出産後、母乳育児を希望していたけれどさまざまな事情により混合育児になるママも多くいます。
混合育児には他の人にミルクで授乳を代わってもらえるなどのメリットもありますが、今回は、入院中はミルクを足していたけれど、退院後に母乳のみへの移行を目指したいと希望する退院したばかりのママむけに、助産師で杏林大学准教授である加藤先生にアドバイスを頂きました。
退院したばかりの母乳育児はみんな途中経過といえます。母乳のみへの移行を目指す場合に参考にしてくださいね。
入院時にミルクを足すかどうか
生後1ヵ月までの新生児期は、1日に8~12回ほど授乳します。赤ちゃんに吸われるほど、母乳の分泌が促されて母乳が少しずつ出るようになっていくので、母乳育児を希望する場合は赤ちゃんが欲しがったら欲しがるだけ飲ませることが大切です。
ですが産院では、出産時にママのからだにどの程度の出血があったのか、ママの年齢、疲労に耐えうる身体状況かなどもふまえて、ミルクを追加したほうがよいと判断することがあります。またこの頃の赤ちゃんは、体重の増加が適切にみられることがとても大切です。標準的範囲内で増えているかどうかも重視してミルクの追加をアドバイスすることもあります。
退院後、ミルクを足さず母乳のみに移行することは可能?
母乳育児が軌道にのるには時間がかかるのですぐではありませんが、母乳のみに移行することは可能です。赤ちゃんがおっぱいを欲しがるときに欲しがるだけ与える、搾乳するなどで徐々に母乳分泌は増えていきます。2ヵ月間ほどかけてミルクを足さず母乳のみに移行している方が多い印象です。
母乳のみの授乳へ切り替えるためにできること
母乳のみの授乳を希望する場合、次のことを試してみましょう。
・自律授乳
1ヵ月健診ぐらいまでは、赤ちゃんが飲みたがったら満足するまで飲ませる自律授乳をしましょう。1日8~12回ぐらいが目安ですが、12回以上になるという方もいます。まだ赤ちゃんの吸う力が弱く母乳の分泌量も十分ではないことがあるので難しいかもしれませんが、できるだけ乳輪部まで深くくわえさせ、おっぱいを吸ってもらうことが分泌を促すためのポイントです。
・記録する
1ヵ月健診になったら助産師に、ミルクの追加が必要かどうか、母乳だけにしても良いか、そのためにはどのようにしていけばいいか相談してみましょう。その際、毎日の授乳の回数や足したミルクの量などが記録してあると役立ちます。
・日中は母乳を与えて夜間のみミルクにする
日中は母乳の分泌を促すためなるべく頻回におっぱいを吸わせるのがおすすめです。また、夜ミルクを飲ませるようにすれば、腹持ちがよく長く眠ってくれてママが休めるメリットもあります。
・体重の増加量を目安にする
赤ちゃんの体重が母子手帳に記載の成長曲線で、赤ちゃんなりの成長がみられるようであれば体重の増えは順調といえます。とくに1日に約20~30gずつ増えていれば問題ありません。ミルクを一気に減らしてしまうと体重の増え方もゆるやかになっていくので、少しずつミルクを減らして、少しずつ母乳の量を増やしていけるようにしましょう。
なお、体重は毎日測る必要はありません。3日~4日に一度ぐらいチェックしておくと安心です。体重を測るときは赤ちゃん用の体重計がなくても大丈夫。ママが裸の赤ちゃんを抱っこしたまま体重を測り、そこからママの体重を引くと赤ちゃんのおおよその体重を測ることができますよ。
・出産した病院に相談する
1ヵ月健診までの間は、出産した産院が2週間健診、または1ヵ月健診まで電話などでフォローしてくれます。出産時の様子、退院までの赤ちゃんの様子、授乳の様子を把握しているので迷ったり悩んだりしたら、出産した産院に相談するのがおすすめです。
・健診、助産師訪問などを活用して専門家に相談する
お住まいの自治体で、名称はそれぞれ違いますが「助産師訪問」や「新生児訪問」というサービスをおこなっていると思います。助産師が自宅にきてくれて、授乳を含め育児について指導、アドバイスをしてくれるというものです。
電話ではなく授乳の様子を実際にみてほしいときや、1ヵ月健診を待つ間が不安なときなどは、自治体に問い合わせて自宅に来てもらい、相談しましょう。
まとめ
今回は混合育児から母乳のみへの移行を目指すにあたって、できることをご紹介しました。母乳育児が軌道にのるまではだいたい2ヵ月ぐらいかかるものなので、あまり焦らず、ゆったりした気持ちで取り組めるといいですね。
また、生後1ヵ月を過ぎたら、おっぱいの状態や母乳の分泌量などと合わせてミルクの追加の必要性、必要な場合はその量を判断することが大切です。産院や母乳外来や母乳相談室などを受診する、訪問サービスを活用するなどして、助産師に相談しましょう。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。