妊娠〜産後の話し合いは万全?
『夫婦会議®』に学ぶ夫婦の「対話」のポイント
- 妊娠〜出産は、ママの身体や二人の環境に大きな変化があるタイミング。そんな時こそ、毎日の家事や育児、働き方など、産後の新しい生活に向けて、お互いの気持ちや行動を共有し合うことが大切みたい。そのために心がけたい「対話」のポイントを、夫婦の対話メソッド『夫婦会議®』の開発研究者である長廣さん夫妻に聞いてみたわ〜。
監修者プロフィール
- 長廣百合子さん(妻)・長廣遥さん(夫)Logista株式会社共同代表。『夫婦会議®』開発研究者。8才長女と1才長男の2児の父と母。第1子誕生を機に、仕事と家庭の両立を巡る葛藤や夫婦のパートナーシップの危機に直面。同様に葛藤する子育て夫婦の力になりたい、子どもたちにより良い家庭環境を創り出してほしいという思いから、2015年に『夫婦会議®』を推進する子育て支援会社を夫婦で起業。開発した夫婦会議ツールのうち、夫婦で産後をデザインする「世帯経営ノート」は2019年にキッズデザイン賞を受賞。これまで16,000組を超える夫婦が夫婦会議ツールを活用している。
https://www.logista.jp
妊娠〜産後の時期は「決断」の連続!
ヒントにしたい『夫婦会議®』とは?
妊娠〜産後は、日々変化する母体や赤ちゃんのお世話と向き合いながら、我が子の健康や命に影響するような大事なことを「決断」していく時期。ママとパパの行動や考え方、優先順位などにズレが生じやすいタイミングです。そのズレを放置していると、「仕事と家庭の両立の危機」や、産後うつ・虐待などの「命に関わる危機」、産後クライシス・離婚などの「家庭崩壊の危機」・・・と取り返しのつかない事態に陥ってしまうこともあります。(百合子さん)
だからこそ、心身ともにデリケートな時期にあるママが、ひとりで考えて決断しなければならない状態を防ぐためにも、家事や育児、働き方など、さまざまなテーマで、お互いの感情や考えを共有し合ってみてほしい。そんな想いも込めて、全国各地で提案しているのが、夫婦の対話メソッド『夫婦会議®︎』です。人生を共につくると決めたパートナーと、より良い未来に向けて「対話」を重ね行動を決める場のことで、「“わたしたち”の答えをつくること」を目的に話し合います。(遥さん)
自分ひとりの意見を通すため、相手を変えるためではなく、「“わたしたち”の答え」に向けて行うもの。その積み重ねの中でママとパパは新しい協力体制を築けます。(百合子さん)
『夫婦会議®』はポジティブで楽しいもの。
最初のきっかけはどうつくる?
『夫婦会議®︎』となると、堅苦しく考え、つい身構えてしまう人もいるかもしれません。しかし、「そもそも『夫婦会議®』は、より良い未来に向けて対話を重ねる場。楽しくて幸せな時間なのです。そこにネガティブな要素は一つもありません」と長廣さん夫妻。
ただ、「会話」ではなく「対話」となると、これまで「対話」をしてこなかった夫婦にとって、最初のきっかけ作りが難しいのも事実。では、どのように「対話」の場を整えればよいのでしょうか?
大前提として、一足飛びで「対話」ができるようになることはありません。「対話」とは、価値観の違いを尊重し、互いに納得のいく結論を導き出すコミュニケーションのこと。『夫婦会議®』では、この「対話」までのコミュニケーションを「会話→議論→対話」の3段階に分けて体系化しているのですが、「会話」や「議論」の段階でつまずいている方が多いのが実情です。(百合子さん)
気軽に交わす日常的な「会話」、互いの意見を出し合う「議論」、そこからステップアップして、“わたしたち”の答えをつくる「対話」の段階に進んでいく。この3つのステップを知ることが、「対話」の場を整える最初の一歩になります。(遥さん)
また、何の準備もせずにパートナーに持ちかけてしまうと、「議論」の段階で喧嘩になったり集中力が切れてしまったり・・・うまくいかないことがほとんどです。夫婦の間にズレや不満を感じて「ちゃんと話し合いたい」と思う時ほど、準備が大切!「自分がなぜ話し合いたいと思ったのか。そして、本当に話し合いたいことは何なのか」を言語化しましょう。
そのためにおすすめなのが「書くこと」です。箇条書きでも、ポエムのようになってもOK。ペンを片手にひたすら書くことで、自分の感情や考えが整理されます。それを一度、自分で読み、そのままパートナーに伝えて後悔しないか、相手を傷つけないかを判断してから、話し合いを持ちかけてみましょう。話し合いたいと思う「前向きな理由」を添えることで、相手も落ち着いて受け止めやすくなりますよ。(百合子さん)
「自分の思い込みに気づく」ことも意識してもらいたいですね。「男だから」「女だから」「親になったから」・・・こうしなければならない。かつての自分たちもそうでしたが、特に、自分が生まれ育った環境に起因する思い込みは、対話の妨げになります。100組の夫婦がいれば100通りの暮らし方があるわけで、それはすべて“わたしたち”で決めることです。自分の中にある思い込みに気づけたら、より良い夫婦関係を育むチャンスだと思って、「“わたしたち”として、どうしたいのか」にぜひ向き合ってください。「パートナーはこう思っているはず」と言う思い込みも、要注意です。(遥さん)
「対話」の上手な進め方、そのポイントは?
