卒乳というと、子どものことや、どうやって卒乳するかということばかりを考えてしまいがちですが、ママのおっぱいケアも大切です。
そこで今回は、助産師であり杏林大学の准教授である加藤先生に、卒乳後のママのからだの変化や卒乳ケアをする必要性とその理由、そしてママが自分でできる正しい卒乳ケア方法について解説していただきました。
卒乳後のママの体は変化する
卒乳すると、ママの体はホルモンバランスが大きく変わります。そのため、授乳中は母乳をつくるホルモンの影響によって排卵が抑えられていたけれど、卒乳したとたんに産後の生理が再開するということがあります。また、授乳によるカロリーの消費がなくなるので、授乳中と同じように食事をとっていると体重が増えやすくなります。
卒乳後におっぱいのケアは必要?その理由は?
結論から言うと、母乳の分泌量が減って自然と吸わなくなったなどの理由で卒乳した場合をのぞいては、おっぱいをケアする必要があります。なぜなら、卒乳のために授乳回数を減らしていたとしても、今まで母乳を作り続けていたママの体がすぐに適応するわけではなく、母乳が突然作られなくなったり、出なくなったりするわけではないからです。
今まで毎日作られてきた母乳が飲まれなくなることで、乳房内にたまっていきます。そのままにしておくとおっぱいが張ってしまい痛みを感じることもあります。さらに、乳腺炎などのトラブルに悩まされることも。
そのため、たまったおっぱいを少しずつ搾乳(排乳)して、おっぱいをケアしながら卒乳していくとよいでしょう。おっぱいの状態は一人一人異なるので、母乳外来や母乳相談室などを受診してケアをしてもらうのが理想的ですね。
卒乳ケアの方法
ここでは、母乳外来などを受診するのが難しい方むけに、自分でできる卒乳ケアの方法をお伝えします。
まず、卒乳ケアのポイントは、痛みが和らぐ程度に搾って少し排乳することです。乳房内にほどほどに乳汁をためておくことで、産生量が減っていきます。ママの体は、搾った分だけ母乳が必要だと認識して母乳を作ってしまうので気を付けてくださいね。
具体的にみていきましょう。
・卒乳当日~3日目
母乳がたくさん作られているため、張りや痛みを感じやすい時期。1日に1回程度、乳房全体を両手のひらで包み、少しラクに感じる程度に搾って圧抜きします。圧抜きとは、乳房のなかに溜まっている乳汁を少し出して、乳房内の圧を抜くこと。乳房内の圧を抜くことで、乳汁を作る量が抑えられていきます。少しラクに感じる程度の圧抜きがポイントです。
【圧抜きの方法】
1)片方のおっぱいを両手のひらで包んで、外側から中央にむかっておにぎりを握るように軽く30秒ぐらい押してください。「おにぎり搾り」といわれる方法です。
2)親指と人差し指で乳輪部の固い部分をつまんで奥の方に押し込みます。これを繰り返すと母乳が出ます。
3)少し張りがとれて痛みが和らいだところで終了します。
なお、「おにぎり搾り」をご紹介しましたが、乳汁を少し出して圧を抜くことができれば通常の手搾りでも構いません。もし、乳汁が貯まって痛みを感じるようであれば1日1回と決めずに圧抜きをして大丈夫です。また、圧抜き後に乳房を冷やしておくと、乳汁を作る量が抑えられて、痛みを感じるほどには張らなくなってきます。
・卒乳開始から4日目以降
卒乳から3日間が過ぎると母乳の産生量が減ってくるので毎日ケアをする必要はなく、胸の張りを感じたときに圧抜きします。そして、圧抜きの間隔を1週間に1回、10日に1回、2週間に1回など、少しずつ伸ばしていきましょう。
搾る前より少しおっぱいが軽くなったと感じる程度に搾ることで、徐々に胸の張りもおさまってきて卒乳に近づいていくでしょう。
・卒乳開始から1ヵ月後
母乳がほぼ出なくなってくる時期で、おっぱいの張りもなくなります。おにぎり搾り(または手搾り)をしても母乳が出ないようなら卒乳完了です。なお、この母乳が出なくなるまでの期間には個人差があり、早いと卒乳開始から2週間、長いと2ヵ月ぐらいです。
また、自分では母乳を搾りきったと思っていても残っている場合も。そのため、張りを感じなくなった後も、卒乳ケアを開始してから1ヵ月間はときどきおにぎり搾り(または手搾り)をおこなってみると安心です。
母乳をおっぱいに残したままにしておくと、しこりなどトラブルの原因になることがあるので、不安な場合や判断に迷うときは母乳外来などを受診して専門家にみてもらいましょう。
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まとめ
卒乳は子どもだけでなくママにとっても体に変化が訪れる大きな出来事です。正しく適切に卒乳ケアをおこなって、ママ自身のからだを守ってくださいね。もし、卒乳後に強い張りや痛みを感じる場合は、乳腺炎などの可能性もあるため自己判断せず、母乳外来などを受診して専門家にみてもらいましょう。
卒乳するとわが子の成長に喜びを感じたり、おっぱいを吸う姿がみられなくなって淋しく思ったり、ママはいろいろな感情が入り混じった複雑な気持ちになるかもしれません。卒乳までに授乳時間を親子で存分に楽しんでおけるといいですね。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。