料理が苦手な妊婦さんも安心♪妊娠中にできる簡単な塩分対策【管理栄養士が解説】
妊娠中は、必要なエネルギーが増えるため、食事量も多くなり、知らず知らずのうちに塩分も多く摂りがちになってしまうことが少なくありません。塩分の摂りすぎは、むくみや妊娠高血圧症候群を引き起こす可能性もあります。妊娠中に必要以上に塩分を摂りすぎないために、妊婦さんができることは何でしょうか?相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、塩分対策のコツを教えてもらいました。料理が苦手な妊婦さんもすぐに取り入れられるので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
教えてくれたのはこの方
- 堤ちはるさん相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、米国コロンビア大学医学部留学。青葉学園短期大学助教授。日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。
自分が思っている以上に塩分を摂っていることも
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、15才以上の女性の食塩摂取量は1日6.5g未満を目標量としています。ところが、令和元年の「国民健康・栄養調査」の結果によると、20才以上の女性の1日当たりの食塩摂取量の平均値は9.3gで目標量をオーバーしています。
食塩は、塩やしょうゆなどの調味料を料理にかけなくても、パン、うどん、かまぼこ、ちくわ、ハム・ソーセージ、チーズなど、いろいろな食品にすでに含まれています。そのため、調味料としての塩分摂りすぎに気を付けていても、自分が思っている以上に食塩を摂っていることがありますから、普段から食品成分表示などを確認する習慣をつけられるといいですね。ほかにも、普段の食生活で簡単に取り入れられる減塩の工夫を紹介します。
調理するときに知っておきたいこと
少し気を付けるだけでも減塩ができます。知っておくと役に立つミニ情報をまとめました。
料理に使う食材は新鮮なものを選ぶ
新鮮な食材は、素材の味がしっかりしているので、味付けを薄めにしてもおいしく食べられます。旬の食材を使うのもおすすめです。
調理で調味料は小皿などに受けて測る
たとえば、大さじ1杯のしょうゆなどを入れる場合は、調理中の鍋の上などで測るとうまくいかずに多めに加えてしまいがちです。必ず小皿などに受けて測るようにすれば、入れすぎを防げます。
調味料は始めから全量加えない
調味料を加えるときは、始めはレシピの半量くらいから入れ、味を見ながら調整しましょう。味見のときにちょうどいい味にすると、できあがった料理を食べている途中で濃く感じてしまうこともありますので、少し薄いかな? というくらいにとどめておく方がちょうどよい味付けになります。
実際に食べる温度で味を見る
同じ料理でも、温度によって味の感じ方が違います。冷たい料理は冷たい状態で、温かい料理は温かい状態で、というように実際に食べる温度にして味を見ることが大切です。
酸味や香り、うまみを利用して塩分対策を
食材や食品の酸味や香り、うまみを利用することで、塩分を控えることができます。味のバリエーションも増えるので、いろいろ試してみてくださいね。
簡単にできる塩分対策
・食塩のかわりにレモン、ゆず、酢などの酸味を利用して味にアクセントをつける
・だしの風味を活かす(鰹節、しいたけ、貝柱、干しえびなどの旨みを持つ食品を利用する、しょうゆなどの調味料はだしで薄めて割りじょうゆなどにすると減塩につながる
)
・ねぎ、あさつき、しそ、みょうがなどの薬味を利用して食材の風味を引き立てる
・こしょうやカレー粉などの香辛料を利用する
・減塩食品、減塩調味料などを利用する(減塩の製品でも多量摂取は塩分の摂りすぎになるのでNG)
加工肉を使うときのポイント
ベーコン・ハム・ウインナーなどの加工肉は、うまみがあって手軽においしく食べられますが、意外と塩分が含まれています。その塩分をうまく使い、たとえば野菜炒めにハムを入れるなら、野菜を炒めるときには塩分を加えないなど工夫してみましょう。ベーコンなどの塩味や油で他の素材を炒めるだけでも十分おいしく食べられますし、ウインナーは切り込みを入れてゆでれば、脂肪分や塩分、食品添加物もある程度抜けるので、なるべく体に入ってきてほしくないものを減らせます。
塩分が控えられて満足感も得られる!汁もののすすめ
塩分対策におすすめなのが、具だくさんの汁ものです。ポイントは箸が立つくらいの具を入れること。具が多くなれば、その分相対的に器に入る汁の全体量が減るので、体の中に取り入れる塩分は少なくなります。また、加熱することで食材の容量が減るため、普段不足しがちな野菜やいも類をたくさん食べられます。野菜に入っているカリウムは、高血圧の原因となるナトリウムの排泄を促します。カリウムは水に溶ける性質があるので、汁ものにすれば、余すことなく食べられます。満足感が得られやすく体も温まるので、食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。
お惣菜や市販のお弁当でも塩分対策ができる
忙しいときや、料理をつくる元気がないときは、お惣菜や市販のお弁当に頼ることもありますよね。少しの工夫や心掛けでお惣菜や市販のお弁当でも塩分対策ができます。お惣菜の場合、そのまま食べると味が濃いな、と思う場合もあります。そこで、ひじきの煮物や五目豆、切り干し大根などのお惣菜を買ってきたら、もやしやカットした豆腐などを鍋やフライパンに入れて、その上からお惣菜を加えてみましょう。お惣菜のパックに少し水分も加えてフライパンに足したら、あとはふたをして蒸し煮にするだけ。もやしや豆腐が加わることで量は増え、お惣菜の味が薄まります。また、一見手作り風にもなり立派な一品に。水けが気になるなら、溶き卵で卵とじにしてもおいしく食べられます。市販のお弁当の場合は、お弁当についているしょうゆやソースをすぐにかけないで、まずは食べてみましょう。市販のものは、たとえば揚げ物などには、衣や素材にすでに味がついているので、しょうゆやソースをかけなくてもおいしく食べられるものもあります。もし食べてみて味が薄いなと思ったら、その分だけかけることで塩分を摂りすぎずにすみますよ。
まとめ
調理や、食べ方、食べるものをちょっと工夫すれば、料理が苦手な妊婦さんも安心して塩分対策ができるので、できそうなことをしてみてください。そして妊娠期だけでなく、これからの人生で自分の体に適した食材や調理法を選べるように、栄養の知識や料理を作る工程、食品に含まれている成分についてなど、日ごろから関心を持ちながら、毎日の食生活を送っていけるといいですね。