「母乳が思うように出ない」「生まれたらすぐ出ると思っていた」と悩むママたちは多いです。
実は、妊娠するとママのからだは赤ちゃんにおっぱいをあげるための準備を始めますが、産後に母乳がよく出るおっぱいにするにはコツがあります。それは妊娠中から乳頭、乳輪部をケアしておくこと。
そこで今回は、助産師で杏林大学の准教授である加藤先生に、正しい乳頭・乳輪部のケア方法を教えて頂きました。母乳育児を考えている妊婦さんも、母乳育児中で、母乳の出や乳首の裂傷などで悩んでいるママもぜひ参考にしてくださいね。
乳頭や乳輪をケアしておくと産後のおっぱいが出やすくなる理由
妊娠して赤ちゃんが生まれたらママのからだは母乳が出るように変化しますが、それだけで十分に母乳が出るわけではありません。赤ちゃんのことを考えたり、声を聞いたり、スキンシップをしたりすること、また赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激によってホルモンが分泌されてより出るようになるのです。
そこで、母乳の出をよくするために、赤ちゃんにとって吸いやすいおっぱいにしておくことが大切です。赤ちゃんにとって吸いやすいおっぱいとは、やわらかくて伸びる乳首のこと。硬いと赤ちゃんがおっぱいを吸うのにパワーが必要になります。
また、赤ちゃんは乳頭だけでなく乳輪全体を口に含み、赤ちゃんの舌で丸めこむようにして母乳を絞り出すように飲みます。そのため、乳頭だけでなく乳輪までやわらかくなるようにお手入れをしておくとよいでしょう。
赤ちゃんの吸う力は強いので乳首を裂傷することがありますが、乳頭をやわらかくしておくことで裂傷予防にもつながります。
これらの理由から妊娠中から乳頭・乳輪のマッサージをしておくと、母乳育児がよりスムーズになります。
ただし、妊娠中におっぱいを刺激するとおなかの張りを促すことがあります。特に切迫早産気味の方、正産期(妊娠37週)以前の方は、必ず医師や助産師に確認し、指導を受けてからおこなって下さい。
目指す乳頭のやわらかさは唇から耳たぶぐらい
赤ちゃんが吸いやすいやわらかい乳首の目安ですが、理想は唇のやわらかさ。耳たぶぐらいのやわらかさもOKです。鼻の頭ぐらいだと硬いので、その場合はよくマッサージしてやわらかくしておきたいですね。
唇から耳たぶぐらいのやわらかさであれば、赤ちゃんは吸いやすく、また授乳中の摩擦にも強くなり傷がつきにくくなります。
マッサージをしてもなかなかやわらかくならない場合もありますが、焦らず少しずつ続けましょう。出産後は、赤ちゃんにおっぱいを飲ませる前におこなうのも効果的です。
乳頭・乳輪部マッサージの方法
妊婦さんの状態や病院の考え方によって乳頭マッサージを始める時期は異なります。一般的には妊娠20週前後ですが、自分で判断せず医師や助産師に相談してから始めましょう。
また、馬油やベビーオイルなどを使用すると痛みが和らぐので痛い場合は試してみてくださいね。では基本のマッサージ方法をご紹介します。
1.片方の手で乳房を支えて、反対の手で親指・人指し指・中指の3本の指で乳首の付け根を乳輪からやさしくつまみます。3本の指を乳輪と乳房の境目に立てるようにしてください。
2.指の腹で乳頭を引っ張りだし、最初はゆっくりと乳頭・乳輪部の位置や方向を変えながら全体をムラなく10回ずつ圧迫します。普通のやわらかさの乳首では1回3秒ずつ、硬い乳首の場合1回5~10秒かけて少しずつ圧を加えて圧迫しましょう。力加減は指が白くなるぐらいまでで痛くない程度を目安にしてください。
3.次に親指・人差し指・中指の3本の指を使って揉みずらします。横方向にこよりを作るような動きです。最初はゆっくり痛くない程度に揉みずらして、徐々に力を加えていきます。
4.縦方向にも揉みずらしましょう。
まとめ
今回は乳頭・乳輪部マッサージの基本的な方法をご紹介しました。正しく乳頭・乳輪ケアをおこなって、母乳育児が少しでもスムーズになるよう準備をしておきたいですね。
なお、一人一人の乳首の形は違うので、気になる方はかかりつけの病院で助産師にみてもらい、自分にあった方法を教えてもらいましょう。
しかし、妊娠中のおっぱいの刺激はおなかの張りを引き起こすことがあります。そのようなときはすぐマッサージを中止してください。
みなさんの授乳期間が楽しく幸せなものになるよう心から願っています。
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【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。