母乳育児の授乳を、少しでもラクにするコツってあるの?【助産師がアドバイス】

新生児期は赤ちゃんもママも授乳に慣れていないので、うまく吸ってくれない、頻回授乳で肩や腕がつらい、乳首が切れて痛い……などのトラブルに悩む人も少なくないようです。しかし、母乳育児のトラブルはちょっとしたコツで防げることもあるそうです。今回は、一児の母であり、母乳育児経験者でもある助産師の榎本さんに、授乳を少しでもラクにするためのコツを伝授していただきました。

授乳をラクにするためのコツ

授乳中の赤ちゃん

授乳をラクにするための、基本となるコツを3つ紹介します。基本をおさえてトラブルを防ぎ、授乳タイムを少しでもラクで楽しい時間にできるといいですね。

【コツ1:授乳姿勢を正しくする!】

正しい姿勢で授乳すると、赤ちゃんはおっぱいを吸いやすくなり、ママも快適に授乳ができます。それに加え、肩こり、乳首の傷などのトラブルが起こりにくくなります。どの授乳姿勢であっても、以下の3点を押さえることが大切です。

1.赤ちゃんの体を一直線にし、ママのおなかと密着させる
赤ちゃんの頭、背筋、腰まで一直線になるようにして、赤ちゃんとママのおなかを向い合わせに密着させます。赤ちゃんの体全体をしっかり支えて、赤ちゃんの体がよじれないようにしましょう。

2.ママは背中をまっすぐにして、前屈みにならない
ママは肩の力は抜いて、背筋を伸ばします。赤ちゃんの顔だけでなく体ごとママの方を向かせ、赤ちゃんの背中を引き寄せおっぱいに近づけるようにします。前屈みになるとママも疲れますし赤ちゃんも飲みにくいので、おっぱいを赤ちゃんに近づけないよう注意。授乳中にママの足が浮いたり爪先立ちになったりして不安定なときは、足台があると姿勢を保ちやすくなります。

3.おっぱいを深くくわえさせる
赤ちゃんが口を開けたタイミングで乳輪まで深くくわえさせます。授乳クッションやバスタオルなどを使うと、高さの調整がラクになります。含ませ方が浅いと母乳の出が悪くなったり、乳首が切れたりするトラブルを招きやすいので気をつけましょう。

【コツ2:複数の授乳スタイルを持つ】

複数の授乳姿勢で授乳すると、いろいろな方向から飲んでもらえるので乳房トラブルが起きにくくなります。乳房の大きさや乳首の向きや特徴などにより、ママに合った抱き方があります。たとえば、乳房の脇側が張りやすいママは、フットボール抱きをすると脇にたまる母乳を赤ちゃんが飲んでくれることがあります。自分に合った授乳姿勢をいくつか見つけられるとよいですね。

また、赤ちゃんの成長とともにラクな授乳姿勢は変わってくることもあるので、授乳姿勢を1つに限定せずいろいろ試してみましょう。

【コツ3:赤ちゃんが泣く前に落ち着いた状態で授乳する】

赤ちゃんが泣くのには様々な原因がありますが、「おなかがすいた」サインである場合もあります。しかし、激しく泣いているときに焦って授乳すると、赤ちゃんの舌が上がってしまい、うまく吸えなくなることがあります。また、焦ると授乳姿勢が崩れてしまうこともあるので、抱っこでなだめて少し落ち着かせてから授乳しましょう。

授乳に適しているのは、赤ちゃんが「静かな覚醒状態」のタイミングといわれています。「静かな覚醒状態」では、赤ちゃんは口をぱくぱくさせる、手を口に持ってくる、吸うときのような音を立てるなどの動作をします。そのタイミングで授乳します。ママも余裕を持って授乳できるので、気持ちの面での負担が軽くなるでしょう。

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頻回授乳、夜中の授乳をラクにするコツは?

授乳中の赤ちゃん2

母乳は消化がよく、時間にこだわらず「欲しがるだけ飲ませる」自律授乳が基本のため、授乳タイムは頻回になります。また睡眠も細切れになりがちで、慣れるまでは大変に感じるかもしれません。そこで、頻回授乳や夜中の授乳を少しでもラクにするためのコツを2つ紹介します。

【コツ1: 乳頭が赤くなった、痛みがあるなどの場合は、早めに乳頭クリームでケアを】

吸わせ方が浅いままで頻回に授乳することで、乳首が痛くなったり、赤みが出たり、傷がつきやすくなります。そこで、授乳後にラノリンや馬油などの授乳クリームを乳頭に塗って、乳頭の皮膚を保護するのがおすすめです。

また、産後すぐで乳頭がかたい場合は、授乳前にいろんな方向から乳頭を圧迫してやわらかくしましょう。やわらかくなると赤ちゃんは吸いやすくなりますし、ママも痛みを軽減できます。また、傷もできにくくなります。

