産後に赤ちゃんがママと同じタイミングで、一緒に退院することができなかった…という人もいると思います。そういう時、母乳育児は一体どうしたらよいのでしょうか?
今回は、そういう場合に赤ちゃんのために何ができるのか、産婦人科医の十倉陽子先生に話を伺いました。
赤ちゃんと一緒に退院ができないのは、どんな場合ですか?
例えば、赤ちゃんの体重が少なく生まれてしまった場合や、黄疸の治療が必要な場合など、考えられる要因は人によってさまざまあります。私が過去に担当したママにも、赤ちゃんに黄疸が出てしまい治療を受けるため、赤ちゃんと一緒に退院できないということがありました。
一緒に退院できない原因のほとんどがママの責任ではないのですが、大きく産んであげられなかったことや、黄疸の症状が出てしまったことに責任を感じているママが多くいるようでした。
別々に過ごしていても、赤ちゃんのためにできることはありますか?
とにかく病院に足を運ぶようにしましょう。赤ちゃんは、ママのにおいや声に安心できるでしょうし、ママ自身も赤ちゃんに触れるたびに愛情が形成されていくでしょう。
赤ちゃんと一緒に退院すると、赤ちゃんの入浴やオムツ替えなどに奮闘することが予想されますが、入院している間は看護師さんや助産師さんに何度でも教わることができるというメリットもあります。また、可能なら赤ちゃんに乳頭を吸ってもらうとよいでしょう。
直接母乳をあげられなくても、搾乳した母乳を保存しておいて病院に持参することもできるので、助産師さんや医師とのコミュニケーションをよくとっておくのも大切です。
パパもママと一緒に病院に通ったり、ときにはママの代わりにパパが母乳を届けたりすることもできます。家族と協力するなどして、少しでも母乳をあげられるとよいですね。
最後に
私自身は赤ちゃんと一緒に退院したのですが、仕事復帰のこともあり保育所に預けていたので、お昼の間に授乳して触れ合っていた時間は、つかの間の至福のときでした。
眠さと忙しさで記憶もほぼないような日々でしたが、子どもを預けて仕事をする罪悪感を自己消化しながら過ごしていたのを覚えています。
理想の「こうであるべきママ」は、あってないようなものです。みなさんも毎日の自分自身に納得して、赤ちゃんの瞳にうつるあなた自身が、赤ちゃんにとってはかけがえのない、唯一無二のママなのだということに自信をもってくださいね。
【著者プロフィール】
十倉 陽子
大学卒業後、総合診療、家庭医、地域医療を初期研修で学び、産婦人科医局に入局。
婦人科良性腫瘍手術、性感染症、女性医療、婦人科悪性腫瘍、周産期医療、新生児治療の研修を踏まえ、現在は不妊治療専門施設に勤務。体外受精を含む不妊治療を中心に、その他女性のトラブル全般に対応できる女性の全人的医療者を目指しています。二児の母。現在英ウィメンズクリニック勤務。