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<たまひよpresents産前産後のフェムケア vol.1基礎知識編>妊娠・出産を機に見直したい“フェムゾーン”のケアって?

模型をもって座っている高林さんと米谷編集長

近年、「フェムテック」という考えが広がり、デリケートゾーンを表す“フェムゾーン”や“フェムケア”という言葉も広がりつつあります。吸水ショーツをはじめ、フェムゾーンをケアする新発想の商品が登場しています。「妊娠・出産はフェムゾーンと向き合う絶好の機会!」と語るのは、腟ケア指導士ディレクターの高林裕果さん。たまごクラブひよこクラブ統括編集長の米谷明子が、高林さんにフェムゾーンのケアについて教えてもらいました。

米谷編集長のプロフィール写真
米谷 明子
Yoneya Akiko
『たまごクラブ』『ひよこクラブ』統括編集長、『妊活たまごクラブ』編集長
妊娠・育児系の出版社を経て、2007年ベネッセコーポレーション入社。たまひよ雑誌ディレクターを務めつつ、2013年『妊活たまごクラブ』を創刊、編集長。2022年たまひよ新創刊をリードし、2023年現職。近年はフェムテックイベントに登壇も。「フェムテックブームでようやく女性たちが生理や自分の体について語れる時代になりましたが、実はまだまだ人には言えない、自分の経験値だけで我慢をしていることが女性にはある…!?妊娠・育児期こそフェムケアの知識をアップデートすべきタイミングです!」
高林さんのプロフィール写真
高林 裕果
Takabayashi Hiroka
(Glad代表取締役社長)
看護師キャリア22年。小児科、集中治療室(ICU)、整形外科病棟など最先端医療現場で経験を積み、結婚退職後、フェムケア製品を開発し、2021年にGlad株式会社を設立。現在は腟ケア指導士ディレクターとして活動。腟ケア商品やダンストレーニング「フェムダン」を開発するなど、フェムケアの大切さを発信し続けている。

人に言えず“フェムゾーン”に悩んでいた女性たち

米谷

高林さんはもともと看護師として病院に勤務されていたそうですが、「フェムケアを広めたい」と思ったきっかけは何だったのでしょう?

高林

看護師として患者さんの排せつを介助するなかで、かゆみやニオイ、かぶれ、腟炎(ちつえん)や膀胱炎(ぼうこうえん)など、フェムゾーンに関するトラブルをたくさん目にしてきました。その一方で、実は私自身も生理不順やおりもの過多など、自分のフェムゾーンに悩みがあったんです。でも、20年ほど前のあの当時、フェムゾーンはまだ「おまた」と呼ばれ、看護師の私ですらだれにも相談できないほど、恥ずかしい部位としてタブー視されていました。

そこで、自己流でフェムゾーンのケアを始め、退職後はその経験を生かして本格的にフェムケアの仕事を始めました。「汚い」「触ってはいけない」という概念をなくし、むしろフェムゾーンをケアすることで女性が健康に美しくなれることを伝えたいと思ったんです。

人と自分はどう違うのか、この症状は体質なのかそれとも病気なのか、フェムゾーンに関する悩みを抱いたことがない人は恐らくいないでしょう。そういった方たちに向けて、正しい知識を広めていくのが私の役割だと思っています。

米谷

今や“フェムゾーン”や“フェムケア”、そしてフェムに関する商品やサービスを意味する“フェムテック”という言葉も急速に広まり、定着してきました。

高林

月経やPMS(月経前症候群)、更年期特有の症状など、女性の“我慢”が顕在化してきたのだと思います。最近では医学界でも統一してフェムゾーンという言葉を使おうという流れになっています。

米谷

それだけ注目され、ケアの必要性も高まっているということですよね。改めてお聞きしますが、そのフェムゾーンとは、具体的にどこを指しているのでしょう?

高林

女性器のうち外側に見えている部分です。腟とそのまわりにある大陰唇や小陰唇、陰核(クリトリス)、さらに尿道、肛門(こうもん)、その間の会陰(えいん)、そして恥丘という、いわゆる毛が生えている部分を総称してフェムゾーンと呼びます。構造が複雑で、皮膚もまぶたより薄いので、ムレやかゆみなどのトラブルが起こりがちです。

米谷

えっ!フェムゾーンの皮膚ってまぶたより薄いんですか?

高林

はい。「まぶたより薄い」と聞くと、いかにデリケートな部位かよくわかりますよね。そのため、私は専用のケアをおすすめしています。

模型を使って説明する高林さん
模型を使ってフェムゾーンを解説する高林さん。

妊娠・出産はフェムケアと向き合う絶好のタイミングのひとつ!

米谷

女性がフェムゾーンを気にするきっかけのひとつが、妊娠・出産ですよね。健診の際に内診台で脚を大きく広げ、診察とはいえフェムゾーンをまじまじと見られるわけです。「ケアしておけばよかった!」という思いからか、産後にVIO脱毛を始める人もいるそうです。

高林

私も、妊娠・出産はフェムケアを始める絶好のチャンスだと思っています。ただ、産後はやはり赤ちゃんのお世話でママは心身ともにかなり負担があるので、新たにフェムケアという習慣をつくるのは大変です。できれば妊娠前から、もしくは妊娠を機に始めておくと、産後も気負わずフェムケアを続けられると思います。

米谷

たしかに、産後はおふろあがりのスキンケアもままならないほど忙しいですよね。たとえば、産後に再び始まる生理も、赤ちゃんのお世話をするママにとって悩ましいもののひとつ。とくに入浴時!あがった瞬間に経血がダラ〜っと垂れてくるので、私は子育て中、入浴のときにタンポンを使っていました。

高林

わかります!(笑)私はペーパータオルをはさんで対処していました。

米谷

ペーパータオル!?トイレットペーパーじゃなくて?