【コツ2: 搾乳した母乳をパパや他の家族にあげてもらう】

夜中の授乳がつらい、まとまった睡眠が欲しいなどの場合には、搾乳した母乳をパパや他の家族にあげてもらう方法もあります。長時間になるとおっぱいが張ってしまって反対に休めなくなってしまうこともあり、あまり長くは眠れないでしょう。

しかし、いつもより少しでもまとまった長めの睡眠がとれるだけで、気持ちもリラックスしやすいので母乳にもいい影響があるかもしれません。パパの仕事や家族の都合なども含めて、話し合って調整してみましょう。搾母乳は消毒した哺乳瓶や母乳パックに清潔に保存し、保存期間には注意を。冷凍保存であれば3ヵ月以内、冷蔵保存なら24時間以内が目安です。

慣れないうちは搾乳するのにも時間がかかり、搾乳器の洗浄や消毒に手間がかかることもあります。授乳前後のおむつ交換、授乳後のゲップや寝かしつけなどはパパや家族が代わってできるとよいですね。ママが母乳をあげるだけに専念できるよう周りがサポートすることも、授乳をラクにする方法です。

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母乳を冷凍保存・解凍するときのポイントや注意点のまとめ【助産師が解説】

リフレッシュ時間について

赤ちゃんが寝ている間などの隙間時間を利用して、上手にリフレッシュをしましょう。オンラインクラスや動画サイトを使ってヨガや無理のない範囲の運動をするのもおすすめです。育児中は大人と会話する機会が減りがちなので、ビデオ通話機能やオンライン会議ツールなどを使って友だちや祖父母と話すのも、いい気分転換に。音量に配慮しつつ、映画を観るのもいいですね。

おやつタイムでリラックスもOK。ただし、お菓子ではなく芋類やナッツ類、小さいおにぎりなど腹持ちが良く栄養がとれるものがおすすめです。授乳中はカロリーが必要ですが、菓子類やパン類はカロリーが高い割に消化が早く、過剰に摂りすぎる心配があるので避けましょう。

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一人での外出タイムで息抜きも

赤ちゃんはかわいいし、子育ても楽しい。だけど、一人で外出したい気分にもなる。それはとても自然なことです。子育てが始まっても、たまにはママ一人の時間も楽しみましょう。

そのためには、授乳のタイミングなどを家族と共有しておくこと。搾母乳やミルクの与え方を伝えておきましょう。普段から、張っているのに飲まなかったときなどに搾乳して冷凍しておくと、いざというときにも便利です。最初は、外出前に授乳や搾乳しておいて、次の授乳までに帰宅するようにするのがおすすめです。外出先でおっぱいが張ってしまうという事態を避けやすくなり、お出かけしやすくなるでしょう。

ほかにも、ママが一人で外出するためにはいろいろな準備が必要です。こちらの記事で詳しくまとめていますので、ご参照くださいね。

授乳中のママだって息抜きしたい!一人で外出するための4つの準備【ママ助産師が解説】

産前産後の情報収集について

ママと助産師さん

母乳外来で相談したり、マッサージを受けたりするのもおすすめです。悩んだり不安になったりしたときはもちろん、そうでないときでも、気持ちがラクになることがあるでしょう。事前にホームページなどでの確認や、電話で問い合わせしてみましょう。

産前から2人で母乳育児について知っておこう

産前にいかに母乳育児について知っておくかも、産後の母乳育児をラクにするコツです。ママの役割と思われがちな母乳育児ですが、“母乳を出す”以外のことはパパにもできます。妊娠中から2人で、母乳育児のことを知っておきましょう。

妊娠中から乳頭ケアを

妊娠中に乳頭ケアをして、赤ちゃんが吸いやすいやわらかい乳首にしておく準備も大切です。乳頭ケアでおなかが張ることもありますので、助産師や主治医に相談して、指導を受けてから始めてください。入浴後は身体が温まっているので乳頭ケアしやすく効果的です。また、ラノリンや馬油などを塗ってケアするのもいいでしょう。

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まとめ

母乳育児は軌道にのるまで大変なこともありますが、コツがつかめるとラクになります。母乳をあげられる期間は思っているよりあっという間に終わってしまいます。この貴重な時期の授乳タイムをより楽しめるように、今回ご紹介した母乳育児をラクにする方法、ぜひ試してみてくださいね。うまくいかないときはひとりで悩んだりせず、母乳外来や助産師訪問、地域の助産師に相談しましょう。

搾乳は電動&コードレスタイプが便利です

母乳育児を1人で抱えすぎないために「冷凍母乳」も活用を

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【プロフィール】

榎本美紀さん

榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」

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