「これはひどい! おかあさん、痛かったでしょう」
助産師さんが心底同情した面持ちで、やさしく声を掛けてくれた。
なかなか吸わせ方や抱き方のコツがつかめず、産後すぐにおっぱいに
傷ができてしまった。
それでも痛みをガマンしながらだましだまし授乳していたのだけど、
ついに耐えられなくなり、出産した産院の母乳外来を訪れた。
「傷が癒えるまで、さく乳器を使ってみたらどうかしら」
授乳が苦痛になっていた私にとって、それはまさに、天の声だった。
「授乳を繰り返すうちに乳首は柔らかく伸びるようになっていくし、
赤ちゃんの口も大きくなっていきますから、上手に吸ってもらえる日は
必ず来ますよ。だから今は、傷を治すことに専念してくださいね」
助産師さんの、この言葉に救われた。
それから数日。
息子は哺乳びんにも慣れ、さく乳した母乳を飲んでいる。
おっぱいの傷は、だいぶよくなってきた。
傷が一番ひどかったときは、あまりの痛さに母乳育児をあきらめかけたけれどー。
今、こうして母乳を飲ませてあげられることが、本当にうれしい。