月齢が低い赤ちゃんほど胃が未発達で、1度に飲める量も少ないので昼だけでなく夜も授乳が必要になります。眠いときの授乳は大変ですよね。夜間の授乳はいつごろまで必要か、必要のなくなる時期やシーンはどう判断したらいいかなど、夜の授乳にまつわる疑問を杏林大学保健学部看護学科の准教授である助産師の加藤千晶先生に解説していただきました。
夜間授乳とは?
授乳というと、赤ちゃんが起きている日中に行うイメージがあるかもしれません。けれども生まれたばかりの赤ちゃんは眠りが浅く、2~3時間おきに目を覚ましておっぱいやミルクを飲んでまた寝ることを繰り返します。赤ちゃんの胃は小さく未発達なので、1回で飲める量は少量です。また、母乳は消化が早いと言われています。これらの理由から、母乳育児の赤ちゃんは昼夜問わずおっぱいを飲みたがります。
そのため産後はママも2~3時間ごとに起きて、夜中にも授乳する生活に。夜はぐっすり寝たい、何度も起きるのはつらいと感じるママも多いと思いますが、母乳量を増やしたいときは夜間も含めて頻回に授乳することで、母乳の分泌が促され安定しやすくなります。夜間も授乳することで、母乳が乳房に長く留まることを防げるというメリットも。
夜間授乳は月齢とともにどう変化していくの?必要な時期って?
・新生児期
新生児期の授乳は頻回で1日10回以上になることもあり、夜間も授乳が必要になります。この頃の赤ちゃんは胃の容量が小さく、1回で飲める量はごくわずかであること、赤ちゃんの眠りが浅く2~3時間おきに目が覚めること、母乳の消化が早いことなどが理由です。
また、赤ちゃんに吸われる刺激によって、母乳の分泌が促されて、次第に授乳リズムができてくるので、生後1~2ヵ月ごろまでは「赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ飲ませる」自律授乳が推奨されています。とくに月齢が浅く1回の授乳で飲む量が少ない時期は、授乳間隔が長時間(4時間以上が目安)空かないようにすることも必要であると言われています。
関連記事
母乳育児のスタートは自律授乳がキーになる?!乗り越え方などを助産師がアドバイス
おっぱいの状態は個人差がありますが、授乳の間隔が空くと母乳がおっぱいに長く溜まってしまい、乳房の張りによる痛みが生じたり、乳腺炎になったりする可能性が高くなります。とくに低月齢で1回の授乳で飲める量が少ない時期は、昼夜問わずの授乳が必要になります。細切れの睡眠でつらい時期でもあるので、家族と協力しながら、短時間でもからだを休めるように工夫していきましょう。
・生後2ヵ月ごろ
生後2ヵ月ごろになったら、1度にたくさん飲めるようになってきます。まだ自律授乳が基本ではありますが、少しずつママが授乳リズムを作っていってもいいでしょう。特に、夜間に関しては、日中と同様の間隔で授乳しなくてもよいかもしれません。
たとえば前回の授乳から2時間くらいしか経っていないけれど、ママがそろそろ就寝したいのであれば、赤ちゃんを起こして授乳します。それから一緒に寝ると、3~4時間、ママも赤ちゃんもしっかり眠れるでしょう。ママと赤ちゃんが少しでもラクになることも大切です。
授乳間隔が空くことでママのおっぱいがカチコチに硬くなって痛い、おっぱいが張って眠れないようなときは、張っているところを冷やすと母乳分泌を抑えられます。
・生後3~4ヵ月ごろ
個人差はありますが、体内時計が動き始める生後3~4ヵ月ごろ(首がすわるころ)になると、夜間の授乳は必要なくなりますが、実際にはまだまだ欲しがる赤ちゃんが多いです。夜間の授乳は、赤ちゃんが欲しがったらあげてよいですが、前回の授乳から3時間経ったからと、寝ている赤ちゃんを起こしてまで授乳する必要はないでしょう。
・生後6ヵ月~
離乳食が始まってすぐのころ(6ヵ月ごろ)はまだまだ母乳での栄養摂取のほうが多い時期です。夜間も、赤ちゃんが欲しがるときは授乳して構いません。でも、離乳食が始まってからは食事のリズムをつけていくことも必要なので、夜間は授乳がなくても寝られるようにしていくことも大切です。
離乳食を3回しっかり食べるようになる1才ごろは、栄養の大半を食事から摂っています。そのため、夜間におっぱいを欲しがる場合は、赤ちゃんにとって水分補給や甘えたい気持ちなどが理由だと考えられます。眠ってから水分を与えるより、水分補給をしてから眠るという習慣にしてもよいでしょう。
夜間授乳を少しでも減らすには?
なるべく早くから、おっぱいで眠る習慣をつけないようにすることで、夜間授乳を減らすことができるでしょう。具体的には、生後1ヵ月ごろからは、授乳は赤ちゃんが起きた状態で行い、おっぱいを飲み終わったあとに寝室に移動して寝かしつけるとよいですね。また、3ヵ月を過ぎて、寝る前にしっかりおっぱいが飲めているようなら、夜間に泣いたときに、トントンをして再度寝かしつけるなどの工夫もよいでしょう。また、低月齢からなるべく朝起きる時間・夜寝る時間は同じにする、日中は室内を明るくし、眠るときは暗く静かな環境を整えるなど、規則的な生活やメリハリのある生活を心がけることも大切です。
まとめ
夜間授乳は必要な時期もありますが、お伝えしたとおり栄養面などではだんだんと不要になっていきます。また、できるだけおっぱいで眠る習慣をつけないようにすることで、夜間授乳を減らすことができます。授乳にはさまざまなケースがありますので、もし自分の授乳の事で悩んだら、ひとりで悩まず、母乳外来や母乳相談室などで助産師に相談してくださいね。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院に勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として、助産師教育に携わっている。ママたちの応援団として、ママ目線での情報発信、サポートを続けている。
おしゃぶりを上手に使うと、赤ちゃんも落ち着き、ママとパパも安心できることも。赤ちゃんの口腔研究に基づいて開発されたおしゃぶり