母乳育児中のママがとるべき食事とは?母乳に大切な栄養素は?【管理栄養士が監修】

妊娠中、赤ちゃんのために栄養バランスに気を付けて食事をとるよういわれていたと思いますが、授乳中も同じことがいえます。ママが食べた食事内容が母乳に影響することがあるからです。ではバランスのよい食事とはどのような食事なのでしょうか。また授乳中のママが特に摂取したほうがいい栄養素はあるのでしょうか。

今回は、相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、授乳中のママの食事について教えて頂きました。

ママはどんな食事をとればいいの?

授乳中、「脂っぽいものはおっぱいが詰まる」とか「おもちをたべるといいおっぱいが出る」などの情報に「本当かしら?」と疑問をもつママは少なくありません。ですが、実際は授乳中のママに特別な食事は必要なく、またアルコール以外に食べてはいけないものもありません。

一番大切なことは栄養バランスのよい食事がしっかりとれていること。バランスのとれた食事はママのからだを健康にします。ママが健康でいられることが、赤ちゃんにとってもママにとっても重要です。

栄養バランスのよい食事ってどんな食事?

栄養バランスのよい食事とは、「主食」、「主菜」、「副菜」がそろった食事のこと。1日2回以上はこの3つをそろえた食事をとりましょう。

主食とは

主食イメージ

ごはん、パン、麺類など、炭水化物が豊富でエネルギー源となります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準 (2020年版)」では、総摂取エネルギーの50~65%は、炭水化物で摂取することが示されています。授乳中は非妊娠時よりも350kcal多くエネルギーが必要とされています。主食はしっかりとりたいですね。

主菜とは

主菜イメージ

肉や魚、卵、大豆製品などたんぱく質を多く含む食材を主材料とする料理のことです。たんぱく質は血液や筋肉を作る重要な栄養素。忙しいときは、食事に冷ややっこを追加したり、市販のサラダチキンや魚の缶詰を利用したりすると、手軽にたんぱく質を摂取することができます。

なお、授乳中のたんぱく質の1日の平均必要量は妊娠前より15~20g多いことが「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に示されています。

副菜とは

副菜イメージ

野菜やきのこや海藻類などを中心とした料理のことです。ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれていて、体の調子を整える役割があります。役割がそれぞれ異なるので、いくつかの種類を組み合わせられるといいですね。料理が大変なときは冷凍野菜を利用するのもよいかもしれません。

ビタミンやミネラルにはさまざまな種類がありますが、例えばビタミンCなら妊娠前の+40~45mg、亜鉛(ミネラル)なら+3~4gが、授乳中の1日に必要な量であることが「日本人の食事摂取基準(2020年版)」に示されています。

妊娠中と授乳中に必要な食事摂取基準については、詳しくは以下を参照してください。

「日本人の食事摂取基準 (2020年版)」(授乳婦の食事摂取基準は8ページ)

なかでも意識してとりたい栄養素は

普段からバランスのよい食事がとれていれば、授乳期だからといって、特別に意識してとらなければならない栄養素は基本的にありません。しかし、鉄は妊娠中から不足している方もみられることから、十分な量がとれるようにしたい栄養素です。

鉄が不足すると貧血ぎみになったり、疲れやすい体になってしまうので、レバー、赤身の魚・肉類、ほうれん草、卵、しじみ、海苔など、鉄が含まれた食材を積極的に利用することが勧められます。

なお、母乳に含まれる鉄は少なく、母乳育児の場合、生後6ヵ月頃から赤ちゃんの鉄が不足してしまうことが分かっています。鉄の含まれた食材を離乳食メニューに活用して、赤ちゃんの鉄不足にも気を付けましょう。育児用ミルクやフォローアップミルクには鉄が豊富に含まれているので、ミルクがゆなど、ミルクを使った離乳食メニューを作ることもおすすめです。

関連情報:母乳は鉄不足になるの?かんたんに鉄分を補う方法を管理栄養士が伝授!

とり過ぎに注意してほしい栄養素は

ヨウ素は体に欠かせないミネラルで、わかめ、のり、昆布などに含まれ、それらの食品は体によいとされています。しかし、ヨウ素を取り過ぎると甲状腺の機能に影響があること、母乳を介して赤ちゃんに移行することが分かっているので、過剰摂取には気を付ける必要があります。

また、ヨウ素は上記の日本人に身近な食材に含まれているほか、粉末の昆布だしや昆布パウダーなどにも含まれています。それらは食品に旨味を付与するので、おせんべいやポテトチップスなどにも使われていることがあります。そこで、わかめ、のり、昆布などをあまり食べていないと思っている方でも、気づかないうちにヨウ素を摂取している場合もあります。

ヨウ素は母乳中に移行するため、授乳期に必要なヨウ素の量は妊娠期の+100μgですが、とり過ぎには注意しましょう。一方で、わかめ、のり、昆布などを意図的に避けると、ヨウ素不足につながります。

ヨウ素に限りませんが、体に良いからといって、特定の食品ばかりを食べ続けたり、体に悪いからといって避け続けたりすると、必要な栄養素を適切に処理することが難しくなります。多様な食品を組み合わせて、バランスよく食べることを心がけましょう。

母乳育児中、とってはいけないもの

前述したとおり、妊娠中に引き続き授乳中もアルコールの摂取はNGです。低濃度でもママがアルコールを摂取すると母乳にも移行して乳児の発育・発達に影響を与えることがあります。そのため禁酒することが大切です。

お酒好きのママは、ノンアルコール(アルコールが0%のもの)飲料でお酒気分を味わってみてはいかがでしょうか。また、カフェインも母乳で赤ちゃんに移行するため、コーヒーなら1日1~2杯程度にしておくと安心です。

まとめ

今回は授乳中のママに必要なエネルギー(カロリー)や栄養素についてお話しました。食事は栄養バランスよくしっかりとることを心がけてくださいね。ただし、授乳中は体の変化だけでなく、毎日の生活リズムも大きく変化し、食事の用意もままならないことがあるかもしれません。ミールキットの購入、宅配サービスの利用など、便利なものを活用して、できるだけ無理のないようにしましょう。

また、一人で抱えず、疲れていることなどを周りに伝えて周りのサポートを求めることもとても大切です。授乳期をリラックスして過ごし、ママも赤ちゃんも心身ともに健康で楽しく、心豊かな生活が送れるといいですね。

参考文献:
厚生労働省「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針(令和3年3月)」
国立健康・栄養研究所「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」

【プロフィール】

堤ちはる先生

堤ちはる
相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、助教授、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。

関連情報:ママの体と母乳栄養をサプリで手軽にWサポート「母乳パワープラス」(PR)

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