添い乳は「横になれるのでからだが休まる!」「夜泣きは添い乳で乗りこえた」というママもいれば、「危険と聞いたことがありしていない」「やり方が分からない」というママもいると思います。
そこで今回は、添い乳のメリットやデメリット、安全で正しい添い乳の方法について、杏林大学保健学部看護学科の准教授で助産師教育に携わっている加藤千晶先生に教えていただきました。添い乳は、正しい方法でおこなえば安全で、授乳の負担を軽くしてくれるそうです。
●添い乳とは?
添い乳とは、ママと赤ちゃんが横に寝た姿勢で授乳することをいいます。横になった状態で授乳するため、ママも体を休めることができます。
抱っこでの姿勢はだんだん疲れてきてしまいますが、添い乳は疲れにくく、ママの体調が悪いとき、帝王切開による痛みが残っている時期などにおすすめの授乳方法です。
●添い乳のメリットは?
添い乳にはさまざまなメリットがあります。赤ちゃんはママにからだを密着させるので、ママの温もりを感じながら安心しておっぱいを飲むことができます。ママにとっても赤ちゃんとのスキンシップになるので、母子の癒やしの時間ともいえるかもしれません。
また寒い冬や夜間などの気温が下がる時間でも、布団からでることなく授乳ができる点も魅力。注意点を守っていれば新生児からでも行うことができるのもメリットです。
●添い乳のデメリットは?SIDS(乳幼児突然死症候群)の危険性もある?
添い乳のデメリットですが、ママが添い乳中に寝てしまった場合、ママのおっぱいやからだが赤ちゃんに覆いかぶさってしまい赤ちゃんを窒息させてしまうリスクがあることが挙げられます。
さらに、詳しいメカニズムは解明されていないのですが添い乳にはSIDSのリスクがあることも指摘されています。 これは、添い乳後、SIDS発症率を下げるといわれている仰向けではなく、横向きのまま寝かせてしまう可能性があるためかもしれません。
また、赤ちゃんがおっぱいを飲んだまま眠りについたからと、授乳後にげっぷをさせないとおっぱいが胃から戻ってきて、そのおっぱいが耳に入り(のどと耳はつながっています)中耳炎になることがあります。
いずれもママが起きていて、赤ちゃんにげっぷをさせる、仰向けに寝かせるなどに注意すれば防げることですが、うっかり寝てしまうとこのようなリスクがあることを気に留めておく必要があります。ママ側のデメリットとして、赤ちゃんがおっぱいを浅くくわえてしまう場合、乳首に傷がついてしまうことがあるので姿勢などを工夫することが大切です。
●安全で正しい添い乳の方法とは
メリットもデメリットもある添い乳。正しく行えば安全で、ママにとってはからだが休まり赤ちゃんは安心感と幸せな気持ちに包まれる授乳方法です。添い乳のコツと注意点をお伝えします。
【添い乳をするときの3つのコツ】
1)ママと赤ちゃんのおなかを向かい合せてぴったりと密着させる。
おなかが密着している状態だと赤ちゃんは吸いやすくなります。赤ちゃんの背中に丸めたバスタオルやクッションなどの支えになるものを置いて、赤ちゃんのからだにねじれがなく一直線になるよう支えてあげましょう。その際、赤ちゃんの頭は赤ちゃんが苦しいときに動かせるように固定しないようにします。
2)赤ちゃんの頭とママのおっぱいの高さを調節する
赤ちゃんの顔とママのおっぱいの高さが合わない場合、赤ちゃんの頭やからだの下にタオルなどを敷いてあげましょう。また、上側のおっぱいを、ママのからだを傾けて飲ませると赤ちゃんの顔を覆い、鼻をふさいでしまうリスクがあります。常にママの下側のおっぱいを授乳するよう、ママが向きを変えて飲ませてあげると安心です。
3)クッションなどを使ってママの姿勢をラクにする
添い乳中、ママは足を曲げておくと少しラクになります。また、ママの足の間に枕やクッションなどを挟むとママの姿勢が安定しやすくなるようです。ママの頭を高くするとラクになる場合は枕を2重にする、枕を折り曲げて使うなどの工夫をしましょう。
【添い乳を安全におこなうための注意点4つ】
添い乳を安全に行うために意識してほしいことは、主に赤ちゃんの窒息予防と圧迫予防です。また、中耳炎予防も大切です。具体的に解説していきますね。
1)赤ちゃんの顔が見える状態でおこなう
赤ちゃんの鼻や口がママのおっぱいでふさがれてしまわないように、ママが赤ちゃんの顔が見える高さで横になる必要があります。枕を高くするなど工夫して赤ちゃんの顔を見ながら授乳しましょう。
真っ暗なお部屋での添い乳も赤ちゃんの顔が見えず危険なので、顔が見える程度にお部屋を明るくしておくことが大切です。
2)授乳が終わったら赤ちゃんにげっぷをさせる
赤ちゃんの中耳炎の原因として胃から戻ってきたおっぱいによるものがあります。おっぱいを飲んでそのまま寝かせてしまうと、赤ちゃんの胃に入った母乳が逆流しそれが耳にも行ってしまって、中耳炎になると考えられています。
授乳後は、必ず赤ちゃんを起こして背中をたたくなどしてげっぷをさせましょう。また、飲ませる際にも、赤ちゃんの頭をからだよりも若干高くなるように調整してあげるとより安心です。
3)硬めの敷布団を使い、掛け布団は大人と赤ちゃんは別々に!
大人用の敷布団はやわらかすぎて、赤ちゃんの顔が埋まってしまい窒息する可能性があります。また、大人用の掛け布団は赤ちゃんには重く、手で払いのけることができないため危険です。
そこで、添い乳をする際は硬めの敷布団を使い、掛け布団はママと別のものにしてください。赤ちゃんが横になるところに硬めのベッドパッドなどを敷くと便利ですね。
授乳が終わってげっぷをさせ、赤ちゃんが寝たあとは、赤ちゃんをベビーベッドあるいはベビー布団に移動させましょう。ママが眠ってしまったときに赤ちゃんに覆いかぶさるリスクを防ぐことができます。
4)ママの疲れがたまっているとき、眠ってしまいそうなときは添い乳をしない
ママのおっぱいやからだで赤ちゃんの鼻や口をふさいでしまう、というリスクを避けるため、ママが眠ってしまいそうなときは添い乳をするのはやめておきましょう。
●まとめ
わが子はかわいくてたまらないと思っていても、頻繁な授乳や夜中の授乳はママにとってつらいものです。添い乳はそんな授乳タイムを少しラクにしてくれるかもしれません。
授乳がつらいときは、添い乳の正しい方法を理解して安全に取り入れてみることも良いですね。そうして無理のない母乳育児を続けていただけたらと思います。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。