母乳育児をしているとママは自分の食事のことが気になりますよね。そこで今回は相模女子大学栄養科学部の堤ちはる教授に、授乳中のママにおすすめの食材や栄養バランスをかんたんにとれるメニューについて教えて頂きました。
栄養バランスよく食べるのにおすすめの食材
母乳育児中のママも、妊娠中や普段と同じく、主食、主菜、副菜がそろった栄養バランスのよい食事をとることが大切です。しかし、バランスのよい食事といっても、食材選びに悩んでしまう方もいると思います。そこで、普段から習慣的に食べるといいおすすめ食材をご紹介します。
【主食におすすめ】+【主菜におすすめ】+【副菜におすすめ】の中から選んで組み合わせるとバランスのよい食事になります。
【主食におすすめ】
穀類
穀類は栄養のほとんどが炭水化物。炭水化物は糖質と食物繊維を足したものを言います。
体内でブドウ糖に変わってエネルギー源となる大切な食材です。精白米、胚芽米、玄米、大麦などのほかに、小麦を粉にして作られたうどん、そば、パン、スパゲティやマカロニなどのパスタ類もあります。
最近は炭水化物を抜くダイエットなどが話題になることがありますが、厚生労働省は総摂取エネルギーの50-65%(たとえば1日2400kcalとる人なら1200~1560kcal)を炭水化物でとることを推奨しています。
【主菜におすすめ】
魚類
血液や筋肉などを作るたんぱく質などが含まれている食材です。また、脳の神経細胞が発達するのに欠かせないDHAも、サンマ、サバ、ブリ、アジ、カツオなどの魚に含まれています。DHAは年齢問わず健康を維持するために必要ですが、胎児期、乳児期の脳は著しく成長するので、妊娠中や授乳中のママはしっかりとるよう心がけるといいですね。
母乳育児で忙しいママにとって魚料理は面倒というイメージがあるかもしれません。そこでおすすめなのがサバ缶です。サバ缶にはたんぱく質とDHAが豊富に含まれていて、汁ごと使えばDHAもより豊富に摂取することできるので、スープ料理や煮物に活用してみてはいかがでしょうか。
肉類
部位にもより含有量は異なりますが、たんぱく質をはじめ、ビタミンB1や鉄などを含む食材です。鶏肉のささみやむね肉(皮なし)はたんぱく質含有量が多く脂質が少ないという特徴があります。豚肉はビタミンB1が豊富なので疲労回復に効果的、赤身の牛肉はヘム鉄を多く含んでいるので貧血予防にも積極的にとりたい食品です。
肉は部位により脂質量が異なりますので、エネルギー(カロリー)が気になる場合には、鶏肉ならささみ、むね肉(皮なし)を、豚肉や牛肉ならヒレ、もも、ロースなどの脂質が少ない部位を選んで利用するといいですね。
大豆
大豆は、「畑の肉」と言われるようにたんぱく質が豊富です。また大豆油の原料になるように脂質も含まれています。大豆を使った製品には、納豆、豆腐、豆乳、味噌、きな粉などいろいろな食品があります。時間がないときは納豆や冷ややっこを食事に追加するのもおすすめです。
卵
たんぱく質を多く含み、さらにビタミン、ミネラルを含む栄養豊富な食材です。ゆで卵、目玉焼き、卵焼き、スクランブルエッグなどのほか、卵とじスープや親子丼などさまざまな料理にも使えて便利。
授乳中はおなかが空きやすい方が多いですが、ゆで卵なら小腹が空いたときなどに罪悪感なく食べられます。固ゆで卵は冷蔵庫で数日間保存することができるので、1度にまとめて5~6個作っておくと、そのまま食べるだけでなく、サラダやサンドイッチなどにも使えて便利です。
【副菜におすすめ】
海藻類
わかめ、めかぶ、ひじき、こんぶ、海苔、もずくなどの海藻類には鉄分、カルシウム、ヨウ素、食物繊維などが含まれています。味噌汁に入れたり、酢の物にしたり、ごはんに海苔を添えたりしてもいいですね。
ただし、ヨウ素は摂り過ぎると甲状腺の機能に影響があることが分かっていますので、食べ過ぎには注意が必要です。詳しくはこちらを参照してください。
⇒母乳育児中のママがとるべき食事とは?母乳に大切な栄養素は?【管理栄養士が監修】
野菜類
野菜にはたくさんの種類がありますが、たとえば人参などの緑黄色野菜にはβーカロテンが、キャベツなどの淡色野菜にはビタミンやミネラル、さつまいもやごぼうには食物繊維など、それぞれに大切な栄養素が含まれています。
また、トマトは旨み成分のグルタミン酸が豊富なので、だしにも使えておすすめ。生でも食べられる手軽さもいいですね。人参やごぼうはスライサーでスライスしながら鍋やフライパンに入れていくと、まな板包丁いらずで時短に。
これまでご紹介してきた食材を過不足なく摂れるといいですね。また、これら以外の食材にも果物、乳製品、きのこ類も栄養素が豊富なので日常的に利用することがすすめられます。
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簡単に調理できて栄養バランスのいいメニューはコレ!
