赤ちゃんが飲む量と月齢って比例するもの?どうして個人差があるの?【助産師が解説】

赤ちゃんは小さいながらもおっぱいを飲む量に個人差があり、必ずしも月齢に比例して変化するわけではないそうです。とくに離乳食が始まると個人差が大きくなるのだとか。そこで今回は、オンラインで助産師サロンを運営する高杉絵理さんに、赤ちゃんの授乳量や回数の目安、赤ちゃんの飲む量に個人差がある理由などを教えていただきました。

赤ちゃんの月齢別にみる、平均的な飲む量や頻度

おっぱいを飲む赤ちゃん

赤ちゃんの1回に飲む量は、赤ちゃんの胃の容量で考えます。月齢別に、授乳量や回数などの目安をまとめました。実際は赤ちゃんの出生体重や生まれた週数などによっても異なりますし、また、後に説明しますが、離乳食の進み具合、赤ちゃんの個性、気分などによっても、飲む量やペースは変わっていくものです。あくまでも目安として参考にしてください。

・新生児(0ヵ月ごろ)~

赤ちゃんは生まれてすぐから母乳やミルクを吸う力はありますが、胃の容量は小さく赤ちゃんが飲む量はごくわずか。1回の授乳量(目安)は、30ml~50mlです。母乳は1日に8回以上、基本欲しがるだけあげます。ミルクは消化に時間がかかるので、1日に8回程度が目安です。

・2ヵ月ごろ~

胃の容量はまだ小さいですが少しずつ飲む量が増えて、1回の授乳量(目安)は120ml程度に。欲しがるだけあげるのが基本ですが、おっぱいを飲むのが上手になると、少しずつ授乳間隔も空くようになります。母乳・ミルクともに、1日に8回程度が目安です。

・4ヵ月ごろ~

赤ちゃんの胃の容量が増え、1回の授乳量(目安)は200ml程度になります。胃の消化機能が育ち、力強く飲めるようになることで徐々に授乳間隔も一定になっていくでしょう。母乳・ミルクともに、1日5回程度が目安ですが、離乳食が始まるまでは6回程度でもOK。赤ちゃんの胃の容量は4ヵ月で200mlの大きさになったら、1才ごろまでほとんど変わりません。

・5~6ヵ月ごろ(離乳食をスタートするころ)

母乳やミルクは、授乳のリズムに沿って与えます。離乳食は、はじめは午前中に1回、1ヵ月ぐらい経ったら、午前1回、午後1回の2回食にします。この時期の離乳食は、液体以外の食材に慣れることが主な目的なので、離乳食のあとに母乳・ミルクを与えてエネルギー・栄養面を補います。離乳食はまだ少量なので、飲む量は4ヵ月のときとほとんど変わりません。

・7~8ヵ月ごろ(離乳食が1日2回になって慣れてくるころ)

1日2回の離乳食に慣れてきても、エネルギーや栄養素はまだ、母乳やミルクから半分以上摂る時期。離乳食のあとに母乳やミルクを飲ませます。母乳であれば授乳のリズムに沿って赤ちゃんが欲しがる分だけ、ミルクは離乳食後の授乳以外で、3回程度を目安に様子をみながらあげましょう。離乳食を食べる量が増えてくると、必然的に飲む量は減ってくるでしょう。

・9~11ヵ月ごろ(離乳食が1日3回食に)

離乳食を1日に3回にし、エネルギーや栄養素の60~70%を離乳食で摂るようになります。離乳食のあとに母乳やミルクを飲ませ、母乳であれば授乳リズムに沿って赤ちゃんが欲しがる分だけ、ミルクは離乳食後の授乳以外で、2回程度を目安に様子をみながらあげましょう。食べることへの興味や、食事の楽しさが広がるころなので個人差が大きくなりますが、基本は200mlー離乳食量=授乳量と考えます。ただし、どの子にも食べムラや飲みムラがあるので、離乳食量・授乳量ともに厳密に測る必要はなく、目安としてとらえましょう。

・1才~

赤ちゃんの胃の容量は200ml~250mlほどになり、必要なエネルギー、栄養素の大部分を離乳食から摂取するようになります。離乳食は1日3回、大人と同じ時間帯にあげ、食事の合間に必要に応じて1~2回おやつ(間食)を取り入れて、エネルギーや栄養素を満たします。

1才以降は、離乳の完了に向けて食事でおなかをいっぱいにする練習をしていきます。離乳食の量が増える分、母乳やミルクを欲しがる回数や飲む量は減っていくでしょう。ただ、おっぱいはママと子どものスキンシップ、こころの栄養として2人が納得のいくまで続けてOKです。

