「母乳相談室には、母乳が出すぎて困っているという相談も多いんです。」と、みき母乳相談室を運営する榎本助産師は言います。母乳が出すぎると胸が張って痛みが生じたり、場合によっては乳腺炎になることも。そのため母乳の分泌過多には注意が必要です。
そこで今回は母乳が出すぎる原因や対処法について、榎本助産師に詳しくお話していただきました。
母乳が出すぎる原因とは
母乳は良いものだから、たくさん出ることは良いことと思うかもしれません。ですが、ママにとっては不快に感じたり、赤ちゃんも対処できなかったりと、改善が必要な場合もあります。
母乳が出すぎる原因はおもに以下のとおりです。
・赤ちゃんが飲める量よりも作られる量が多く、需要と供給のバランスがあっていない
・授乳後に残った母乳を搾乳するなど、搾乳しすぎている
・ママの体質
など
母乳が出すぎるときに注意したいこと
赤ちゃんが飲みきれなかった母乳が溜まりすぎると、ママは乳腺炎になるリスクが高くなります。おっぱいが張って痛いときは、気持ちいいと感じる程度に冷やしましょう。余ったからといって搾乳すると、母乳の分泌を促してしまい母乳分泌過多につながることがあります。どうしても搾乳したいときは、痛みが和らぐ程度の少量にとどめて搾り過ぎないようにしましょう。
赤ちゃんのために注意したいこともあります。母乳の出る量が多くて勢いがよいと、赤ちゃんがむせたりせき込んだりしやすくなってしまいます。そのため、飲み続けられなくなったり吐き戻したりすることも。授乳の合間にげっぷ(中間排気)をさせたり、授乳直後は平らな場所に寝かせることは避けて背中を少し上げる、横向きで寝かせるなどして吐き戻しを予防しましょう。
また、赤ちゃんが満足感をおぼえにくい過飲症候群になりやすいことにも注意が必要です。母乳は飲み始めは糖分が多く、空になってくるにつれて脂肪分が多くなります。母乳の分泌が多すぎると赤ちゃんが途中で飲むのをやめてしまい、満腹感を感じやすい脂肪分が多い母乳を飲めないために、すぐにおなかが空いて次の授乳タイムになることも。母乳がよく出ているのに体重増加が緩慢な場合は、分泌過多傾向で脂肪分が比較的少ない前乳(飲ませ始めの母乳)をたくさん飲んでいるのかもしれません。
母乳が出すぎるときの対処法
母乳が出すぎてママや赤ちゃんがつらい場合は、次のことを試してみてください。
・授乳前に張り過ぎているときは授乳前に乳輪をやわらかくして圧抜きする
・縦抱きなどできるだけ赤ちゃんの身体を起こした姿勢で授乳し、むせ込みを予防する
・母乳パッドを使用して不快感を軽減する
・授乳タイムではないときにおっぱいが張って痛い場合、タオルでくるんだ保冷剤などをあててゆっくり冷やす
など
なお、授乳回数が1日10回程度や2時間おきなどであれば、片方ずつの授乳にして、授乳間隔を長くとるようにすると分泌量が落ち着いてくることがあります。これは、両方均等に授乳していると両方の乳房に刺激がいき、分泌過多を促進してしまうことがあるためです。
まとめ
母乳分泌が多くて悩んでいるママは、相談しにくかったり、他のママにも「いっぱい出ていいね」といわれてしまい悩んでいることを言い出せないことも多いようです。乳腺炎になるのではとハラハラしながら過ごしたり、赤ちゃんが授乳後毎回飲み過ぎて吐いてしまったり、乳房の張りの苦痛を常に抱えていたりと、授乳がつらいものになってしまうことがあります。
ただ、産後1ヵ月ぐらいは母乳量を調整している期間なので授乳量と生産量が合わないことはよくあること。多くの場合は2~3ヵ月ごろになると改善されていきますが、改善されないときは今回お伝えした対処法を試してみてくださいね。
いろいろ試したけれど改善しないとき、激しい痛みや不快感があるときなどは無理をせず、産婦人科、母乳外来、母乳相談室などで相談しましょう。
【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」