妊娠中にアボカドは食べてもいいの?メリットと注意点を専門家が解説
「森のバター」と呼ばれ美容と健康によいといわれるアボカドには葉酸が含まれています。しかし、脂質が多い、カロリーが高いなどのイメージから妊娠中に食べてもいいのか疑問に思う妊婦さんもいるのではないでしょうか。そこで今回は、相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、妊娠中にアボカドを食べてもいいかどうか、またアボカドに含まれる栄養素、アボカドを食べるときの注意点を教えていただきました。
教えてくれたのはこの方
- 堤ちはるさん相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、米国コロンビア大学医学部留学。青葉学園短期大学助教授。日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。
妊娠中にアボカドは食べてもいいのか
結論から申し上げると、アボカドは栄養価の高い食材で、妊娠中も食べて問題ありません。
アボカドは「森のバター」などと呼ばれることから脂質が多いのかなと、妊娠中に食べることを不安に思う方もいいるようです。しかし、アボカドに含まれる脂質は善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレストロールだけを減らすオレイン酸。オレイン酸は血中のコレストロールを適正に保つヘルシーな脂質なのです。
また、アボカドには葉酸やカリウムなどさまざまな栄養素が豊富に含まれています。調理も簡単で、種と皮をはずしたらそのまま食べられて手軽に栄養補給ができるため、妊婦さんにもおすすめの食材といえます。
アボカドに含まれる栄養素については、次の章でお話しします。
アボカドには葉酸だけでなくビタミン・ミネラルも豊富に含まれる
アボカドに含まれているおもな栄養素とその役割をみていきましょう。
・カリウム
カリウムはナトリウムと一緒に心臓や筋肉の機能を調節する働きがあります。また、過剰なナトリウムは血圧の上昇やむくみの原因になりますが、カリウムにはナトリウムを体の外に出しやすくする作用も。ナトリウムの摂り過ぎを調節し、血圧の上昇やむくみを防ぎます。
・葉酸
妊娠中の女性が妊娠前から葉酸を適切に摂取していることが、胎児の先天性異常のリスクを減らすといわれている栄養素。ビタミンB群の水溶性ビタミンで、水に溶けやすく、熱に弱い性質があります。
・食物繊維
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類がありますが、アボカドに含まれるのは水溶性食物繊維。水に溶けやすく水分をたくさん含んでいます。腸の運動を優しくサポートし、便をやわらかくする働きがあるので妊娠中の便秘対策にもよいですね。
・ビタミンE
脂溶性ビタミンのひとつです。抗酸化作用が強く、体内の脂質の酸化を防いで老化を防止したり、血管の健康を保って動脈硬化などの生活習慣病などを予防したりすることが期待される栄養素です。
・オレイン酸
アボカドの脂質のほとんどが不飽和脂肪酸と呼ばれるオレイン酸。オレイン酸には、血中のコレステロールを適正に保ち、動脈硬化や高血圧や心臓病などの予防する働きがあるといわれています。アボカドの脂質が良質といわれるのは、オレイン酸によるものです。
これらのほかにも、鉄やビタミンKやたんぱく質などの栄養素も含んでいます。ぜひ、日々の食事に取り入れたいですね。
妊婦さんがアボカドを食べるときはここに注意!
これまでお伝えしてきたように、アボカドはさまざまな栄養素が含まれていて妊婦さんにおすすめの食材ではありますが、食べるときは次の2点に注意してください。
【注意1】食べすぎない
前述のとおりアボカドの脂質は良質ですがエネルギー量(カロリー)は1個あたり平均260kcalと高カロリー。目安としてごはん1杯分相当のカロリーです。そのため、あまりアボカドを食べすぎると妊婦さんの1日のカロリー摂取目安を超えてしまうかもしれません。また、食事は主食、主菜、副菜を組み合わせ、さまざまな食材をバランスよく食べることが大切です。
そこで、アボカドは「1日に半分ぐらい、たまに1日1個食べる」ぐらいを目安にしておくのがよいと思います。
【注意2】皮を洗ってから食べる
アメリカ食品医薬品局より、アボカドの皮にはリステリア菌が付着している場合があるという報告がありました。そこで、皮から中身に菌が移行することがないよう、アボカドを切る前に必ずよく皮を洗うことが大切です。しっかり洗ってペーパータオルなどで拭いてから切るようにしましょう。
なお、リステリア菌は、自然界に広く分布している菌で、健康な成人の場合は感染しても軽い症状で済むことが多い菌です。また、日本国内では食事由来のリステリア菌発生の報告はありません。そのため過度に心配する必要はないでしょう。しかし、万が一妊娠中の方が感染すると流産や赤ちゃんへの感染などにつながることがあるので、気を付けておくと安心です。
簡単な皮と種のはずし方とおすすめの食べ方
アボカドは相性がいい食材や調味料がたくさんあるので、簡単に1品ができあがるという点も魅力です。
<簡単なアボカドの皮と種のはずし方>
1)アボカドを縦にもって、ぐるりと1周、皮に切れ目を入れます。1周したら今度はアボカドを90度回転させて、同じように切れ目を入れます。(アボカドの上と下に十字に切れ目が入った状態です。)
2)切れ目をひねって種の周りをゆるませて、切れ目で2つに実を分けます。
3)さらに切れ目で実を分けます。種がついている方も切れ目でひねって実を2つに離したら、種をとります。(アボカドが4等分になった状態で、種は実の1/4にしか付いていないので、簡単に手でとれます。)
4)手で皮をむきます。
<おすすめのアボカドの食べ方>
・塩コショウとオリーブオイルをかける
・わさび醤油をかける
・お気に入りのドレッシングをかける
・トーストやベーグルに乗せたり挟んだりする
・サラダの上に盛り付ける
・アボカドディップにして、トーストに塗ったり野菜スティックにつけたりする
など、さまざまな食べ方があります。
まとめ
食べすぎないことと、洗ってから食べることに気を付ければアボカドは妊婦さんにとって、さまざまな栄養素を摂ることができる便利な食材です。毎日の食事の一部としてアボカドを取り入れみてはいかがでしょうか。
塩分などを摂り過ぎないよう気を付けつつ、いろいろな食べ方を試してみると食事がいっそう楽しいものになることでしょう。