「母乳育児をしたいけれど、思うように母乳が出るか心配」という方は多いのではないでしょうか。産後すぐの授乳は、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ飲ませるのが母乳育児をスムーズにするためのポイントです。これを「自律授乳」と言いますが、今回は、この「自律授乳」のメリットやコツについて、助産師で杏林大学准教授である加藤先生にお聞きしました。
自律授乳とは?
自律授乳とは、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる授乳方法のこと。授乳間隔や1日の授乳回数や授乳時間などを決めて規則的に授乳する方法もありますが、赤ちゃんに吸われる刺激によって母乳分泌が促されて母乳育児がスムーズになることから、とくに生後1~2ヵ月ぐらいまでの間は自律授乳が推奨されています。
自律授乳の場合、新生児期の授乳回数は1日10回以上になることもありますが、赤ちゃんもたくさん吸うことでおっぱいを飲むことに慣れて上手に飲めるようになっていきます。自律授乳を行っていると次第にリズムがついてくる場合が多いです。
自律授乳のメリット
具体的な自律授乳のメリットは次のとおりです。
メリット1. 母乳の分泌が早く確立する
自律授乳は授乳回数が多くなる傾向があり、ママにとっては大変かもしれません。しかし、母乳の分泌は赤ちゃんに吸われる刺激によって促されるので、たくさん吸われる分、赤ちゃんも飲むのが上手になり、早く母乳の出がよくなっていくことが期待できます。
メリット2. 赤ちゃんに合わせた授乳リズムを確立させられる
母乳は赤ちゃんが飲むタイミングや量に合わせ分泌されるようになります。そのため、赤ちゃんの欲しがるタイミングで欲しがる量を飲ませることにより、赤ちゃんひとりひとりに合わせた量が分泌され、また、授乳リズムが作られていきます。
メリット3. 赤ちゃんが満たされ、さらにコミュニケーションを学ぶことができる
赤ちゃんが欲しいときに赤ちゃんが欲しがるだけ飲ませてあげるということは、赤ちゃんからすると、「泣いたらママが応えてくれる」という体験ができるということ。言葉を話せない赤ちゃんにとって、泣くことは立派なコミュニケーションです。ママに応えてもらえたことでコミュニケーションを学び、また、欲求を満たしてもらえたことで、安心感、満足感を得られます。自律授乳は赤ちゃんの心にもよい影響があるといえるでしょう。
助産師が教える、自律授乳の4つのコツ!
自律授乳を少しでもスムーズにするためには次のことをおさえておきましょう。
【コツ1】赤ちゃんがおっぱいを欲しがるサインを早めにキャッチする
赤ちゃんが飲みたいサインを出したら授乳ができるよう、赤ちゃんがもぞもぞし始めたら観察しましょう。サインは吸うときのように口を動かしたり、音をたてたりする、手を口に持っていくなど、赤ちゃんや状況によってさまざまです。
もちろん、「泣いたとき」というのも分かりやすいと思いますが、泣くときはすでに欲しくなってから時間がたっていることもあり、大泣きになったり、泣き過ぎてうまく吸いつけないことなどもあります。なるべく早めに飲みたいサインを見つけられるとよいでしょう。
【コツ2】生後2ヵ月ぐらいになったら授乳がママの生活の一部に
生後2ヵ月ごろになると母乳の分泌もよくなって、授乳の間隔もあいてきます。ママが生活をしていく中に授乳のタイミングを組み込んでいきましょう。食事の時間、家事の時間、お昼寝・休憩の時間なども1日のリズムに組み込んで、1日に7~8回を目安に授乳できるとよいですね。
【コツ3】母乳が十分飲めているかチェックする
1日に7~8回以上飲めていて、おしっこや便の回数が一定以上あれば、母乳を飲めていると言えます。授乳中のゴクゴク飲む音や、機嫌がよいことも飲めているサインですね。また、体重が発育曲線に沿って増えていれば量も足りていると考えられます。ママが、裸の赤ちゃんを抱っこした状態で体重を測り、ママの体重を引けば赤ちゃんの体重が分かります。毎日測る必要はありませんが、1週間に1回ぐらい測ってみるとよいでしょう。
【コツ4】悩んだら出産した病院に相談する
自律授乳でも必ずしも母乳育児がスムーズにいくとは限りません。なかなか分泌がよくならない、赤ちゃんが上手に吸うことができない、乳首が痛い、体重の増えが気になるなど、多くのママが悩んでいるものです。
そんなときは出産した病院に相談しましょう。授乳姿勢やくわえ方などに改善点があるのかもしれないので、直接みてもらえるとよいですね。母乳外来や母乳相談室や自治体の保健センターなどに相談する方法もありますし、出産して1ヵ月以内であれば新生児訪問(助産師訪問)で相談することもできるでしょう。
まとめ
今回は自律授乳についてメリットやスムーズにおこなうためのコツをご紹介しました。母乳分泌がよくなって、また授乳リズムが確立していくと、その後の母乳育児がスムーズになっていきます。
ただ、出産して間もなくはまだママの体は元に戻っておらず、体力的にも大変なとき。家族にもサポートしてもらったり、家事などはラクな方法があればできるだけ負担が少ない方法を選んだりしながらおこなってみてくださいね。気になることがあれば、母乳外来などで相談しましょう。
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【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。