わが子にアレルギーが発症しないようにと誰もが願うことと思います。でも、「妊娠中や授乳中、卵や牛乳は避けた方がいいの?食べた方がいいの?」などママたちは疑問でいっぱいですよね。そこで今回は、産婦人科医の天神先生にお話を伺いました。現在は妊娠中・授乳中の食事と、赤ちゃんのアレルギー発症には関係がないことが分かってきているそうです。
ーー妊娠中や授乳中の食事は、赤ちゃんの食物アレルギーに影響がありますか?
現在は妊娠中・授乳中のママの食べ物が、赤ちゃんの食物アレルギーの発症につながるというエビデンスはないと世界各地で報告されています。2019年3月には厚生労働省も「授乳・離乳の支援ガイド」(改定版)にて、「子どもの湿疹や食物アレルギー、ぜんそくなどのアレルギー疾患の予防のために、妊娠・授乳中の母親が特定の食品やサプリメントを過剰に摂取したり、避けたりすることに関する効果は示されていない。」と発表しています。
昔は効果があると考えて、妊娠中や授乳中に、卵、牛乳、小麦などの食事制限を行うこともありましたが、そのようなことをしても赤ちゃんの食物アレルギー発生率には影響がなかったのです。妊娠中も授乳中も、ママが栄養バランスの良い食事をとることが健康な赤ちゃんを育てるために大切とされています。
ーー妊婦中・授乳中の食事はどんなことに気をつけたらいいでしょうか。ポイントはなんですか?
何かを食べたからといってアレルギーになることはないので、アレルギーのことを気にせずに、妊娠中も授乳中もバランスのよい食事をとることが大切です。妊婦さんや母乳育児中のママの栄養は、赤ちゃんの栄養源となるからです。主食、主菜、副菜にプラスαを組み合わせることで必要な栄養素をバランスよくとりましょう。ポイントはこの4つ。
1.主食:ごはんやパンなどの炭水化物を中心に、エネルギーをしっかりとる
食事のバランスと活動量に気を配って食事量を調節し、体重の変化も意識しましょう。
2.主菜:体づくりの基礎となる肉、魚、卵、大豆などのたんぱく質をバランスよく
赤身の肉や魚などで鉄分も上手に取り入れて、貧血を防ぎましょう。ただし、妊娠初期はレバーやうなぎなどに含まれるビタミンAのとりすぎには気をつけて。
3.副菜:不足しがちなビタミン・ミネラルを含む野菜をたっぷりとる
緑黄色野菜を積極的に食べましょう。特にビタミンB群である葉酸は妊娠前や妊娠初期の方には赤ちゃんの神経管閉鎖障害発症リスクの低減のためにも大切です。妊娠・授乳中はとりたい量も増えるので、食事にプラスして、葉酸のサプリメントを活用するのもおすすめです。
4.牛乳や乳製品などの多様な食品を組み合わせてカルシウムを十分にとる
赤ちゃんの歯や骨を作る大切な栄養素のひとつ。日本人は平均的にカルシウム不足になりがちといわれているので積極的に。乳製品以外にも、小魚、さくらえび、もめん豆腐などにも含まれます。
参考:
厚生労働省・農林水産省「妊産婦のための食事バランスガイド」
パンフレット外面
パンフレット内面
ママたちが赤ちゃんのアレルギーを心配するお気持ちはとってもよく分かります。ですが、ママたちが赤ちゃんのためにできることは、赤ちゃんに栄養をバランスよくいきわたらせること。ですので、あまりアレルギーのことを心配しすぎずに、ゆったりした気持ちでマタニティライフや育児を楽しんでくださいね。もし授乳後や、離乳食後の赤ちゃんに湿疹など気になる症状がみられた場合は、自分で判断せずに、必ず小児科のアレルギー専門医などに相談するようにしましょう。
【著者プロフィール】
天神尚子
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。