母乳育児でミルクを足すべきかの判断ポイントと足す量・間隔など足し方のコツ【助産師監修】

母乳育児で育てたいと思っているものの、母乳が足りているか不安を感じるというママは多いのではないでしょうか。

そこで今回は杏林大学保健学部看護学科の准教授である助産師の加藤千晶先生に、ミルクを足すべきかどうかの判断ポイント、また足すとなった際の足し方などについてお話を伺いました。赤ちゃんの成長・発達をみて判断することが大切なのだそうです。

母乳育児でミルクが必要になるのはどんなとき?

出産後しばらくは、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけおっぱいを飲ませる「自律授乳」によって、母乳分泌は促進され、また赤ちゃんに合った授乳リズムもだんだんと確立していくといわれています。

しかし、母乳の出る量には個人差があるので、とくに出産直後は分泌量が少なかったり、また赤ちゃんが上手におっぱいを飲めなかったりして、母乳だけでは赤ちゃんに栄養を満足に与えられないこともあります。このような場合、母乳育児が軌道にのるまでの間、ミルクも飲ませて栄養を補う必要があるのです。

また、生活スタイルや体力面などにより意図的に、母乳とミルクの両方を与える「混合育児」を選ぶ人もいるでしょう。目的はそれぞれ違いますが、保育園に預けている間にミルクを飲ませるため、パートナーに授乳も代わってもらってママが休んだり自由な時間をとれたりするようにしておくため、などがあるようです。

母乳を飲ませながらミルクを追加する背景はこのようにさまざまですが、今回は、母乳育児を希望しているものの、母乳分泌が十分でないためにミルクを足すケースに焦点をあて、判断ポイント、ミルクの足し方などについてお伝えしていきたいと思います。

ミルクを足す量はどう判断する?

ミルクの入った哺乳びん

基本的には入院中に病院から指導がありますので、退院後についてもどのようにしたらよいかしっかり確認しておくことが大切です。退院後、おっぱいや赤ちゃんの飲み具合など状況は変化しますが、1ヵ月健診までは出産した病院でフォローしてくれますので、気になったらその都度電話で相談して指導をあおぐと安心ですね。

ミルクを足すかどうかの判断ですが、赤ちゃんの体重を測ってみて、退院時から1日18g~30gの増加がみられるか、おしっこが1日6~8回以上出ているかがポイントです。飲んだ量がそのまま体重増加量ということではありませんが、体重増加は赤ちゃんの成長の目安になるため、母乳だけで足りているかどうかの判断基準になります。そして、母子手帳の成長曲線のカーブに沿って赤ちゃんなりの体重増加がみられれば母乳量は不足していないと考えられます。その場合はミルクを足す必要はありません。

体重増加やおしっこの量が不足していて母乳不足が懸念されるときは、ミルクを追加しましょう。新生児の胃の容量は退院のときは60~80ml程度、生後1ヵ月までに100~120mlになるといわれています。新生児であればミルクを1回40~60ml程度、生後1ヵ月であれば80ml程度追加してみてください。

そして1ヵ月健診などで体重増加具合などをみてもらい、今後、どのようにミルクを足したらよいか、または足さなくてもよいか、確認しましょう。新生児訪問、助産師訪問などで自宅に助産師などに来てもらい、相談する方法もあります。

ミルクの足し方は?

ママと赤ちゃん

ミルクの足し方は人それぞれで決まったやり方はありません。ママの生活スタイルや赤ちゃんの欲しがり方に合うやり方を助産師に相談しながら決めましょう。

例)
・日中は母乳を、夜間はミルクを飲ませる。(夜間は家族やパートナーの協力をもらうことができる)
・1回の授乳を「母乳+ミルク」にする。(状況に応じ、毎回ミルクを足したり、足りない様子のときだけミルクを足したりする)
・母乳での授乳の際に、1回おきにミルクを足す
など

なお、ミルクを追加する場合に、ひとつ気を付けてほしいことがあります。母乳分泌を増やすためには1日8回以上の授乳が理想的です。(母乳だけで育つ赤ちゃんの場合、1日8~12回ほど授乳します。)そこで、ミルクを追加する場合も、なるべく母乳をあげる機会が1日に8回以上になるよう工夫してください。ミルクの追加量が多いと授乳間隔が空いてしまうので、母乳を吸ってもらう回数が減ってしまい、母乳分泌を促すにはマイナスの効果になってしまうことがあります。

母乳育児が軌道にのるには少し時間がかかるものです。赤ちゃんの空腹のタイミングに合わせて母乳を吸ってもらい、その刺激で母乳が作られていきます。母乳の出が少ないように感じても、あまり焦らず、おおらかな気持ちで赤ちゃんと2人の時間である授乳を楽しむことができるとよいですね。

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まとめ

母乳が出る量はママによって異なりますし、欲しがる量も赤ちゃんによって異なります。赤ちゃんの成長、発達をみながら授乳リズムを作っていくことが大切です。授乳の専門家である助産師に相談しながら量やあげ方を決めていくのが安心ですね。母乳が足りているか気になったとき、授乳で気になることがあるときは、母乳外来や助産院に相談しましょう。

【プロフィール】

加藤千晶先生

加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。

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