自分のおっぱいが出にくいなんて、実際にママになるまでわからないこと。だからこそ、いざ気がついてからとまどう方も多いと思います。
現在2児のママであり産婦人科医でもある十倉陽子先生に、ご自身の経験を振り返り、どう対処したのかお聞きしました。
どんな経験をして、どう対処したのでしょうか?
私自身、1人目の出産直後に授乳を始めたころは、寝不足が続く中、母乳がなかなか思うように出ず、乳頭に亀裂ができ出血もしてしまい、母乳での育児はもう諦めようかと思い悩む日々が何日も続きました。病院の授乳室で会うベテランママたちが、とても上手に授乳をしているのを眺めて、よく羨ましいと思ったものです。
出産後、数日かかって乳頭保護剤をつけ、助産師さんにグイグイと乳頭開通をしていただいて、やっと十分な量のおっぱいを赤ちゃんにあげられるようになりました。
考えられる原因は、何だったのでしょうか?
振り返ってみると、事前の乳房や乳頭マッサージが足りず、分娩直後の初産婦さんにありがちな、乳管開通が不十分の状態でした。また、母乳が出にくい乳首を長時間赤ちゃんに吸わせてしまったことで、乳房に亀裂ができてしまうという悪循環に陥っていたと思います。
妊娠中も仕事をしていたため、バタバタと出産を迎えてしまい、十分に準備ができなかったように思います。分娩前からの乳房マッサージが大事なことはわかってはいたものの、それより赤ちゃんのことや友達、職場への連絡などに翻弄され、乳房のケアが後回しになっていたのだと思います。
同じように悩むママにどのようにアドバイスをしていますか?
おっぱいのタイプ別の対応は、毎日たくさんのママの乳房に向き合っている助産師や医師がよくわかっています。特に、乳房や乳頭マッサージの実際の力加減などは、実際に体験してみないとなかなか伝わりにくいものです。自己流で対処し続けると、乳腺炎を引き起こす、母乳の量がいつまでも増えない…なんてことにもつながる場合があるので、早めに医療関係者に相談してくださいね。
出産直後、退院してからはなかなか相談できないこともあるので、できれば出産~退院までや、産後1週間目の検診で赤ちゃんとお母さんも見てもらい、相談するようにしましょう。
最後に
母乳が出る・出ないや、その原因については十人十色。何をするにも一年生です!困った時は医療機関にうまく甘えていきましょう。今は大変な授乳タイムも、その先にある卒乳の時には寂しくなってしまうような、いとおしく楽しい時間へと、早く変わっていきますように。
【著者プロフィール】
十倉 陽子
大学卒業後、総合診療、家庭医、地域医療を初期研修で学び、産婦人科医局に入局。
婦人科良性腫瘍手術、性感染症、女性医療、婦人科悪性腫瘍、周産期医療、新生児治療の研修を踏まえ、現在は不妊治療専門施設に勤務。体外受精を含む不妊治療を中心に、その他女性のトラブル全般に対応できる女性の全人的医療者を目指しています。二児の母。現在英ウィメンズクリニック勤務。