仕事復帰後の母乳育児は続ける?入園前に卒乳する?各メリットと懸念点、必要な準備とは 2021.03.08 育児休暇が1年間で、保育園の入園は多くの場合4月からのため、子どもが生後5ヵ月ぐらいから1才になる頃に仕事復帰となるママが多いと思います。 仕事復帰にあたって、母乳育児を継続するのか、保育園に入園する前に卒乳するのか、迷われる方もたくさんいます。 そこで今回は、母乳育児の専門家である「みき母乳相談室」を運営する助産師の榎本さんに、母乳育児を続けるかどうか考えるときのポイント、続ける場合と卒乳する場合のそれぞれのメリット、懸念点、そして必要な準備を教えていただきました。 仕事復帰後も母乳育児を続けるかやめるかを考えるときのポイント ・月齢、発達など 1才未満の場合は、離乳食が始まっていても、栄養をそれだけでは補えません。母乳やミルクからとる栄養素は大切です。母乳育児をやめるのであれば育児用ミルクに切り替えましょう。また、母乳には免疫物質が含まれているため、できれば続けてあげるとよいですね。 ・母乳の分泌量 分泌量が日中多ければ搾乳しないと胸が張ってしまうので、仕事中に搾乳の時間や場所をとる必要があります。 ・夜間授乳の頻度や回数 寝不足になると翌日の仕事に影響が出てしまうことが考えられるので、夜間授乳の頻度や回数なども考慮しましょう。 関連情報:夜間断乳をするときは慎重に!メリットや成功のコツと注意点を助産師が解説 ・保育園の対応 保育園での授乳は、搾母乳・育児用ミルクから選べるのかどうか、希望がある場合は確認が必要です。いずれにしても哺乳瓶やコップで飲むことができるようにしておくとよいですね。ミルクにするなら子どものミルクアレルギーの有無も確認しておくと安心です。 ・乳房トラブルがないか 乳腺炎を繰り返している場合、日中に授乳しないことで再発が懸念されます。日中の搾乳が予防になりますが、相談できる母乳外来を探しておくと安心です。 ・ママの気持ちや考え なんといっても一番大切なのがママの母乳育児に対する気持ちです。保育園に入園後も母乳育児を続けたいのかどうか、じっくり考えてみましょう。 それぞれのメリットと懸念点、準備したいこととは それでは仕事復帰にあたって「母乳育児を続ける場合」と「入園前に卒乳する」について、それぞれのメリット、懸念点、準備したいことをみていきましょう。 【仕事復帰後も母乳育児を続ける場合】 ■メリット ・授乳時間でスキンシップがはかれるので、赤ちゃんの安心感やママの癒しにつながる ・母乳育児を長期に継続することでママの乳がん、卵巣がん、子宮体がんなどの発生リスクを抑える ・母乳の免疫で赤ちゃんが感染症にかかりづらくなり、また重症化を防ぎやすくなる ・寝かしつけがしやすい ■懸念点 ・夜間授乳で寝不足になることがある ・乳腺炎になることがある ・日中の分泌量が多い場合などは搾乳する必要がある ■準備したいこと 子どもが保育園にいる時間帯に授乳をしている場合は、勤務時間中におっぱいが張ってしまうので搾乳する必要があります。そこで、次のことを準備しておきましょう。 ・勤務時間中に搾乳して破棄する場合は、職場の搾乳場所や時間を確保し、搾乳器、容器を用意する。 ・勤務時間中に搾乳して保存する場合は、上記に加え、職場の冷凍庫を確保し、持ち運び用に母乳保存パック、保冷バッグ、保冷剤を用意する。なお、保育園によっては搾母乳の対応をしていないことがあるので確認が必要です。 関連情報:仕事復帰後も母乳育児を続けるにはどうしたらいい?おっぱいの張り、保育園での授乳はどうなる!? 【仕事復帰にあたって卒乳する場合】 ■メリット ・夜間授乳がないためママの寝不足が解消される ・子どもの離乳食の食べがよくなることがある ・ママの以前のライフスタイルに戻していくことができる(例:お酒を飲む、など) ■懸念点 ・分泌がよければ搾乳や母乳外来などでの卒乳ケアの必要がある ・母乳に代わる寝かしつけ、スキンシップが必要 ■準備したいこと ・母乳外来や母乳相談室などでおっぱいのケア含め、卒乳方法を相談しながら進める ・計画的に卒乳する日を決めて子どもに話す 関連情報:計画的卒乳とは?卒乳を成功させるためのステップを助産師が伝授! 誰しも迷うが正解・不正解はない 仕事復帰にあたって母乳育児を続けるか卒乳するか、これは本当に多くのママが悩むことです。 仕事をしながらの母乳育児の継続は一見とても大変そうですが、やってみたら案外大丈夫だったという方は少なくありません。おっぱいはやがて、子どもが必要なときに必要な量だけ分泌されていくようになるので、朝と夕方以降だけおっぱいが出るという差し乳に変化していくからです。 仕事中、ママも子どもに会えずさみしいけれど、帰宅後の授乳時間が癒しの時間になるという声は多いです。 反対に仕事復帰を機に卒乳することも、月齢などにもよりますが一つの選択肢ですよね。スキンシップは授乳以外にもはかれますし、体力をキープして睡眠もしっかり確保して仕事に復帰したいというママもいるでしょう。もし、ママの負担が減ってママに笑顔が増えるようなら子どもにとっても喜ばしいことだと思います。 仕事の内容、子どもの月齢や状況などによっても考え方は違ってくるでしょう。母乳育児を継続してみて、それから考えてみるという手もありますね。または、預け先の保育園が決まっているのであれば、保育士さんは多くの働くママとその子どもを見てきているので、保育園にアドバイスをもらうのもよいかもしれません。 どちらが正解・不正解ということはないので、ママの自分の気持ちにしっかり向き合いつつ、それぞれのメリットや懸念点などをイメージしながら検討してみてくださいね。 【プロフィール】 榎本美紀 2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、母乳育児支援の国際ライセンスである国際ラクテーションコンサルタントとして、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。 「みき母乳相談室」 シェアする ツイートする LINEで送る マイリストに保存する 関連キーワード 医師・助産師監修 離れていても母乳育児 卒乳 夜間授乳 離乳期の授乳 職場復帰
冷凍母乳ってどんなもの?どんなときに使う?【助... 2022.06.09 搾乳のはなし 搾乳 搾乳器 小さく生まれた赤ちゃん 乳首の傷 職場復帰 パパも授乳 母乳保存 医師・助産師監修 離れていても母乳育児