職場復帰したあとも、卒乳せずに母乳育児を続けたいというママもいると思います。けれども、「そもそも、職場復帰後も母乳育児って続けられるの?」「仕事中、おっぱいが張ったらどうしよう……」「離れている時間が増えたら、トラブルはない?」など、疑問や不安もありますよね。そこで、母乳相談室を開業している助産師の榎本さんに、仕事復帰後も母乳育児を続けるためのポイントを教えていただきました。
赤ちゃんと離れる時間が増えても、母乳育児は続けられる?
労働時間や職場の環境などにより大変さには個人差が出ると思いますが、職場復帰後も基本的には母乳育児は続けられます。その場合は、保育園に行く前と帰ってきたあとに授乳をし、保育園に行っている間はミルクか、搾乳した母乳を与えてもらうのが一般的な方法です。ただ、搾母乳を預かって与えてくれるかどうかは保育園によって対応が異なるので、事前に保育園の対応を確認しておきましょう。
また、哺乳瓶を嫌がったりミルクを飲まなかったりする子の場合は、保育園に預ける1~2ヵ月ほど前から、哺乳瓶やミルクに慣れる準備をしておきましょう。ミルクで対応する場合は、子どものミルクアレルギーの有無も確認しておくと安心です。
仕事復帰のタイミングで卒乳しないといけないと考えていた人も、少しでも母乳育児を続けたいという気持ちがあれば、まずは保育園での対応を確認してみるといいでしょう。
赤ちゃんと離れている間のおっぱいケアについて
母乳育児を続ける場合は、職場で搾乳する必要があります。労働時間にもよりますが、おっぱいの張り、痛み、乳腺炎を防ぐために、できれば1~2回は搾乳できるといいですね。
更衣室やトイレで搾乳される方が多いですが、搾母乳を保存する場合などは、休憩室や会議室など、プライバシーや清潔を保てる部屋での搾乳がおすすめです。総務部などに場所を相談して、確保をお願いしましょう。職場に先輩ママがいれば、前例などを確認するのもいいですね。
搾乳は手で搾る方法と、手動式・電動式の搾乳器を使う方法があります。どちらでも構いませんが、搾乳時の母乳の周りの飛び散りや時短などを優先したい場合は搾乳器を使ったほうがスムーズかもしれません。コンパクトな搾乳器なら、持ち運びもしやすいと思います。
搾乳器を使用したら、直後に職場で洗うことも忘れずに。時間の都合などで洗浄が不十分であれば、帰宅後に家でしっかり洗いましょう。消毒は、搾母乳を保存する場合など、必要に応じて行います。手で搾る場合は、洋服や周りに分泌が飛び散らないよう注意しましょう。
職場での搾乳ですが、おっぱいの張りが少なくなる、搾乳量が減ってくるなどであれば終わりにしてもよいかもしれません。夕方、少しおっぱいが張ってきたとしても、保育園にお迎え後、すぐに授乳できるようであれば問題ないでしょう。休みの日に授乳回数が増える場合は、週明けに張りが強く感じることもあるようです。
おっぱいの状態は一人一人異なりますし、母乳の分泌量や労働時間などにより個人差もあるので、迷ったときは母乳外来などの助産師に相談してくださいね。
搾乳した母乳はどうする?持ち帰ることはできる?
職場で搾乳した母乳を持ち帰って飲ませたい場合は、衛生面に気をつけて搾乳し、消毒されたふた付きの容器や母乳パックに入れて保存してください。帰宅するまでは冷蔵保存もできますが、基本的には冷凍保存がおすすめです。冷凍庫でできるだけしっかり凍らせて保冷バックで持ち帰ります。冷凍庫で保存する必要があるので、職場の冷凍庫を使用していいか確認をしておきましょう。
帰る際は保冷剤や保冷バッグを使用し、衛生面に注意して持ち帰ります。職場で冷蔵保存した母乳は早めに使用し、冷凍保存したものは冷蔵庫で解凍、流水にあてる、40℃前後のぬるま湯で湯せんするなどの方法で、なるべく早めに解凍して使用します。
冷凍した母乳を常温で解凍するのは、衛生上よくないのでやめましょう。母乳を沸騰させる、電子レンジで温めたりするのは、母乳の成分が破壊されるのでNGです。冷蔵・冷凍保存いずれの場合も、保存期間を過ぎたものを与えてしまわないよう、搾母乳を入れた容器には搾乳した日時を書いておきます。
搾乳した母乳を破棄する場合は、母乳は適切な場所に破棄し、搾乳器のみ洗浄して持ち帰りましょう。手で搾る場合は、手絞り用のカップに搾るか、または使い捨ての紙コップなどに搾ると、捨てやすく便利です。
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まとめ
近年は在宅ワークの増加、搾乳器の品質向上、社会の母乳育児への理解も増えてきたなどの背景から、仕事復帰後も母乳育児を継続するママが増えてきた印象です。最初はハードルが高いイメージがあるかもしれませんが、復帰前から先輩ママや母乳外来などで、不安や疑問点を相談されると良いかと思います。
【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」