哺乳びんは母乳を入れて飲ませることができ、乳首トラブルやママの外出時などに役立つアイテム。パパや家族と、授乳をシェアできるというメリットもありますね。そんな哺乳びんですが、初めての妊娠・育児では、消毒の必要性ややり方などがわからない方も多いと思います。そこで今回は、杏林大学保健学部看護学科の准教授である助産師の加藤千晶先生に、哺乳びんの消毒の必要性や、いつまで消毒をしたらいいか、どんな方法がおすすめかなどを解説していただきました。
哺乳びんの消毒、どうして必要なの?
大人が使う食器類は洗浄だけでOKなのに、なぜ哺乳びんは消毒まで必要なの? と疑問に感じるママ・パパもいますよね。その理由は、生まれたばかりの赤ちゃんの免疫力や抵抗力などが大人と比べて弱いから。そのため、赤ちゃんが口にするものは衛生管理がとても大切になります。
とくに母乳や育児用ミルクは栄養豊富なので、哺乳びんや乳首に洗い残しがあると雑菌が繁殖しやすい状態に。母乳やミルクの飲み残しによる汚れは、時間が経つほど残りカスなどがこびりつきやすい特徴もあるので、哺乳びんを使ったあとはすぐに水につけておくといいでしょう。その後、早めに汚れをしっかり落として洗い流したら、消毒をします。赤ちゃんの腸内細菌叢(ビフィズス菌など)は6ヵ月くらいから整うといわれているので、腸内のよい菌を増やし育てるためにも、哺乳びんや乳首はしっかり洗浄して、消毒をしましょう。
哺乳びんの消毒って、いつごろまで必要なの?
哺乳びんの消毒を、いつまで続けるべきかの明確な基準はありません。ただ、赤ちゃんは生後3ヵ月ごろから自分で免疫を作り始め、細菌に対する抗体を高めていきます。6ヵ月ごろには大人の半分ほど、1才で70%の免疫が備わるといわれています。そのため、生後3~4ヵ月ごろまでは、哺乳びんや乳首を消毒したほうがよいでしょう。
それ以降は、赤ちゃんの発達状況や進み具合などにより、消毒をするかどうか判断します。一つの目安として、普段から指しゃぶりをしたり、物を口に入れたり出したりするようになると、手についた常在菌を口に入れ免疫力を高めているので、消毒を終了してよいでしょう。ただし、赤ちゃんが体調不良のときや梅雨時、夏場などは、月齢に関係なく消毒した哺乳びんを使うと安心です。また、消毒をやめていいか気になる場合は、助産師に相談しましょう。
哺乳びんの消毒にはどんなものを使うのがいい?
哺乳びん消毒には主に3つの方法がありますが、どれも効果にそれほど違いはありません。自分たちの生活スタイルに合った、やりやすい方法を選びましょう。
・煮沸消毒
大きめの消毒専用鍋に多めに水を入れて火をかけます。ガラス製の哺乳びんは水から入れて沸騰してから3~5分程度、プラスチック製の哺乳びんや乳首は、材質によっては火にかける時間が長いと変形する恐れがあるので、沸騰してから入れて3~5分を目安に煮沸します。このとき、哺乳びんの中に空気が入るときちんと消毒できないので、空気が入らないように注意しましょう。鍋肌にプラスチック製品などがくっつくと変形する場合もあるため、お湯はたっぷり入れ、煮沸消毒中は目を離さないことが大切です。
とり出すときは専用トングなどでとり出し、水をよく振り切りましょう。お湯を沸かす工程が面倒だと感じる人もいるかもしれませんが、経済的に消毒できる方法です。
・消毒液を使った消毒
すべてのパーツが浸るサイズの容器に消毒液を入れます。その中に哺乳びんや乳首などを一定時間浸けておくだけで、消毒することができます。消毒液の作り方や浸け置き時間は、必ず消毒液の説明書に書かれている内容に従いましょう。
また、消毒液に浸けたまま保管をすると、再汚染防止にも役立ちます。専用の容器や消毒液のコストがかかりますが、消毒後は、水気を切ってすぐに哺乳びんを使えるので便利です。消毒液のにおいが気になる場合は、軽くすすぐとよいでしょう。
・スチーム消毒
専用の容器に哺乳びんや乳首などのすべてのパーツを入れて、水を入れ、電子レンジや専用機器で加熱する(蒸す)だけで消毒できる方法です。短時間で手軽に消毒できます。専用容器などをそろえ、加熱時間やワット数などの指示はきちんと守りましょう。
哺乳びんの種類や大きさによっては、容器に収まらないこともあるので注意。加熱後は中身がかなり熱くなっているので、ある程度冷めてからとり出すといいでしょう。すぐにとり出す場合はやけどに注意してください。
上記3つのどの消毒方法も、汚れが残ったままだと十分な消毒効果が得られません。哺乳びんを消毒する前に必ず、飲み残しや赤ちゃんのよだれなどの汚れなどをきちんと落としましょう。哺乳びんの底や乳首の先までしっかり洗える、専用のスポンジブラシなどを使うと便利です。汚れがとれたら、洗剤成分を残さないようしっかりとすすぐことも大切です。
まとめ
「できれば母乳で育てたい」。妊娠中のママたちの多くはこのように思っていると思います。そのためには、育児用ミルクや哺乳びんなどの母乳育児をサポートするグッズを上手に使いましょう。そして赤ちゃんが使用するものは、安全第一で使っていきたいですね。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院に勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として、助産師教育に携わっている。ママたちの応援団として、ママ目線での情報発信、サポートを続けている。