夫婦の信頼関係がいっそう深まる「対話」の場にするために、どんな点を意識すればよいのか?『夫婦会議®』の講座や専用のツールで紹介されているたくさんの「対話」のコツの中から、長廣さん夫妻に3つアドバイスしてもらいました。
●“わたしたち”を主語にする
夫婦は世帯の共同経営者。大切なことは、「わたしたちとして、どうするか?」を考え決めることです。「僕は」「私は」とお互いの意見を出し尽くしたら、積極的に主語を“わたしたち”に変えて、「対話」を進めましょう。
●「ん?」と思ったら確認。お互いの感情や考えに関心を持つ
価値観の違いを感じた時ほど相手に関心を持ち、「どうしてそう思うの?」「詳しく聞かせて?」など、相互理解に向けた質問をしてみましょう。ただし、「詰問」はNGです。相手が「問い詰められている」と感じていないか配慮しつつ、相互理解に向けた質問を重ねましょう。言葉の背景にある感情や考えに触れる努力が「対話」を深めます。
●遠慮しない、過信しない、諦めない
「迷惑をかけたくない」と遠慮したり、「夫婦だから言わなくても分かるはず」と過信したり、「元は他人だから分かるはずがない」と諦めているうちは納得のいく「“わたしたち”の答え」を導き出せません。夫婦の信頼関係を深めるつもりで、自分の感情や考えを言葉にしましょう。
妊娠〜産後は孤独を感じやすい時期でもありますが、「相手は自分の敵ではない」「夫婦は世帯の共同経営者」という感覚を大切に、「“わたしたち”の答え」を楽しみながらつくっていけたら良いですね。(百合子さん)
「対話」には粘りが必要。「“わたしたち”の答え」に到達するには、ある程度の時間が必要です。パートナーに声をかけるタイミングも考慮しつつ、少なくとも30分〜60分ほどの「まとまった時間」をつくることも大切なポイントですね。(遥さん)
「対話」をさらに楽しく!環境づくりのポイントは?
長廣さん夫妻によると、「対話」をさらに楽しくするための環境づくりには、「リラックスした状態」が大事なんだそう。
私たちも、お気に入りのお茶を用意したり、おいしいスイーツを買ってきたり、心地よい場になるような工夫をしています。音楽は必ずかけますし、場合によってはアロマを焚くこともあります。また、自宅を離れ、カフェや旅行先など、いつもとは違う環境で話し合うのもおすすめです。ちょっとしたデート感覚で『夫婦会議®』をすると、より楽しい気持ちでお互いに本音を出し合え、「対話」までのステップがスムーズに。心もすっきりしますよ。(百合子さん)
二人だけの空間・時間を設けることも意識してみてほしいポイント。上のお子さんや、赤ちゃんがいる中での話し合いは、子どもに意識がとらわれてリラックスし辛いこともあります。子どもが寝ている間、または祖父母など信頼できる第三者に預けるなどして、月に1度は夫婦二人きりで「対話」を試みてほしいですね。また、『夫婦会議®』では、本題に入る前に「今のコンディション」や、伝えそびれていた「ありがとう/ごめんね」の気持ちを言葉にし合うのもおすすめしています。いわゆるアイスブレイクです。対話の環境を整えるには効果的ですよ。(遥さん)
“わたしたち”をベースに
二人らしい家族のあり方を探してね〜
- あんな心も身体も不安定になりやすい妊娠〜産後の期間はもちろん、これからの長い人生を家族で楽しく、穏やかに過ごすためにも、今から少しずつ“わたしたち”の答えを見つけておくと安心ね。まずは二人らしい対話の仕方を試行錯誤しながら探してみて!