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母乳バンクについて<後編>|ちいさな命を救うために、私たちができること

早産などで小さく生まれた赤ちゃんが、お母さんの体調が悪かったり、十分な量の母乳が出なかったりして母乳を得られない場合に、寄付された母乳を安全に処理した「ドナーミルク」を提供する施設「母乳バンク」。

現在、国内唯一の母乳バンク「日本橋 母乳バンク」がピジョン本社1階に開設されて一年が経過しました。

そこで、2回に渡り、「ドナーミルクでひとりでも多くの赤ちゃんの命を救いたい!」という思いのもと、母乳バンクを広げる活動を続ける「日本母乳バンク協会」の代表理事で、昭和大学医学部教授の水野克己医師を取材。

後編では、実際にドナーミルクを使用されたご家族の声、ドナーになれる方の条件や、ドナーになれない場合も、母乳バンク支援のためにできることについてお伝えします。

生まれて間もない小さな娘を救ってくれたドナーミルク

イベントでのスクリーンショット

ドナーミルクを利用した赤ちゃん(めいちゃん)と、めいちゃんのお父さん

先日開催された「日本橋 母乳バンク」開設1周年記念イベントには、ドナーミルクを利用した赤ちゃんとご家族として、めいちゃん(1才)とめいちゃんのお父さん、そしてめいちゃんの担当医だった北野病院小児科の水本洋医師もオンラインで参加し、当時のことをお話しくださいました。

めいちゃんのお母さんは、妊娠19週で末期がんと診断されました。23週より全身状態が悪化し24週0日で帝王切開となり、めいちゃんは528gで生まれました。

めいちゃんは手術室でお父さん、お母さんとの時間を過ごした後に、 NICUに入院しました。

めいちゃんは生まれてすぐにお母さんの母乳を数滴、口に含むことはできたものの、お母さんは出産後5日目に容態が急変したため、ドナーミルクの提供を受けることになりました。

めいちゃんのお父さんは、これまで母乳バンクの存在はまったく知らず、妻である、めいちゃんのお母さんの意思も確認できない状態だったこともあり、最初はドナーミルクを使うことに戸惑いがあったそうです。しかし、ドナーミルクの説明書をじっくり読む中で小さく生まれた赤ちゃんにとって母乳がどれだけ有効かを理解したそうです。

「妻も娘のことを第一に考えるだろうと思い、ドナーミルクを取り寄せていただくようお願いしました。

娘はNICUに半年間入院していたのですが、担当してくださった看護師さんが、退院するときにお手紙をくださったんですね。お手紙に『めいちゃんはすごいんです。わずか528gで生まれてきて、退院するときに自分の口からしっかりとミルクが飲めて、自宅では酸素チューブも必要ないなんて、本当にすごいことなんです』と書いてくださったんです。

大きな合併症なく退院できたのは、生まれて間もない小さな娘にドナーミルクを与えてくださったおかげだと思いますし、先生と看護師さんが丁寧にみてくださったおかげだと本当に感謝しております。そして、善意でドナーミルクを提供してくださったお母さんには、直接お会いして御礼の気持ちをお伝えしたい気持ちです。

娘を恐ろしい病気から守られたのも、こんなに元気にすくすく成長してくれているのも、提供してくださったドナーミルクのおかげです。本当にありがとうございました」(めいちゃんのお父さん、以下同)

知らないことが戸惑いや抵抗感につながる

イベントの様子

めいちゃんのお父さんは、最初はドナーミルクの使用に戸惑いがあったことについて、次のようにお話しくださいました。

「当時、ドナーミルクを使うことに対して抵抗感があったのか考えたときに、自分の知らないこと、自分にとって未知のものに出会ったときというのは、人間は構えてしまうと感じたんですね。

僕は『ドナーミルクってなに?』というところからスタートし、ドナーミルクの有効性も知りませんでした。知らないことだらけだったことが、戸惑いや抵抗感につながっていたのだと思います。

