「寝不足がつらくてパパに授乳を代わってもらいたい」「おっぱいが痛くて授乳できない」など、母乳育児中のママは授乳について悩むことがいろいろあると思います。そんなとき、搾母乳があると役立ちます。
そこで、正しい搾母乳の保存方法や解凍方法、注意点などを国際ラクテーションコンサルタントとして母乳育児支援をおこなう助産師の榎本先生に教えていただきました。
母乳を搾乳して保存しておくとあらゆる場面で活用できる!
おっぱいをあげる時間は幸せな時間というママは多いと思います。ですが、母乳を搾乳して保存しておくとこんな場面で役立ちます。
・おっぱいや乳首のトラブルで直接授乳するのがつらい
・ママが体調を崩していて授乳がつらい
・赤ちゃんが病院に入院していたり保育園に預けていたりして母乳を届ける必要がある
・ママが外出などで直接授乳ができないからパパや家族に代わってもらう必要がある
・寝不足でパパに授乳を代わってもらって夜、ママが休息をとりたい
など
これらはいつでもだれにでも可能性があります。また、とくに問題などが起きていなくても、ママも赤ちゃんを預けて外出するなどして気分転換することもときには必要ですよね。
搾乳の方法と保存方法を理解しておき、必要なときに活用できるようにしておくと安心です。
搾乳の方法3つ
搾乳には手で搾る方法と搾乳器を使う方法があり、搾乳器には手動式と電動式があります。それぞれの状況や使用頻度などに応じて選ぶとよいですね。
1) 手で搾る方法
母乳を入れる容器さえあれば搾乳ができるという手軽さが一番のメリットです。時間がかかったり手が疲れてしまったりすることがあるため、外出時や産後すぐの母乳量が少ないときなどにむいているでしょう。
1.よく手を洗い、母乳を入れる容器を用意します。
2.少し前かがみになって、搾乳しない方の手で容器を持ち、容器を乳首の下に固定します。
3.搾乳する手の親指と人差し指を向かい合うようにして、乳輪部より指一本外側に指を添えて圧迫します。
4.上下、左右、斜めなど角度を変えて圧迫を繰り返します。
はじめはうまく出ないかもしれませんが、搾る指の位置を変えたりしながら続けると、搾るのにちょうどいい指を置く場所や圧迫の力加減などのコツがつかめてくると思いますよ。
2) 手動式搾乳器で搾乳する方法
手動式の授乳器は電動式に比べて価格が安くなること、またハンドルを握る力を加減することで、ご自身で吸引圧の強さを調節しやすい点、軽くて持ち運びがしやすい点などがメリットです。
電動式に比べると時間がかかるので、使用頻度が少ない方やコストを抑えたい方に適しているでしょう。
搾乳方法
搾乳器の搾乳口をおっぱいに装着します。ハンドルを握り、はじめはやさしく握っておっぱいを刺激し、母乳の分泌を促します。母乳が出てきたら吸引の強さ・深さ・速さをコントロールしながらハンドルを動かして搾乳してください。
ハンドルの角度が変えられるタイプであれば、握りやすい角度に調節するといいですね。
3) 電動式搾乳器で搾乳する方法
電動の搾乳器は、短い時間で搾乳できるのがメリット。なかには左右両方のおっぱいを同時に搾乳できるダブルポンプタイプもあります。
吸引の強さもスイッチひとつで調節できるものが多く、頻繁に搾乳したい方にむいているでしょう。さらに、母乳の分泌量が少ない方にとっては痛みがなくラクに授乳ができる点も魅力ですね。
ダブルポンプであれば片方ずつ搾乳するよりも分泌量アップをはかれるともいわれています。
搾乳方法
直接おっぱいを赤ちゃんが吸うときと同じように、はじめはやさしく速いリズムでの刺激が必要です。
搾乳口をおっぱいに装着したら最初にやさしく吸引圧を加えて、母乳が出始めたらおっぱいの状態を確認しつつ、ママにとって心地よい強さで吸引します。
その日によっておっぱいの状態は違うので、吸引圧が調節できるようであれば自分に心地よい圧に調節しましょう。
母乳の保存方法
消毒した容器に搾乳して保存しましょう。保存方法は冷凍、冷蔵、常温の3つ。それぞれの保存可能期間は正産期で出生した健康な赤ちゃんの場合で次のとおりです。
なお、家庭用の冷蔵庫は開閉の頻度によっては温度が上がってしまいます。保存期間内であってもできるだけ早めに活用すると安心です。
*冷凍保存(-18℃)
冷蔵や常温保存に比べ長く保存することができます。市販の冷凍用滅菌パックに保存すれば、衛生的に保存することができるので使い勝手がよいですね。保存期間は冷凍用パックのメーカーの記載内容に従ってください。おおよそ3ヵ月程度までが目安となっています。
*冷蔵保存(4℃以下)
なるべく24時間以内を目安に使用します。そのため、搾乳した少し後に授乳する際の保存方法として最適です。
母乳の解凍方法
冷蔵庫でゆっくり解凍するか(この場合、解凍後の保存可能期間は24時間です)、流水にあてる、または、40℃前後のぬるま湯で湯せんして解凍します。急いでいるときは何度かぬるま湯を差し替えると早く解凍できますね。
哺乳びんに母乳を移し替えた後も、40℃前後のお湯で人肌ぐらいの温度にしてから授乳しましょう。
【母乳を保存・解凍するときの注意点】
・飲み残した母乳の再利用や、解凍した母乳の再冷凍や室温に戻した母乳の再冷蔵は衛生上できません。
・冷凍した母乳を常温において解凍するのも衛生上の観点からやめておきましょう。(冷蔵で解凍するのはOKです)
・母乳を沸騰させたり電子レンジで温めたりすると母乳の成分が破壊されるのでやめましょう。
・誤って保存期間を過ぎた搾母乳を使用するのを防止するため、搾母乳を入れる容器には搾乳した日時を書いておきましょう。
まとめ
搾乳した母乳を保存しておくとママの外出時、体調不良のときなどさまざまな場面で役立ちます。パパや家族にとっても、赤ちゃんに授乳することで幸せを感じられるでしょう。
また、搾乳は母乳を保存するためだけでなく、おっぱいの張りが強すぎるなどの場合に搾乳することで赤ちゃんが吸いやすくなるという点でも役立ちます。
搾乳をじょうずに活用して、ママの育児の負担が軽減され、育児がより楽しくなるよう願っています。
参照)
母乳育児をもっと自由に「ピジョンさく乳器母乳アシスト」
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【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」