授乳は、かけがえのないもの
石原有輝香さんの3人目のお子さんである凛梨(りり)ちゃん。先天性の疾患を持って生まれ、まだ小さな体で手術を乗り越え、元気な“今”があります。
凛梨ちゃんの入院中は搾乳した母乳を届けて母乳育児を続けてきた経緯がある中で、有輝香さんにとって、授乳とは、どのようなものだったのでしょうか。
「やはり娘のことがあったので、授乳は赤ちゃんの命をつなぐかけがえのないものだという想いがあります。
栄養価においてももちろんそうですが、さらにわが家の場合、娘とは産まれてすぐ離れ離れになってしまったので、搾乳した母乳で授乳してもらえることで母としての存在意義を感じることができました。
そういう意味でも、授乳はかけがえのないものですね」
母乳卒業のときは、思わず涙
そんな凛梨(りり)ちゃんですが、大きくなった現在はミルク育児だそうです。
「あるときから私自身の体力的なこともあり、思いきり母乳を飲ませた後、ミルク育児に切り替えました。“もうおっぱいをあげることはできないんだ”と思ったら、さみしくて涙が止まりませんでしたね。
まだしばらく哺乳瓶での授乳は続きますが、このときはミルクを飲んでいる娘の顔を見ながらあげることを意識するようにしています。
ついテレビを見してしまったりするんですけれど、ハッとして娘の方を見ると、こちらをじっと見つめていたり、微笑みかけてくれたりしているんですよね」
子どもたちの姿が“頑張った証”
凛梨ちゃんには、3才と4才のお兄ちゃんがいます。3人のお子さんの母乳育児を通して、どんなことを感じましたか。
「長男のときは、夜に眠れない日が続き、授乳がつらかったですね。母乳は“白い血液”とも言われていますが、その言葉の通り、お母さんは命を削ってあげているようなもので、爪も髪もボロボロになりながら13kg痩せました。
次男は生後すぐに肺炎に罹ってNICUに入ってしまったので、娘と同じように、病院へ母乳を届ける毎日でした。
上の子たちのときを振り返ってみても、母乳育児では本当にいろいろありましたが、総体的には、すごく楽しかったなぁって思っています。私、授乳が好きだったんでしょうね。
そして何より、子どもたちがすくすくと育ってくれていることが頑張ってきたことの証と思えて、母親としての自信につながりました」
母乳育児が人生を豊かにしてくれた
母乳育児を通して、幸せを実感することもできたと有輝香さんは言います。
「“授乳は幸せな時間です”と聞くと、きれいごとに聞こえるんですけれど、娘の病気のことがあったので、娘を胸に抱いて授乳できる幸せをしみじみと感じ、心から幸せな時間だと思いましたね」
有輝香さんにとって、母乳育児とは何でしょう。
「人生を豊かにしてくれたもの…でしょうか。こんなに眠れないんだとか、こんなに幸せなんだとか。授乳をしていなかったら知らなかった苦労も喜びも、すべて体験させてくれました」
先天性心疾患を患って凛梨ちゃんが生まれ、手術を経て退院するまでの日々の中で、有輝香さんは、命があることは奇跡の連続であること、そして当たり前の日常は宝物であることを痛いほど感じたと言います。
この経験を通して有輝香さんが作った歌をシェアさせていただきます。こちらから⇒
★離れていても母乳があげられる。母乳の「保存」を知って、母乳育児をもっと自由に!
母乳の保存についての詳しい情報はこちら⇒
★わたしの授乳ストーリー<シンガーソングライター・石原有輝香さん編>前編もあります
取材・文/羽田朋美(Neem Tree)