もし、生まれてきたわが子にドナーミルクが必要となったら、ドナーミルクはどういうものなのか、小さく生まれた赤ちゃんにとって母乳がどれだけ有効なものなのかというのを正しく理解していただいて、お子さんにとってベストな選択をご夫婦やご家族で相談して決めていっていただけたらと思います」

イベント中は、画面に映るめいちゃんにやさしい眼差しを送っていた水野先生は、

「元気なめいちゃんにお目にかかれて、言葉にならないくらいうれしいですね。ドナーになってくださる方の中には、NICUで赤ちゃんを亡くされて、自分の赤ちゃんにあげられなかった母乳をまわりの小さな赤ちゃんに使ってほしいと提供くださる方もいらっしゃるんですね。

みなさんの協力と思いがあって成り立つ活動だと感じています。めいちゃんがこんなに元気に育ってくださって、『ありがとう』としか言えないですね」

と感想を述べました。

ドナーミルクが赤ちゃんのもとに届くまで

ドナーミルクの受け取り

ーめいちゃんのようにドナーミルクが必要になった赤ちゃんに、ドナーミルクはどのように提供されるのでしょうか。

「ドナーミルクの提供は、入院している医療機関の主治医の判断によって行われます。

ドナーミルクが必要となった場合、NICUから日本母乳バンク協会に連絡が入ります。
『すぐにでも欲しい』ということであれば、大体翌日には届くようにお送りしています。

母乳バンクを何度も使ったことのある先生だと、早め早めに連絡をくださいますね。それこそ、生後6時間から使っている施設では、日頃からドナーミルクをストックし、足りなくなる前に定期的に連絡をくださいます」(以下、水野先生)

誰でもドナーになれるの?

ードナー登録をするための条件を教えてください。

「まず、ご自身のお子さんに与える母乳が最優先されますので、お子さんが必要とする以上に母乳が出ることが必要です。

また、献血の条件と同じように、これまでに輸血や臓器移植を受けていないこと、タバコを吸ったりアルコール摂取をしたりしていないこと、血液検査の結果に異常がないことなど、いくつもの厳格な条件をすべてクリアした方であり、ドナー登録が可能かどうかの問診を行って問題がなければ、ドナー登録ができます。日本母乳バンク協会のホームページで、ドナー登録の方法をご紹介しています」

ードナーミルクを提供されるお母さんは、どのような方が多いのでしょうか。

「ご自身の赤ちゃんがNICUに入院していてあまり飲めず余剰の母乳があるお母さんもいらっしゃいますし、健康な赤ちゃんを育てているお母さんもいらっしゃいます。

『日本橋 母乳バンク』開設1周年記念イベントでもお話しさせていただいたように、ご自身の赤ちゃんを亡くされたお母さんが母乳を送ってくださることもあります。母乳バンクは、そうしたドナーのみなさんやご家族の思い、善意のドナーミルクによって支えられています」

ドナーになれない場合でも、私たちにできること

ードナーになれない場合も、母乳バンクの支援のためにできることはあるのでしょうか。

「日本母乳バンク協会では、個人・法人からの寄付を募集しています。詳しくは、母乳バンク協会のホームページをご覧ください。また、クラウドファンディングにも参加しています。ここでは支援方法をいくつか選べます。

また、 SNSでシェアしていただくことも支援につながります。ぜひご覧いただければと思います」

「#ちいさな命を救おう」キャンペーンとは(※現在キャンペーンは終了しています)

また、商品を購入することで、母乳バンクを支援する取り組みも行われています。

ピジョンでは、2021年11月30日(火)までのキャンペーン対象期間中、ご購入いただいた母乳パッドなど対象品1点につき10円を日本母乳バンク協会に寄付するキャンペーンを開催。集まった寄付金は、赤ちゃんに安全なドナーミルクを提供するため、母乳の低温殺菌や細菌検査、ドナーミルクの発送などの費用に充てられます。

