産後のママは「母乳育児でないと」とプレッシャーを感じていたり、赤ちゃんのお世話に追われて気持ちが不安定になりがち。「ママが母乳育児を安心しておこなうためには家族のサポートはとても大切です。」と助産師サロンを運営する高杉絵理さんは言います。
そこで今回は、高杉さんに、ママが安心して授乳をするために家族ができるサポートや心がまえなどについてお話をうかがいました。
産後のママは超多忙
出産したあとのママは、出産で体力が落ちていて体が回復していないだけでなく、ホルモンバランスも乱れています。ですが、赤ちゃんは待ったなし。2~3時間おきに授乳したり、授乳したらげっぷをさせたりする必要があります。
また、授乳のほかにも寝かしつけ、おむつ替え、泣いたらあやすなど産後のママは超多忙に。ママだけが母乳を直接あげられて、それはとても幸せな時間でもありますが、授乳によって、睡眠不足になったり、家事と育児の両立が心身ともに負担がかかったりもします。
家族がママの母乳育児をサポートすることはきっとママの励みになるでしょう。では家族はどんなサポートをしたらよいのかを、お伝えしていきたいと思います。
家族ができることってなに?
家族の積極的なサポートが必要といっても、とくに初めての母乳育児であればなにをしてあげたらいいか分からないというパパや家族は多いのではないでしょうか。もしくは、いろいろサポートをしてあげているけれど、ママは本当は違うことを望んでいる、ということもあるかもしれません。
助産師として大勢のママたちの相談にのってきた経験をふまえて、家族ができることをお伝えしたいと思います。
ママにプレッシャーをかけず気持ちに寄り添って
赤ちゃんが泣いていると、つい「母乳が足りてないのでは」、「ミルクを足したらどうか」などと言ってしまうことがあると思います。赤ちゃんのため、疲れたママのためを想って言ったひとことであっても、ママにはプレッシャーになってしまいます。
また、ママ自身も「母乳だけでいいのかな」「ミルクを足そうかな」「もう少し母乳だけで頑張って様子を見ようかな」などといろいろ考えているのです。ママの考えや気持ちを聞いて、ママに寄り添う姿勢がとても大切です。がんばっていることを認めてあげて、ママの意思を尊重してあげましょう。
ママが困っていることが何か、どうしてほしいかを聞いてサポートしてあげることや、「うまくいかなかったらそのとき一緒に考えよう」と応援してあげられるとよいと思います。
搾乳した母乳などで授乳を代わってあげましょう
とくに産後の授乳は頻繁なので、パパや家族がママに代わって搾乳した母乳などを授乳することもママのサポートになります。男性も授乳することで、赤ちゃんと信頼関係を育むことができたり、オキシトシンが分泌されて愛着を感じたりします。
その結果、赤ちゃんとの絆が深まっていくメリットがあるといわれています。搾乳した母乳を冷凍保存しておけば、いろいろな場面で活用できるでしょう。予期せぬママの体調不良などにも安心ですね。
授乳を家族に任せられると、ママは心にも時間にも余裕ができて、負担が軽減されます。「母乳をあげられるのは私だけ」と思わなくてよいので、夜間の授乳も交代してもらえたり、ママひとりで外出したりできるようになります。
関連情報:
母乳を冷凍保存・解凍するときのポイントや注意点のまとめ【助産師が解説】
母乳育児をもっと自由に。「肩の力をもっと抜いていいんだと思えた」――2組の夫婦の冷凍母乳体験談
家事や授乳以外の赤ちゃんのお世話を積極的に
料理、洗濯、掃除、ゴミ捨てなどの家事全般もパパや家族がしてくれるとママはその間に眠ったり休んだりすることができるので、授乳に集中しやすくなるでしょう。もちろん、赤ちゃんのお世話もおむつ替え、お風呂、スキンケア、寝かしつけなど、積極的におこなっていただけるとよいですね。
また、パパや家族が赤ちゃんのお世話を授乳を含めてひととおりできるようになれば、ママは休めるだけでなく、安心してひとりで外出するなど選択肢がもてるようになります。ちょっとひとりで買い物に行ってみただけでかなりリフレッシュになった、というママはたくさんいますよ。
パパや家族も赤ちゃんとの触れ合いをとおして信頼関係を深められるでしょう。
まとめ
母乳育児はママがひとりで悩みを抱えがちです。家族が母乳育児について一緒に考え、ママの考えや気持ちに寄り添ってあげることがとても大切です。ママの意向を聞きながら、家事や赤ちゃんのお世話も積極的におこなって、ママが授乳や搾乳を優先できるようサポートしましょう。
なお、家族の状況によってはサポートが難しい場合もあると思います。そんなときは、利用条件などはありますが、産後ケアセンターを利用する方法もあります。もしくは、自治体のファミリーサポートやシルバー人材などを利用して、家事支援を受けるのもよいですね。お買い物はネットスーパーや宅配食など便利なサービスを活用するなど、家事などもラクができる方法を見つけましょう。
おっぱいをしている時間はなによりママと赤ちゃんのスキンシップの時間です。「母乳育児」がママにとって辛い時間とならないように、いろいろなサポートを受けたりしながらそれぞれの親子に合ったペースで「幸せなおっぱいタイム」を楽しめたらいいなと思います。もちろん、大変と感じることはありますが、今しかない赤ちゃんとのかけがえのない幸せな時間を家族みんなで共有できるといいですね。もし母乳のことで専門家に相談したいとき、困ったときは、助産師に相談してください。きっと力になってくれることでしょう。
みなさんの「幸せなおっぱいタイム」を私も応援しています。
関連情報:
母乳育児をもっと自由に「ピジョンさく乳器母乳アシスト」
母乳育児を楽しむ様々なソリューション「ピジョン母乳の保存グッズラインアップ」
【プロフィール】
高杉絵理
看護師、助産師、保健師の資格を取得。国際ラクテーションコンサルタント。総合周産期母子医療センターの産科やNICU、産科クリニックで経験を積む。現在は世田谷区の保健センターで妊婦さんやママたちの相談業務に携わる。助産師にオンラインで相談できる「助産師サロン」も運営。自身も1児の母として育児に奮闘中。