母乳育児をしているママは水分をたくさんとる必要がありますが、それならば母乳の質や出をよくするものを飲みたい、と思いますよね。そこで今回は、相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、母乳育児中におすすめの飲み物や、コーヒーやアルコールの摂取についてお話を伺いました。
ーーそもそも母乳にいい飲み物ってなんでしょうか?
母乳は血液から作られていて、約88%が水分でできています。そして母乳に含まれる栄養素が、赤ちゃんの栄養源になります。そのため、母乳の質をよくする、出をよくするという意味では、1日2リットル程度の水分補給をすること、栄養バランスに配慮することなどが大切です。
つまり、特定の飲み物を飲めば母乳の質や出がよくなる、ということではなく色々な飲み物を適度に飲むことで、栄養バランスがよくなることもあり、結果的に「母乳にいい」といえる場合もあります。1日2リットル程度の水分をとるのは大変なので、お水以外にもノンカフェインのお茶やハーブティーを飲んだり、また食事のときにスープやお味噌汁などで補ったりするといいかもしれませんね。
ーー母乳育児中のママにおすすめの飲み物を教えてください!
カフェインは母乳を介して赤ちゃんに移行してしまうため、ノンカフェインでもおいしく飲める飲み物をご紹介します。
・麦茶
各種ミネラルや血行をよくする効果のあるGABAも含まれています。優しい風味なので赤ちゃんにも○。ただし苦みを感じる場合もあるので少し薄めてあげましょう。
・ルイボスティー
ポリフェノールの一種であるフラボノイドが含まれる赤いお茶。フラボノイドには活性酸素を防いで体細胞の老化を防いでくれたり、基礎体温を上昇させたりするほか、血流促進をしてくれる効果が。
・ローズヒップティー
ローズヒップはバラの花が咲いた後の実のことをさし、ビタミンCが豊富に含まれているので美肌づくりによいといわれています。ローズヒップティーは色が赤く、味は少し酸味があるのが特徴です。
・たんぽぽ茶(たんぽぽコーヒー)
たんぽぽの根を焙煎して作られたハーブティーでミネラルが含まれています。香ばしい香りと苦みがありコーヒーに似ているため、コーヒー代わりの飲み物として、妊婦さんからも親しまれています。
・ごぼう茶
食物繊維やポリフェノールの一種であるサポニンが豊富に含まれているため、お腹をスッキリさせる効果が期待できます。香ばしい味わいも特徴です。
・その他のハーブティー
ハーブティーにはたくさんの種類がありますので、その日の気分で選んでリラックスするひとときをもつのもいいですね。なお、授乳期に適さないものもあるので調べてから購入しましょう。母乳育児をする方向けにブレンドされたハーブティーなら安心ですね。
ーーコーヒーやアルコールはやっぱり我慢しなくてはダメですか?
ママがコーヒーを飲んでカフェインを摂取した際、カフェインは母乳を介して赤ちゃんに移行し、赤ちゃんは興奮して眠れなくなったりします。そのためカフェインはできれば避けていただきたいのですが、1日に1~2杯程度のコーヒー摂取であれば乳児への影響は心配するほどのものではありません。
また、アルコールも同じく母乳を介して赤ちゃんに移行します。ママの飲酒量が多い場合には、母乳分泌量の低下がみられ、その結果、赤ちゃんの成長が抑制されることもあります。そこでノンアルコール飲料でお酒の気分を味わうのはいかがでしょうか。ただし、ノンアルコールと表示されていても1%まではアルコールが入っていることがあります。購入時は必ず、アルコールが全く入っていないことを確認しましょう。
最後に
何より大切なのはママが育児を楽しむことなので、あまり食べ物や飲み物を気にしたり、我慢しすぎたりせず、ママたちがゆったりした気持ちで赤ちゃんとの時間を過ごせることを願っています。ママの笑顔は赤ちゃんの心の栄養なのですから。
今日ご紹介した飲み物も、「これを飲まなきゃ!」となるのではなく、いくつか用意しておいてその日の気分に合わせて選んではいかがでしょう。日常生活の中でおいしく楽しく飲んでいただけたら嬉しいです。
【著者プロフィール】
堤ちはる
相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、助教授、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。