対象品

キャンペーン対象商品

ドナーミルクを周知して救える命を救えない状況に歯止めをかけたい

インタビュー中の水野先生

ードナーミルクを利用する NICUが増える中、今後の抱負をお聞かせください。

「以前、生まれて2週間後にお母さんが亡くなられたお子さんが、1才近くなっておじいちゃんおばあちゃんとお父さんに連れられて、私のところへいらっしゃいました。

そのお子さんは小腸に穴があく小腸穿孔を起こし、視力障害、聴力障害、脳性麻痺、発達障害など、さまざまな症状を持っていらっしゃいました。
『この先どうやって生きていけばいいのだろう』
とおばあちゃんがおっしゃっていたことを、昨日のことのように覚えています。

この子にもしドナーミルクを使えていたら、もっと広く母乳バンクの活動を知っていただけていたら、この活動をもっと広げていれば、この子はこういう状態ではなかったかもしれない。ニコニコ笑ったり、お話したりしていたかもしれないと思うと、後悔しかありませんでした。

母乳バンクの存在は知られてきていますが、まだまだだと思っています。早く小さく生まれた赤ちゃんのお母さんが母乳を与えられないとき、赤ちゃんの命を救い、元気に育っていくためにドナーミルクという選択肢があることを広く伝えるとともに、母乳バンクを使っていただける施設も増やしていきたいと思います。

そして、『母乳を提供したいけれど、近くに施設がない』『育児や仕事で遠くまで行くことができない』という課題に向けて、ドナー登録施設を増やしていきたいと考えています」

ー最後に、これからママやパパになる方、今まさに育児をされている方にメッセージをお願いします。

「母乳バンクでは、ドナー登録も含め、安心で安全なドナーミルクを提供しています。必要なときはもちろん、お母さんの母乳が出るまでの一時的なつなぎとしても、ドナーミルクを使えるということを知っていていただきたいと思います。

最終的には赤ちゃんが元気に育っていくことが一番なわけですから、『ほかのお母さんの母乳だから』という理由で粉ミルクを選択するよりは、ドナーミルクを使っていただきたいです。

また、子育てをしていく中では、いろいろと心配になることや、なんでうまくいかないのだろうと思い悩むこともあるかもしれません。でも、どの赤ちゃんもお母さんとお父さんを選んで生まれてくると思っています。ですから、どんなことがあっても、しっかりとすべてを受け入れて愛してほしいですね」

* * *

ピジョンが今年実施した母乳バンクに関する意識調査では、母乳バンクへの認知度は多少上がったものの、ドナーミルクの利用に対する抵抗感は、以前として高い傾向にありました。めいちゃんのお父さんが語られていたように、知らないことが戸惑いや抵抗につながるといえます。

母乳バンクやドナーミルクのことを正しく理解し、ぜひご夫婦やご家族、お友達で話し合ってみてください。それが、最も身近な「ちいさな命を救うために、私たちができること」になるはずです。

【関連情報】
日本母乳バンク協会ホームページ
クラウドファンディングについて

「#ちいさな命を救おう」キャンペーンについて(※現在キャンペーンは終了しています)
「#ちいさな命を救おう」キャンペーンバナー

母乳バンクについて<前編> 命をつなぐドナーミルクで早く小さく生まれた赤ちゃんを救いたい!

【プロフィール】

水野先生プロフィール画像

水野克己
一般社団法人 日本母乳バンク協会 代表理事。
1987年昭和大学医学部卒業。昭和大学江東豊洲病院教授、こどもセンター長を経て、2014年日本初の母乳バンクを設立。2017年に一般社団法人 日本母乳バンク協会を設立。小児科医としての仕事のかたわら、講演活動や自費出版などを通じ、母乳バンク普及を呼びかけ続ける。

撮影/矢部ひとみ(※水野先生取材分) 取材・文/羽田朋美(Neem Tree)

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