授乳と赤ちゃんの眠り・目覚めには深い関係があるそうです。そう聞くと、「夜も泣くたびに母乳をあげて睡眠に影響しない?」「授乳のあとにすぐに寝かしつけるのはやめたほうがいい?」「睡眠のリズムってどうすれば整うの?」など、疑問に感じることもあるのではないでしょうか。そこで今回は、杏林大学保健学部看護学科の准教授である助産師の加藤千晶先生に、授乳と赤ちゃんの睡眠の関係や、バランスのとり方、赤ちゃんの睡眠環境の整え方などを解説していただきました。
夜寝ている間も、赤ちゃんが泣いたら母乳ってあげたほうがいいの?
新生児期の赤ちゃんは胃の容量が小さく、1回で飲める量はごくわずかなので授乳は頻回になります。加えて、赤ちゃんは浅い眠りと深い眠りの間隔が短く、母乳の消化も早いので昼夜問わず、赤ちゃんが母乳を欲しがれば欲しがるだけあげましょう。
生後3週間くらい経って、1回の授乳でおなか一杯に飲むことができるようになれば、1時間程度で空腹になることはないと思います。生後2ヵ月ごろまでは赤ちゃんが欲しがれば欲しがるだけあげますが、この頃からは「赤ちゃんが泣いたらすぐにおっぱい」ではなく、前回の授乳時間からの間隔(2~3時間空いているか)や、前回の授乳量を確認して泣いている理由を判断することも大切です。たとえば、夜寝ているときに赤ちゃんが泣いても、「前回の授乳はしっかり飲んでいるはず」と思えば、落ち着いて眠れるように背中をトントンしたり、足をやさしくなでたりして、起こさずにそのまま寝かしつけていいでしょう。
赤ちゃんが泣くのは必ずしも空腹のサインではなく、ただむずがっているだけ、寝ぼけているだけ、寂しいだけなどの場合もあります。母乳を飲みすぎて、苦しくて眠れずに泣いていることも考えられます。赤ちゃんによって空腹や眠れない等の意思表示の表現方法は違いますから、おっぱいかどうかを確実に見極めることは難しいと思いますが、日中にできるだけ赤ちゃんの表情や仕草に目を向けて、どんな気持ちをママやパパに伝えているのか、日々の育児で感じていくことも大切です。
夜中に授乳するときのポイント
夜中に授乳するときは、授乳後に赤ちゃんが安心して眠れるよう、暗くて静かな環境をキープして脳を覚醒させるのを防ぎます。室内の照明ではなく、懐中電灯や授乳ライトなどで手元だけを照らし、授乳やおむつ替えを済ませましょう。手早く済ませられるよう、授乳やおむつ替えに必要なものは枕元などにセットして置いておくといいですね。脳を刺激する可能性があるので、スマホの光(ブルーライト)で手元を照らしたり、夜間の授乳時にスマホのアプリなどを見せたりするのは避けましょう。
授乳と眠りとのバランスのとり方
授乳と赤ちゃんの眠り・目覚めには深い関係があるとされ、「飲みながら眠りにつくよりも、授乳を終えてから眠るのが睡眠リズムに良い」と言われています。授乳“しながら”眠るのは、大人でいえば食事“しながら”眠るということになり、それでは良い睡眠にはつながりにくく、また授乳なしでは寝られなくなるといったことも起こりえるからです。
とはいえ生後2週間~3週間ぐらいまではちょこちょこと寝たり起きたりを繰り返したりすることから、授乳しながら寝付くことは多々ありますし、おっぱいで眠りについても問題ありません。
生後1ヵ月ごろを目安に、授乳は起きたまま行い、授乳が終わったら布団に移動して眠る習慣をつけましょう。具体的には、授乳後はおむつを替えて、赤ちゃんが眠る前にベッドや布団に移動してから寝かしつける、朝はしっかり目覚めてから授乳する、日中の授乳後はすぐに眠らせずしばらく目覚めさせておくなど、赤ちゃんが「授乳=睡眠」と思ってしまうことのないような工夫を心がけましょう。
生活リズムと睡眠リズムの整え方
赤ちゃんの睡眠リズムが整ってくるのは3~4ヵ月ごろからですが、成長ごとに少しずつ変わっていくので、低月齢から生活リズムを意識することは大切です。寝る時間や起きる時間は、なるべく同じ時間に決めて習慣にしましょう。朝は7~8時には赤ちゃんを起こし、カーテンを開けて朝の光を浴びさせて1日をスタートします。はじめのうちは起床・就寝時間が定まらなくても、日中は明るくし、夜は暗くしてメリハリをつけて過ごすことで、だんだんとリズムが定まっていきます。
また、寝るまでのスケジュールを習慣にすることも大切です。赤ちゃんの生活リズムや睡眠にも良い影響を与えるでしょう。寝る1時間くらい前にお風呂が終わっていると、体温が徐々に下がって眠気を誘います。そのため、「お風呂→授乳(水分補給)→静かな遊び→お布団」などのスケジュールがおすすめです。お風呂のあとはパジャマを着て寝室に行くという習慣も、睡眠リズムを作りやすくなるでしょう。静かな遊びとしては、絵本の読み聞かせがおすすめです。入眠前は1~2冊までなどと約束を決めると良いと思います。低月齢のうちは子守唄を歌ったりするのも良いですね。
眠る環境も整えて
赤ちゃんは眠くても、光や音、室内温度などの影響でうまく眠れないことがあります。寝かしつけるときは、テレビやラジオ、照明は消して暗くて静かな環境を整えます。体を動かして遊びたがる場合は、部屋は暗いままにして、睡眠モードに導きましょう。夕方ごろから部屋の明かりを暗くし始めるのもおすすめです。
新生児期から寝かせる場所を同じにしておくと赤ちゃんが安心して眠りにつきやすくなります。妊娠中に赤ちゃんの寝る場所を整えておくと良いですね。
日中の行動もリズムづくりに関係する!?
日中に適度な刺激を受けると、夜の寝つきがよくなることも。昼間、赤ちゃんが起きているときは、声をかける、音楽を聞かせる、室内でのお遊びをとり入れるなどして、好奇心を刺激してあげましょう。天気がよければ窓を開けて、外の空気を感じるのも◎。1ヵ月健診で問題がなければ、外気浴やお散歩なども始めて、少しずつ時間や行動範囲を広げましょう。
おしゃぶりの活用は?
おしゃぶりを使って寝かしつけることもあると思いますが、歯並びのことを考えると2才6ヵ月ごろまでにはやめることをおすすめしています。おしゃぶりを使う際は、母乳育児が安定してから(ママの乳頭とおしゃぶりが別物と認識できるようになってから)にしましょう。おしゃぶりが外れるたびに何度も起きてしまう、ママと赤ちゃんのコミュニケーションの機会が減ってしまうなども考えられるので、寝かしつけ時におしゃぶりに頼りすぎないことも大切です。
まとめ
夜、赤ちゃんがぐっすり眠ってくれること……どれほど幸せなことでしょう。赤ちゃんがぐっすり眠れる環境を家族で考えてみましょう。それはきっと家族もぐっすり眠れる環境なのでは……? 赤ちゃんも家族の一員、みんなでぐっすり眠って、朝になったら笑顔で「おはよう」といえる生活を送れると素敵ですね。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院に勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として、助産師教育に携わっている。ママたちの応援団として、ママ目線での情報発信、サポートを続けている。
おしゃぶりを上手に使うと、赤ちゃんも落ち着き、ママとパパも安心できることも。赤ちゃんの口腔研究に基づいて開発されたおしゃぶり