授乳や赤ちゃんのお世話をしながら栄養バランスのよい食事を用意するのはなかなか大変です。そこで調理が簡単で、栄養バランスのいいメニューをご紹介します。それは、「具だくさんの汁もの」。箸が立つぐらい具でいっぱいになった汁物なら、体に必要な栄養素をたっぷりとることができます。よかったら試してみてくださいね。
「具だくさんの汁もの」はいいことだらけ!
・1品でいろいろな栄養素をとることができる
・母乳育児中の水分補給にもなる
・野菜に多く含まれる水溶性のカリウムを無駄なく摂取できる(カリウムは高血圧の原因となるナトリウムの対外への排出を促す働きがあります)
・加熱するので野菜のカサが減り、たくさんの量が食べられる
・汁物があると食事の体裁が整いやすく満足感、満腹感を得やすい
・味にバリエーションがつけやすい
具材例
キャベツ、白菜、ほうれん草、長ねぎ、人参、大根、玉ねぎ、ごぼう、オクラ、いんげん、じゃが芋、さつま芋、里芋、トマト、ピーマン、椎茸、しめじ、エリンギ、舞茸、しょうがなど。 またほかにも豚肉、サバ缶、ツナ缶、冷凍シーフードミックスなどを追加すればたんぱく質もプラスされ、副菜と主菜を兼ねられます。
味付け例
みそ味、豆乳味、しょうゆ味、塩味、コンソメ味、カレー味、トマト味などのほか、しょうゆ味や塩味にごま油を足して中華風、トマト味にチーズを乗せてイタリアンなどいろいろな味を楽しめます。
まとめ
育児まっただ中のママは、栄養バランスのよい食事を用意するのは難しいと思ってしまうかもしれません。しかし、必ずしも「栄養バランスのよい食事=手をかけた料理」ということではありません。
今回ご紹介したように、具だくさんの汁もののほか、サバ缶、ツナ缶、納豆、トマトなどの手軽にとれる食材を活用する方法や、惣菜を購入する、宅配を利用するなどの方法もあります。また、数日単位でバランスよく摂れていればOKです。
授乳期間は、ママと赤ちゃんにとって絆を育むかけがえのない時間。ママが気持ちにゆとりをもち、母乳育児を楽しんでおこなえるよう心から願っています。
【プロフィール】
堤ちはる
相模女子大学 栄養科学部健康栄養学科 教授
日本女子大学家政学部食物学科卒業、同大学大学院家政学研究科修士課程修了。東京大学大学院医学系研究科保健学専門課程修士・博士課程修了。保健学博士、管理栄養士。青葉学園短期大学専任講師、助教授、日本子ども家庭総合研究所母子保健研究部栄養担当部長を経て、現職。専門は母子栄養学、保健栄養学。監修書籍に、「あんしん、やさしい最新離乳食オールガイド」(新星出版社、2019)、「食と栄養相談Q&A」(診断と治療社、2018)、「すききらいなんてだいきらい」(少年写真新聞社、2016)など。
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