ママによって乳頭の大きさはそれぞれ。乳頭が大きいと、母乳で育てたいけれど赤ちゃんに吸わせるのは難しい? どう工夫すればいいの? と悩む方もいると思います。乳首が大きいママが母乳育児をする上でのポイントを助産師の榎本美紀さんに教えてもらいました。
巨大乳頭って?
乳頭とは乳首の先のことを言います。乳頭が大きくても根元の乳首が乳頭より細いこともありますが、授乳には乳首の先の乳頭のサイズが影響します。
成人女性の平均的な乳頭の大きさは、直径10mm前後といわれています。巨大乳頭の定義はないのですが、乳頭が直径20mm以上あると、大きくて赤ちゃんにとって、口に含むことが難しい場合があります。そして、妊娠によるホルモンの変化で乳頭も大きくなります。
また、ママが平均的な乳頭の大きさであっても、小さい体重で産まれた赤ちゃんなどは、赤ちゃんの開口よりも乳頭が大きい場合もあり、授乳時に支援が必要になります。
巨大乳頭だと授乳でどんなところが大変?
巨大乳頭だと、母乳はよく出ていても、赤ちゃんの口の中に乳頭がうまく入らなくて吸うことができないことがあります。また、赤ちゃんが上手に吸うことができないために、母乳が思うように分泌されないことも。赤ちゃんの開口が大きくなったり、月齢が進んで吸えるようになったりした場合などでも、乳頭が大きいと乳頭だけを吸う浅吸いになりやすいため、乳頭に痛みを伴ったり傷ができたりすることもあります。
赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらえないことや、搾乳の手間などでママの母乳育児へのモチベーションが下がってしまうことも少なくありません。乳頭混乱を起こし、おっぱいより飲みやすい哺乳びんを好む赤ちゃんも多くいます。
これらのことから、巨大乳頭のママは授乳が大変な傾向があります。
妊娠中にできること、産後の対処法は?
妊娠中にできること
乳頭マッサージをして赤ちゃんが口に含みやすいように、やわらかくて伸びる乳首にしておくのがおすすめです。ただし、おっぱいを刺激するとお腹の張りを促すことがあります。特に切迫早産気味の方、正規産(妊娠37週)以前の方は、必ず医師や助産師に確認し、指導を受けてから行いましょう。
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乳頭マッサージをしても、最初のうちは搾乳が必要になる場合が多いので、搾乳器などについてもリサーチしておきましょう。搾乳は、大きい乳頭の場合は手で搾乳した方が母乳を搾れる場合が多いので、妊娠中はリサーチのみにとどめておいて、購入は産後の授乳の様子で考えた方が無難です。大きい搾乳口のサイズ展開があるかどうかも調べておきましょう。
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産後の対処法
ママの乳頭が赤ちゃんの開口よりも大きい場合は、赤ちゃんの体重が増えて開口が大きくなるのまで成長を待つことも大事です。その間、産後1ヵ月ごろまで3時間以内の間隔で搾乳をして母乳の分泌を促します。乳頭のマッサージをして、やわらかく伸びのある乳首をキープしましょう。
哺乳瓶であげたりママの乳首であげたりすると、2つの違いによって、乳頭混乱を起こす赤ちゃんがいます。搾乳した母乳をあげる場合は、赤ちゃんが乳頭混乱を起こさないように、哺乳瓶には母乳を飲むときのように、大きく口を開けて吸うことができる乳首を使いましょう。または、コップで飲ませるカップ授乳という方法もあります。
前述のとおり、赤ちゃんの開口が大きく、ママの乳首を吸えた場合も、浅く吸うことで痛みが伴ったり、傷ができたりすることもあります。乳頭保護クリームも用意しておくと安心です。
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また、浅く吸うことで母乳が出ていても、うまく飲みとれていないことも多く、赤ちゃんの飲み具合や体重の増えなどをみながら、搾乳した母乳や育児用ミルクをたす必要があることもあります。育児用ミルクをたすかどうかなどの判断はママだけでは難しいものです。気になることがあれば、早めに母乳外来や助産院などで相談しましょう。
まとめ
目安としては、一般的に生後2ヵ月を過ぎたころか、体重が4キロを超えたタイミングで赤ちゃんはおっぱいを上手に吸えるようになるといわれています。赤ちゃんの成長に伴い、体重が増えて口も大きくなれば、上手に吸えるようになることもあります。授乳ができるまで、搾乳を続けるための精神的なサポートや、授乳の仕方にもコツがいりますから、助産師の支援が受けられることが好ましいです。ひとりで悩まずに、母乳外来や助産院で相談してくださいね。
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【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、母乳育児支援の国際ライセンスである国際ラクテーションコンサルタントとして、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」