ママが直接おっぱいを飲ませられないときなどに、搾乳ができると便利ですが、中には、「搾乳をしても母乳があまり出ない」「赤ちゃんに直接飲ませると母乳は出るのに、搾乳では母乳が思うように出ない…」と悩むママもいるようです。その理由と対処法について、助産師の榎本美紀さんに教えてもらいました。
搾乳をしても母乳が出ない人ってどのくらいいるの?
赤ちゃんがまだあまり上手におっぱいから飲めない場合でも、搾乳器を使えば、母乳はラクに搾れるのではないかと思うママもいると思います。でも実は、出産直後~産後1ヵ月以内は、乳房が張っていても、搾乳では出ないという方も多いです。
これは、乳腺や母乳の出口が十分に開通していないことが原因の1つかと思われます。産後1ヵ月以降は、搾乳で母乳が出るようになっていきますが、やはり搾乳してもあまり母乳が出ない方も。搾乳で十分出る方、あまり出ない方はだいたい半々くらいのイメージです。
授乳なら出るのに、搾乳だと母乳が出ない 考えられる理由は?
先ほど述べたように、産後間もなくて、乳腺や母乳の出口が十分に開通していないことが原因の1つと考えられます。また、乳腺が細い、乳首が長いタイプの方は、搾乳器を使用したときに、吸引圧がかかりづらいのか、あまり出ないことが多いです。反対に、扁平乳頭の場合や、乳腺が太い(出口が大きい)方は搾乳器を使ってもよく母乳が出ることが多いです。
そして「さし乳」と呼ばれる、赤ちゃんに吸われる刺激で母乳が湧いてくるタイプの方は、母乳が十分に出ていても、搾乳器の刺激では催乳反射が起こりにくいのか、出ないことが多いです。
搾乳のコツや試してほしい対処法
搾乳器だと母乳があまり出ないという方は、最初に手搾りをして、母乳が分泌してきてから搾乳器を当ててみましょう。手搾りは、乳輪より指一本外側にCの字にした指を当てて、乳輪の奥を押してから引き出すようにするのがコツです。乳房の表面を滑らすようにすると摩擦で皮膚が痛んでしまいます。
搾乳器を使うときは、搾乳器のカップをおっぱいに隙間なくピッタリあたっているか、搾乳口の真ん中に乳首があるかを確認してみてください。ただし、乳房に強く押し付けたり吸引圧を上げすぎたりしないようにしましょう。強くすればたくさん出てくるわけではありません。また、乳頭への刺激で催乳反射が起こりやすいように左右を何回か切り替えるのも試してみてください。
搾乳器には「搾乳前の準備モード」が備わっているものもあるので、これらを活用して再度試してみるのもよいでしょう。これは赤ちゃんがおっぱいを飲むときの最初のやさしく小刻みな動きを再現したモードのこと。母乳は、赤ちゃんがやさしく小刻みな動きをすることで催乳反射・射乳反射が起こって、母乳が勢いよくでるのです。
また、両胸が同時に搾乳できるダブルポンプにして試す方法もあります。ダブルポンプの場合、両胸に同時に刺激を与えるので、オキシトシンの分泌が活発になって、母乳の分泌量が上がることがありますよ。
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まとめ
搾乳が思うようにできないときは焦ったり不安になったりしてしまうかもしれませんが、ママがリラックスしていた方が母乳を分泌するオキシトシンがより分泌されます。母乳の分泌がママによって異なるように、搾乳のときの出方にも個人差があるものです。搾乳で思うように母乳が出なくても、母乳分泌が少ないわけではないことも多いので心配しすぎないようにしてくださいね。
今回ご紹介した方法を試してみてもなかなかうまく搾乳できない場合は、母乳外来や母乳相談室などで助産師に相談してくださいね。
【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」