ヵ月から、子どもを保育園に預けて復職しました。つらいのは子どもを保育園に連れて行くたびに大泣きされること! 保育園に着くと「ママ~」としがみついて泣きわめくんです。2ヵ月ぐらいでやっと慣れましたが、最初のうちは「ここまでして何で働かないといけないの?」「子どもが可哀想?」と自問自答しました。(なっちさん)

●大変なのは子どもが病気をしたときです。仕事を急に休まなくてはならず、職場の人に迷惑をかけるので、休み明けは必ずフォローを心がけています。いくら子どもがいても、“病気なんだから、休むのは当たり前”という言動はしたくないので。(マイマイさん)

GOOD

●共働きだと、家計が潤い貯金ができるのが最大のメリット! また私の場合は、外に出て働くことで、育児ストレスから解放されて気持ちに余裕ができました♪(あややさん)

安藤博子さんから働くママにエール

子どもにとっては、ママといることだけが幸せとは限りません

子どもができたとき、ママの中には「こんなに小さい子を預けて働くなんて可哀想。3歳までは、私の手で育てなければ!」と考える方もいると思います。

しかしママだけでなく、保育士さんやおじいちゃん、おばあちゃん、近所の人、そして同世代の子どもたちなど、さまざまな人と触れ合いながら育つことも、子どもの幸せではないでしょうか。また保育のプロや、おばあちゃんなどの子育て経験者は、ママにいろいろな知恵を授けてくれます。

子どもと過ごす時間も、長いから良いと言う訳では決してありません。問題は質です。たとえ子どもと過ごす時間が短くても、密度の濃いコミュニケーションをとることが大切なのです。

働くということは自分の世界を持つこと

子育ての最終目標は、子どもを自立させることではないでしょうか。ママが働いていると、子どもは小さいうちから自然と自分で自分のことをするようになります。それが自立への第一歩です。

私は仕事柄、「子どもができて退職したけど後悔している」という女性にたくさん会ってきました。子育てと仕事の両立は、確かにハードです。しかし大変なのは一時的なこと。

仕事と子育ての両方の世界があるからこそ、楽しみは2倍に。つらいことは半分になるのです。

また私には社会人になった息子がいますが、ときには社会人同士という立場で会話もします。お互いに悩みを打ち明けたり、アドバイスし合えるのは、母親が働いているからだと思うのです。

子どもは、いずれ親元を離れて行きます。そのときママ自身に、自分の世界があるかないかは、その後の人生に大きく影響してくるはずです。一度、“自分にとって仕事とは何か!?”“自分はどう生きたいのか!?”を考えてみませんか?

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