【助産師が解説】災害時の母乳育児や授乳について知っておきたいこと

災害時に、ママが一番心配なのは、赤ちゃんの栄養ではないでしょうか。万が一に備えて、災害時の授乳について、知っておきたいこと・準備しておきたいことについて、助産師の榎本美紀さんに教えてもらいました。

母乳育児中のママと赤ちゃんの災害時の授乳について

母乳に含まれている免疫物質は、災害時に心配な感染症から赤ちゃんを守れるものもあります。そのため、母乳育児をしているママは、災害時も平時と同じように、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ吸ってもらうのがおすすめです。

災害が起きて、急いで避難しなければいけない状況は、思っても見ない時に訪れます。赤ちゃんの授乳やお世話に必要なものをすぐに持ち出せるようにしておきましょう。避難先では、すぐに落ち着いて授乳ができる環境が整わないこともありますから、授乳ケープなど、授乳に必要なものを備えておくとよいですね。

搾乳をして飲ませるときなどに哺乳びんが必要な場合があると思いますが、災害時は洗浄・消毒ができません。使い捨ての哺乳びんや、カップ授乳も想定して紙コップも用意しておきましょう。離乳食が始まっている場合は、市販のベビーフードの準備もしておいてください。

災害時のストレスで母乳が出にくくなるというのは本当?

おっぱいを飲む赤ちゃん

ママが緊張したり、不安を感じたりしたとき、母乳が出なくなってしまったように感じることがあります。また、一時的に母乳の分泌が減ったと感じるママもいます。しかし、それは一過性のものであることが知られています。頻繁に授乳することで母乳の量は増えていきますから、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ飲ませるようにしましょう。

平時より、授乳回数が増えることも多く、平時よりも母乳分泌が増えることもあります。授乳中のママは水分や栄養が必要になりますから、意識して水分、栄養を摂るようにしてくださいね。

赤ちゃんによっては、慣れない環境や周りの雰囲気が気になって、授乳に集中できずにキョロキョロしてしまうことがあります。またママも環境によっては落ち着かないこともあるでしょう。そんなときは、授乳ケープをかけて授乳をする、テントやパーテーションで囲んで授乳するなど、赤ちゃんもママもが安心できる工夫をしましょう。

どうしても母乳が不足してしまう場合の対処方法

抱っこされている赤ちゃん

母乳だけでは足りないときは、粉ミルク・液体ミルクなどの乳児用ミルクを飲ませますが、その場合は徹底した衛生管理が必要です。哺乳びんは普段使っているものが赤ちゃんも慣れているため望ましいですが、状況によっては洗浄などができないこともありますし、普段哺乳びんで飲んでいない赤ちゃんは人工乳首を嫌がることがあります。その場合は、コップなどで飲ませる方法(カップ授乳)もあります。菌が繁殖しやすいため、飲み残しは絶対に捨てるようにしてください。

カップ授乳の方法は?

赤ちゃんの上半身を起こして座るような体制にします。カップ授乳はこぼすため、搾乳した母乳やミルクは多めに用意しましょう。赤ちゃんの首元にタオルなどを挟んであげるとよいですね。

飲ませるときは、赤ちゃんの口にコップを当てて少しだけ傾け、赤ちゃんの飲む様子に合わせてさらに少しずつ傾かせ、流し込まないようにします。赤ちゃんは上唇が水面に少し付くくらいの角度で、舌を動かして飲むので、コップを舌に押し付けないようにしましょう。

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まとめ

避難所などの人が集まる場所では、赤ちゃんは上気道炎や胃腸炎などにかかりやすいといわれています。母乳にはそういったものから赤ちゃんを守る働きがありますので、災害時にも母乳育児を続けられるとよいですね。また、健康面だけでなく、ママと赤ちゃんの不安を軽減させる作用があります。日ごろから、災害時の持ち物や行動を家族同士で考えていきましょう。

【プロフィール】

榎本美紀さん

榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」

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