いつものようにおっぱいを飲ませると、突然赤ちゃんが拒否して飲まなくなってしまった!これは「哺乳ストライキ」などと呼ばれている症状で、しばしば起こることがありママたちを悩ませています。
なぜ赤ちゃんは、これまで飲んでいたおっぱいを急に飲まなくなるのでしょうか。またどうしたら再び飲むようになるのでしょうか。
今回は、赤ちゃんが突然おっぱいを飲まなくなる原因や対処法を、助産師であり杏林大学の准教授である加藤先生に教えていただきました。
●赤ちゃんが急に母乳を飲まなくなる主な原因
これまでおっぱいを飲んでいた赤ちゃんがおっぱいを拒否するのには、何か理由があると思います。赤ちゃんやママの状況によりいろいろ考えられますが、よくある原因を3つお伝えします。
【原因1】乳頭混乱を起こしている
哺乳瓶のミルクは飲むが、おっぱいでの授乳は嫌がる状態を乳頭混乱といいます。これは、哺乳瓶のほうがおっぱいに比べてラクに吸うことができるため起こるといわれており、混合育児において、まだ吸う力の弱い月齢が低い赤ちゃんや体調を崩している赤ちゃんなどに比較的みられます。
【原因2】母乳の味が変化し、赤ちゃん好みの味ではなくなっている
食事によって母乳の味は変化するといわれているので、赤ちゃんが変化を感じ、飲まなくなったということが考えられます。また母乳も鮮度がよい方がおいしいため、溜まっていた古い母乳だとまずく感じる場合があります。
また母乳は血液で作られているため、運動不足などによって血行不良になっている場合も母乳の味が落ちることがあるようです。
【原因3】母乳の出が悪くて飲みづらい
血行不良だと味が落ちることがあるとお伝えしましたが、母乳の出が悪くなることもあります。とくに寒い季節は血の巡りが悪くなったり、運動不足になったり、水分が不足しがち。これらも母乳の出を悪くすることがあるため、原因になっている場合があります。
母乳が出づらいと赤ちゃんは飲みづらく感じ、おっぱいを嫌がるのです。
●赤ちゃんが急におっぱいを飲まなくなったときに試してほしいことはこの4つ!
では、赤ちゃんがおっぱいを拒否したり、飲まなくなったりした場合どうしたらいいのでしょうか。まずは赤ちゃんをよく観察して何が原因かを探ることが大切。そして考えられることは試してみましょう。
1) 乳頭混乱を起こしているときは焦らずおおらかに構えるのがポイント!
おっぱいでの授乳と哺乳瓶でのミルクの授乳の順番を、おっぱい→ミルク、の順にしましょう。また哺乳瓶の人工乳首はある程度力を入れて吸うタイプのものに変更してみるのも効果があるかもしれません。
なお、おっぱいをあげるときは、赤ちゃんをママの胸の上でゆったりと過ごさせてからにするなど、おおらかに構えるのがポイントです。
2) バランスの良い食事をとる!
もしママの食生活が乱れているのであれば一度食事を見直してみましょう。基本的には栄養バランスよくとることが大切です。
エネルギーとなる主食を中心に、ビタミン・ミネラルである副菜、そしてからだづくりの基礎である肉・魚などの主菜を適量とります。さらに、乳製品などでカルシウムも補って。定食をイメージするとバランスが整いやすいですね。
3) 軽い運動で血行をよくし、母乳の出をよくする!
母乳は血液から作られているのでママの血行をよくすることが大切。そのため体を温めたり、適度な運動をしたりするとよいと言われています。
とはいえ産後は睡眠不足や疲労で、運動するのは難しい場合もありますよね。そんなときは、スーパーへ買い物に行くついでに足を伸ばして散歩してみる、家の中で軽くストレッチをする、といった自分にできることから始めてみましょう。肩回りの筋肉のストレッチや温めだけでも効果が期待できます。
4) 水分をたっぷりとる。目安は1日2リットルと多いので工夫して
母乳は血液で作られているものの母乳の約90%が水分です。そのためママが水分をたっぷりとることも母乳育児には大切。
個人差があるのでおおまかな目安ですが、1日2リットルぐらいが理想といわれています。かなりの量なので、お水だけではなく、麦茶、黒豆茶、ルイボスティーなどいろいろな飲み物を飲んだり、食事にはスープを必ずつけたりするなど工夫して飲むといいですね。
ただし母乳の分泌過多の方など水分を控えるほうがよい方もいますので、迷ったら助産師などに相談しましょう。
●最後に
最初の頃はおっぱいの出がよくなかったり、赤ちゃんの吸う力が弱かったりと、母乳育児がうまくいかなくて当たり前。軌道に乗せるには頻回授乳を続けることが大切といわれています。
そしていよいよ軌道にのっていたはずなのに、ある日突然おっぱいを拒否されてしまったら...。ママはショックなのと、いつまで飲んでくれないんだろうという不安でいっぱいだと思います。ですがそこには何か理由があるはず。赤ちゃんをよく観察し、いろいろ試してみましょう。
気になるときは助産院や病院などの母乳外来、母乳相談室などに相談すると安心ですね。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。