赤ちゃんの飲む量が月齢に比例するとは限らない理由

赤ちゃんは発達とともに母乳やミルクを飲む量が増えていくことをお伝えしましたが、あくまで目安です。赤ちゃんの飲む量は個人差も大きく、必ずしも月齢に比例するということではありませんし、月齢に比例してたくさん飲めるようになったり、スピードが早くなったりするわけでもありません。ではどうして必ずしも月齢に比例しないのでしょうか。主な理由を3つ紹介します。

<理由その1>離乳食の進み具合によって異なる

離乳食が始まると、回数や量が増えていくに従って母乳やミルクを飲む量、回数は減っていきます。しかし、離乳食の進みや食べる量は個人差が大きく、離乳食をたくさん食べる子は必然的に母乳量やミルク量は減ってきますし、離乳食が進まない子は授乳量が多いままでしょう。いずれにしても、離乳食と授乳のリズムに沿って、赤ちゃんのペースで進めることが大切です。

なお、どうしても離乳食を食べないときは、先に少し授乳しておなかを軽く満たしてあげると、離乳食を食べてくれるということもあります。離乳食のあとに授乳するのが基本ですが、フレキシブルに対応しながら、まずは「食べることは楽しい!」という経験を重ねていくといいでしょう。

<理由その2>赤ちゃんによってペースが違う

抱っこされている赤ちゃん

同じ月齢でも飲む量などに個人差があるのは、赤ちゃんにもそれぞれペースがあるから。赤ちゃんは生まれてすぐから、口を大きく開け、乳首をしっかり吸って、おっぱいを飲みこむ能力を備えています。しかし、全部が得意な子も、得意ではない子もいますし、飲むスピードが早い子も、飲むのに時間がかかる子もいるでしょう。

ただし、授乳時間(両乳房)は、長くても30~40分程度です(純粋に飲ませている時間を指します)。それを大幅に超える場合は、授乳を一旦切り上げましょう。母乳分泌が足りないのか、ただ咥えているだけなのかを、排尿状況(おしっこが出ているか否か)や赤ちゃんの様子を見ながら判断します。授乳後におむつを確認して、そのたびにおしっこが出ていればそれだけ飲めているという目安になります。

また、おしっこの回数は1日に5回以上なので、それよりも少ないときや、いつもより回数が減っているときはミルクを足してあげましょう。飲む量やペースにムラがあっても、1日を通して必要な量を飲めていて、発育曲線に沿って体重が増えているなら問題はありません。

母乳をすぐに飲み終えてしまう場合も、授乳後の排尿状況や赤ちゃんの様子を見ながら、足りていないようであれば育児用ミルクを足します。ミルクをすぐに飲み切ってしまう場合は、乳首のサイズが赤ちゃんに合っていないのかもしれません。今よりゆっくり飲めるサイズ、硬さをチェックして、違う乳首に変えてみるといいでしょう。

<理由その3>赤ちゃんの気分や体調によってムラも出るもの

赤ちゃんも気分や体調のムラによって、よく飲む日、あまり飲まない日もあります。メニューによっても食べムラがあるし、3~4ヵ月過ぎると遊び飲みに夢中でグビグビ飲まない日もあるでしょう。機嫌がよく、体重が発育曲線に沿って増えていれば問題ないので、あまり神経質にならなくて大丈夫です。

ただし、食欲がない、機嫌が悪い、元気がない、いつもと違うというときは、赤ちゃんが体調を崩しているサインかもしれません。様子を見つつ、症状が続く場合は受診しましょう。食欲低下に加えて、嘔吐を繰り返す、発熱や下痢、ずっと機嫌が悪い、顔色が悪いなどもあれば、すぐに受診してください。

まとめ

「最初は頻繁に授乳してどんどん大きくなっていたのに、成長とともにあまり飲まなくなった」、「最初はおっぱいだけでは足りなくてミルクとの混合で大変だったのに、いつの間にかおっぱいだけになった」などのエピソードは、お母さんと赤ちゃんの数ほどあります。授乳のエピソードは、そのどれもがママと赤ちゃんとのかけがえのない思い出です。成長に伴って飲まない時期もあるし、すごく飲む時期もある、赤ちゃんによってそれぞれです。そしていつかは卒業していきます。限りある、赤ちゃんとのかけがえのない授乳時間を楽しんでくださいね。

【プロフィール】

高杉絵理先生

高杉絵理
看護師、助産師、保健師の資格を取得。国際ラクテーションコンサルタント。総合周産期母子医療センターの産科やNICU、産科クリニックで経験を積む。現在は世田谷区の保健センターで妊婦さんやママたちの相談業務に携わる。助産師にオンラインで相談できる「助産師サロン」も運営。先日お二人目をご出産され、2児の母としての育児も順調にスタート!
オンライン助産師サービス「助産師サロン」

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