産婦人科医が教える、乳腺炎の原因と乳腺炎を予防する4つの方法

母乳育児中はさまざまなトラブルが起こることがありますが、代表的なものにおっぱいが腫れて痛む「乳腺炎」があります。授乳中のママなら誰でも発症する可能性がある病気です。

そこで乳腺炎について、原因や症状や予防方法などを産婦人科院長の天神先生に教えて頂きました。

乳腺炎には2種類ある

母乳を分泌する乳腺で炎症を起こす病気を「乳腺炎」といいます。
乳腺炎には2種類あり、乳腺内に母乳が溜まることで発症する「うっ滞性乳腺炎」と乳管やその周辺から細菌が侵入して炎症を起こす「化膿性乳腺炎」があります。

乳腺炎はおっぱいのはれや痛みを引き起こします。症状があらわれたときは、乳腺炎の可能性があるのですぐに対処する必要があります。

乳腺炎の原因と対処法

「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」についてそれぞれの原因と対処法をお伝えします。

・うっ滞性乳腺炎

乳管が十分に開いておらず母乳が詰まってしまったり、赤ちゃんが母乳を飲む力が弱いために母乳が乳管に溜まってしまったりすることで起こります。ほかにも、授乳回数が少ない(または授乳時間を飛ばしてしまう)、片方のおっぱいだけ吸わせているなどの吸わせ方の問題、ママのストレスや疲労なども原因と考えられています。出産数日後や急な断乳後に発症することが多く、症状はおっぱいが腫れたり熱をもったりします。

対処の仕方としては、ママと赤ちゃんが授乳に慣れてくると自然に回復することも多いため、バランスのいい食事をとる、おっぱいをマッサージするなどしつつ、さまざまな角度から赤ちゃんに吸ってもらって詰まった母乳を出します。
赤ちゃんが飲みきれなかった分は搾乳をして母乳が乳管に残らないようにすることも大切です。

・化膿性乳腺炎

乳首にできた傷などから赤ちゃんの口やママの皮膚にいる細菌や常在菌が侵入することが原因で乳管に炎症が起こる病気です。

症状はおっぱいが赤く腫れる、しこりができるなどのほか、強い痛みが生じたり、急に悪寒や高熱が出たりする場合も。もし急にしこりができて痛みを感じるなどがあればすぐに医師や助産師に相談する必要があります。

対処法としては抗生物質や解熱鎮痛剤による治療を行うため、授乳は一時控えることになります。ひどくなると膿を出す手術がおこなわれることもあります。

知っておきたい!乳腺炎を予防する4つの方法

乳腺炎が発症すると、楽しいはずの授乳タイムが苦痛になったり、授乳ができなくなったりとつらいもの。以下の4つのことを心がけて予防しましょう。

【方法1】正しい授乳姿勢と、時々授乳姿勢を変えてみる

赤ちゃんが上手に母乳を飲めていないと飲み残しが多くなって乳管に母乳が詰まったり、乳首に傷がついたりして乳腺炎のリスクを高めてしまいます。浅く吸わせると乳首に傷ができるだけでなく母乳はうまく出てこないので、赤ちゃんには乳首だけでなく乳輪までしっかりくわえさせることが大切です。

また、いろいろな角度から吸わせたり、横抱きだけでなく縦抱きでの授乳もするなど複数の授乳姿勢をローテーションさせて一部の乳腺に母乳がたまらないようにしましょう。

関連情報:「横抱き」について-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!

【方法2】月齢が低い時期は、授乳間隔が4時間以上空かないようにする

おっぱいを飲んでいる赤ちゃん

月齢が低く授乳リズムが安定するまでの期間は、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ授乳するのが基本。ですが授乳間隔が長く空き過ぎると、乳管内の母乳が多くなり詰まりの原因に。

そのため、授乳間隔が4時間以上空かないよう気を付ける必要があります。赤ちゃんが眠っていて飲みたがらないなどタイミングが合わなければ搾乳すると安心です。

関連情報:さく乳器があるとこんなに生活が変わる

【方法3】1回の授乳で左右両方のおっぱいを与える

通常、左右のおっぱいには同じ量の母乳が作られます。そのため片方だけ授乳して終えてしまうと、もう片方には母乳が残り詰まりの原因になります。そこで1回の授乳で左右交互におっぱいを飲ませるようにしましょう。

【方法4】マッサージなどで血行を良くする

眠る赤ちゃんの横でストレッチをするママ

乳腺がつまってしまうのは母乳が溜まって流れが悪くなっていることが主な原因なので、マッサージやストレッチをする、休息をとる、栄養バランスの良い食事をとる、水分補給する、体を温めるなど、血行を良くすることを心がけましょう。ワイヤー入りブラジャーなど締めつけのきつい下着も避けてくださいね。

まとめ

乳腺炎は授乳中のママなら誰にでも起こることがあります。母乳育児中あるいは母乳育児をしたいと考えている方は、今回お伝えした予防方法をぜひ取り入れてくださいね。

また、おっぱいに痛みやしこりなどの異変を感じたときは、早めに医師や助産師に診てもらうようにしましょう。

【プロフィール】

天神尚子先生

天神尚子
産婦人科 | 三鷹レディースクリニック院長
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。

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