母乳育児ケーススタディNo.4:『ママが貧血気味の場合、母乳育児はしない方がいいの?』

母乳がママの血液から作られるというのはご存知ですか?もともと貧血気味の方も多いと思いますが、これを聞くと、貧血気味のママが母乳育児をしても大丈夫なのだろうか…と不安に感じる人もいるでしょう。

今回は、ママが貧血気味の場合の母乳育児について、産婦人科医の十倉陽子先生に話を聞いてみました。

「母乳がママの血液から作られる」とは、どういうことでしょうか?

乳頭を赤ちゃんに吸ってもらうことが刺激となり、脳から「プロラクチン」というホルモンが分泌されます。
この「プロラクチン」の刺激は、乳房の中の乳腺に指令を出し、乳房の中の血管から母乳を作り出します。このことから、「母乳はママの血液から作られる」と表現されることがあります。

普段から貧血気味のママが母乳育児を続けることで、赤ちゃんとママ自身にどんな影響があるのでしょうか?

・赤ちゃんへの影響
赤ちゃんは、生後半年くらいの間は母乳から鉄分を摂り入れることは少なく、妊娠中にママから受け継ぎ体に蓄えてある「貯蔵鉄」で、鉄の必要量をまかなっています。

生後半年を過ぎるころからは貯蔵鉄を使い果たしてしまうため、母乳、人工乳、離乳食などからの鉄分の摂取が必要になってきます。
ママの貧血を改善しないまま母乳栄養を続けると、赤ちゃんが鉄不足の状態に置かれる可能性があります。

ヘモグロビン(血色素)濃度が極端に低い状態が3ヵ月以上続くと、精神発達や運動発達が阻害される可能性もあります。

・ママへの影響
ママは、妊娠中赤ちゃんに貯蔵鉄を与え、出産では出血もあるため、産後は貧血の改善が必要になります。

家事や赤ちゃんのことで自分のことは後回しになりがちですが、ママの食事の回数が少ない中で母乳栄養を続けていると、ママ自身の貧血が改善しにくいことがあります。

また、出産直後はプロラクチンの影響で無月経状態になるため鉄の喪失が減っていきますが、月経が再開すると鉄の喪失スピードがまた早くなり、貧血症状がひどくなる方もいると思います。

普段から貧血気味のママが母乳育児を続けるには、どうすればよいでしょうか?

ママの貧血を改善していく必要がありますので、お肉や赤身のお魚など、鉄分が多めの食材を食事に積極的に摂り入れてみましょう。

基本的には、食生活でさまざまな栄養を摂ることを心がけていただき、必要であればサプリメントなどで補うのもよいでしょう。

私自身は、仕事復帰と育児で自分の食事をゆっくりとることができないこともあったため、妊婦用のサプリメントを産後も利用したりしていました。

また赤ちゃんにも、ときには人工乳を飲ませたり、離乳食に鉄分の多いレバー、鶏肉、牛肉、赤身のお魚などを積極的に使用していくことも大切です。

赤ちゃんとママ

最後に

産後すぐは、授乳で失われる鉄分は少なく月経も止まっているので、貧血気味のママも自信を持って母乳育児をしていただきたいです。
また、授乳で疲れているママのために、パパは料理を作ってあげたりお惣菜などを活用したりして、積極的にママをヘルプしてあげてくださいね。

【著者プロフィール】

十倉 陽子先生

十倉 陽子
大学卒業後、総合診療、家庭医、地域医療を初期研修で学び、産婦人科医局に入局。
婦人科良性腫瘍手術、性感染症、女性医療、婦人科悪性腫瘍、周産期医療、新生児治療の研修を踏まえ、現在は不妊治療専門施設に勤務。体外受精を含む不妊治療を中心に、その他女性のトラブル全般に対応できる女性の全人的医療者を目指しています。二児の母。現在英ウィメンズクリニック勤務。

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