母乳育児をスムーズにスタートさせるには、妊娠中からママの乳首(乳頭・乳輪)をやわらかくして、赤ちゃんが飲みやすい状態にしておくことが大切って知っていましたか? その理由について、一児のママであり、「助産師サロン」を運営する助産師の高杉絵理さんにお話を伺いました。
ママの乳首には個人差があります
乳首(乳頭・乳輪)の大きさややわらかさはママの数だけ違います。どんな乳首でも母乳育児をすることができますが、状態によっては授乳時に工夫が必要なこともありますから、自分の乳首がどのタイプなのかを知っておきましょう。
乳首の形
・突出した乳頭
突出している部分が1cm前後ある状態。
・扁平乳頭
乳頭が乳輪に対してほぼ平らな状態。
・陥没乳頭
乳首が乳輪よりも引っ込んでいる状態。乳輪部周辺を圧迫すると突出するタイプと、圧迫しても突出しないタイプがあります。
乳首の大きさ
・乳頭が大きい
明確な大きさの基準はありませんが、1cm以上あるものとしていることが多いです。
・乳頸部が細い
乳首の根元が細くなっている。経産婦さんに多いようです。
その他にも、乳輪が大きい人、小さい人、乳房が小さい人、大きい人などの違いもあります。乳頭が扁平・陥没状態である場合や乳頭が大きい場合は、母乳育児が軌道に乗るまでに少し時間がかかる場合も。自分の乳首について気がかりがあったら、妊婦健診などで遠慮せずに相談してみましょう。
乳輪や乳首が硬いと飲みにくい理由
母乳育児をスムーズにスタートするには、乳首のタイプだけでなく、やわらかさも関係してきます。ママの乳首(乳頭・乳輪)が硬いと、赤ちゃんがおっぱいを吸うときにパワーが必要になり、滑って深くくわえられないということも。また、赤ちゃんによっては生まれて間もないころはおっぱいを吸う力が弱く、上手く母乳を飲み取れないということがあるでしょう。
乳首を触ってみて、鼻の硬さくらいの場合はまだ乳首が硬い状態です。乳首が硬いままだと赤ちゃんが上手く母乳を飲み取れず、頻回授乳により乳首が切れたり、吸われることに痛みを感じたり、授乳に抵抗感を覚えたりすることもあるかもしれません。赤ちゃんも上手く飲めないことで授乳を嫌がり、母子ともに授乳の時間が苦痛となることも。
ただ、妊娠中はホルモンの影響で乳輪部や乳頭が硬くなっているという場合もあります。産後の授乳に向けたホルモンの影響で自然に乳輪部や乳頭がやわらかくなり、赤ちゃんが吸うことでますますやわらかくなりますから、乳首が硬めだとしてもあまり心配しすぎないでくださいね。
乳首がやわらかいと飲みやすい理由
赤ちゃんはおっぱいを飲むとき、乳首だけでなく、乳輪全体を含んで吸うことで母乳の分泌を促します。また、このとき赤ちゃんは舌で丸め込むようにして母乳を絞り出しています。そのため、乳首が硬いと飲みにくい理由の反対で、乳首がやわらかくて伸びて、かつ乳輪部もやわらかいと、赤ちゃんが深くくわえて吸いやすく、飲みやすいのです。また、深くくわえて吸うことで、ママと赤ちゃんの体は密着するので、正しい授乳姿勢を保ちやすくなります。これらの理由から、乳首と乳輪部がやわらかいことは、早期に母乳育児が確立することに役立つでしょう。
よく伸びるやわらかい乳首は、頻回授乳の摩擦に強く傷がつきにくい乳首になり、乳頭のトラブル予防になるというメリットもあります。妊娠中から乳首や乳輪部のマッサージをしてやわらかくしておくといいですね。乳首のやわらかさの目安ですが、唇のやわらかさくらいが理想的です。耳たぶぐらいのやわらかさでもOKです。
ただし、おっぱいを刺激するとお腹の張りを促すことがあるので、特に切迫早産気味の方、正期産(妊娠37週)以前の方は、必ず医師や助産師に確認し、指導を受けてから行いましょう。
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また、妊娠中はホルモンの影響で乳首が乾燥しやすく、かゆみを生じやすいので保湿ケアも大切です。体を洗うときは乳首を強くこするのを避け、おふろ上がりには保湿をし、下着などは刺激のないもの(綿やシルクなど)を使うといいでしょう。乳かすが溜まる場合もあるので、おふろ上がりにオイル湿布をするのもおすすめです。ベビーオイルなどをコットンに染み込ませ、乳頭に貼り付け、その上にラップを被せてしばらく置いておくときれいになり、潤って皮膚がやわらかくなりますよ。
まとめ
妊娠中はホルモンの影響で乳頭や乳輪部などが過敏になっており、マッサージが難しい方もいらっしゃると思います。保湿ケアだけでも十分に効果はあるので、赤ちゃんとの幸せなおっぱいタイムのイメージをしながら、妊娠中に楽しみながらケアができるといいですね。
【プロフィール】
高杉絵理
看護師、助産師、保健師の資格を取得。国際ラクテーションコンサルタント。総合周産期母子医療センターの産科やNICU、産科クリニックで経験を積む。現在は世田谷区の保健センターで妊婦さんやママたちの相談業務に携わる。助産師にオンラインで相談できる「助産師サロン」も運営。自身も1児の母として育児に奮闘中。
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