高林

トイレットペーパーは水に流すものなので、ぬれると溶けて、ティシュかすが腟まわりに付着してしまうんです。ティシュかすは雑菌の温床になりやすいので、厚みがあって溶けにくいペーパータオルの方が適していると思います。とはいえ最近は、小陰唇に直接はさむタイプの生理用ナプキンがあり、普段使いはもちろん、おふろあがりにもおすすめです。おふろあがりにひとまずパッとはさめば、経血がダラ〜っと垂れてくるのは回避できます。

ナプキンを紹介する様子
“フェムテック”という言葉が浸透してきて、生理用品にもさまざまなものが出てきています。指にはさんでから、さっと小陰唇にあてるタイプのナプキンも。

 

米谷

フェムゾーンに関するアイテム=フェムテックでいちばん身近なものといえば、生理用品ですね。ナプキン、タンポン、吸水ショーツと種類がいろいろあって、どれを使ったらいいのか悩む人も多いと思います。

高林

私は、状況によって2つ以上のアイテムを組み合わせて使うことをおすすめしています。たとえば産後の生理では、経血も出るけれど尿モレも…という人もいると思います。その場合、経血は先ほどもおすすめした小陰唇にはさむタイプのナプキンでキャッチし、ショーツには尿モレパッドをつけておくと安心です。尿モレはないものの、多い日の経血が心配という場合は、ナプキン+吸水ショーツにするといいでしょう。

また、子どもとのおでかけで、なかなかトイレに行くタイミングがないかも…というときは、タンポンとナプキンのW使いもおすすめです。ただし、もし生理の再開がとても早い場合でも、タンポンは産後の1カ月健診で先生のOKが出てから使うようにしましょう。

産後は肌が敏感になるので肌への刺激が気になるときは、肌にやさしいコットン素材の使い捨てナプキンを使ったり、布ナプキンを選んだりすると、より快適に過ごせると思います。

お話を聞いている米谷さん

1日1回、フェムゾーンを見て、触れる習慣を

米谷

実際にフェムゾーンはどのようにケアすればいいのでしょう?

高林

みなさん、毎日鏡で自分の顔を見ると思います。でも、自分のフェムゾーンを毎日見るという人は多くないでしょう。フェムケアは、鏡で顔を見て肌の状態を確認するのと同じようにフェムゾーンも1日1回は状態を確認することから始めるといいと思います。おふろで洗うときなどに、自分の目で見て、触って、変化がないか確認します。そうすることで、ニオイや分泌物の量など、普段と違うことがあってもすぐに気づきやすくなるでしょう。具体的なフェムケアの基本として私がおすすめしているのは、顔のスキンケアと同じように、正しい方法で洗浄と保湿をすることです。

米谷

顔と同じなんですね。産前・産後の女性の中には将来のエイジングケアが気になっている人もいると思いますが、フェムゾーンも老化するのでしょうか!?

高林

はい、残念ながら…。フェムゾーンも女性ホルモンが急激に減り始める40才ごろから血行が悪くなり、見た目でいうと、大陰唇のふっくらとしたハリが失われ、やせてしまいます。また、私たちの体は閉経して女性ホルモンを作らなくなると、同時に潤いも作れなくなるといわれています。すると、全身の乾燥が進み、とくに皮膚の薄いフェムゾーンには、それが顕著に表れます。

乾燥した皮膚は雑菌にとって居心地のいい環境です。その分、トラブルも起きやすくなるので、オイルなどの保湿剤でしっかり潤いを補うことをおすすめします。

米谷

最近は、フェムゾーンを脱毛する人も増えているようです。たしかに毛がないほうがケアをしやすそうですよね。ただ、本来なら陰毛はフェムゾーンを守るためのものだと思うのですが、なくても問題ないのでしょうか?

高林

毛があることによって、尿や経血、おりものといった分泌物が下着の中にたまりやすくなるので、衛生的な観点からいうと、陰毛はないほうがいいと思います。毛がないほうが保湿剤などもつけやすいでしょうが、一方で、皮膚があらわになっている分、乾燥しやすくなる心配があります。乾燥が気になるようなら、意識的に保湿するといいでしょう。

米谷

お話を聞いていると、娘を持つ親は、母親に限らず父親であっても、わが子に正しい知識を教える必要がありますね。最近の若い世代では、男性も生理に理解があり、パートナーがナプキンを買ってきてくれるという家庭も多いようです。そういったことがごく自然に、夫婦間から親子間へと広まるといいですよね。

高林

そのとおりですね。フェムゾーンをケアする最大の理由は、自分の体を守るためだと私は考えています。フェムゾーンの先には赤ちゃんを宿し、育む子宮があるので、しっかり守らなければなりません。子育て中のママ・パパも、わが子が赤ちゃんのうちからフェムゾーンを正しくケアして、その大切さを子どもにも伝えてあげてほしいです。

トーク中の高林さん

【米谷の対談後記】

かつては「あそこ」とか「おまた」という呼び方をしていたこともあり、触れてはいけない・話してはいけないというイメージがありました。でも今、「フェムゾーン」はもっと触れていい・話していいという常識に変わりつつあります。育児中は、赤ちゃんのお世話でいっぱいになり、自分自身の体のケアに気が回りにくいですが、妊娠中・妊娠前からケアをする習慣や知識を身につけているだけで、育児中がラクになると思います。

撮影/アベユキヘ(人物)、矢部ひとみ(物) 文/坂井仁美

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