「断乳と卒乳はどうちがうの?」「いつごろ卒乳したらいいのかしら」など、母乳で育てているママは疑問に思ったり悩んだりすることがあるでしょう。今回はみき母乳相談室を運営する助産師の榎本さんに、断乳と卒乳の違いや卒乳のコツを教えていただきました。
断乳と卒乳はなにが違うの?
大きくわけると、ママの意思でやめることを「断乳」、子どもの意思でやめることを「卒乳」と定義していることが多いようです。最近では、ママの意思で授乳をやめることを含めて「卒乳」と呼ぶこともあり、「断乳」という表現は消えつつあるかもしれません。卒乳を「計画的卒乳」「自然卒乳」などと区分することもあります。
なお、表現が変わってきた背景として、以前は1才前後に断乳するという指導が大多数でしたが、最近ではママと子どものスキンシップの観点などから、1才以降も無理にやめさせる必要はないという考え方が一般的になってきていることが挙げられます。
2002年には、厚生労働省は母子手帳に掲載されていた1才6ヵ月健康診査の項目「断乳の完了」を確認する欄を、「母乳を飲んでいるかどうかを確認する欄」に変更しています。
卒乳するタイミングはどう決める?
授乳をやめるタイミングや方法はさまざまですが、ママと子どもにとって最善の形はそれぞれ異なります。働くママも増え、授乳スタイルも多様化してきていますよね。
そのため、WHOでは2才まで母乳育児を続けることを推奨していますが、ママの考え方や子どもの様子などから選択するのが一般的です。
もちろんママと赤ちゃんがおっぱいを飲むことを楽しんでいるなら2才を過ぎても授乳を続けて問題ありません。
逆に、ママの精神面、体力面、仕事、離乳食の食べ具合や発育などさまざまな面を考慮して、やめた方がメリットがあると考えられる場合、卒乳したほうがよいでしょう。
卒乳のタイミングに正解や不正解はありません。ママの考えや子どもの状況などをみて判断しましょう。迷ったら母乳外来や母乳相談室などで助産師に相談してくださいね。
卒乳をスムーズに進めるコツ
子どもから自然に母乳を飲まなくなる「自然卒乳」も、親の働きかけで母乳育児をやめていく「計画的卒乳」もどちらも卒乳ですが、ここでは計画的卒乳に焦点をあてて、スムーズに進めるコツをお伝えします。
1)夜間断乳をしておく
離乳食が3回食になり、食べる量も増えてくる生後10ヵ月以降は、夜間断乳(夜間のみ授乳をやめること)をしておくのがおすすめです。おっぱい以外で眠ることができるようになることなどから、卒乳がスムーズになることがあります。
2)授乳時間を食べる時間に
おなかがすきそうなタイミングなどの授乳時間のひとつを、軽食やおやつに置き変えてみましょう。おっぱい以外のことに気持ちがそれて、おっぱいがなくても大丈夫ということを子どもに覚えてもらえるかもしれません。
3)授乳回数を少しずつ減らす
授乳回数を少しずつ減らして授乳間隔があくようにしておくのがおすすめです。母乳の分泌が少しずつ落ちていくため、卒乳時のおっぱいの負担が軽減されます。また、間隔があいていく過程で子どものおっぱいに対する気持ちがそれたり、母乳の分泌量が減ったりすることで子どもから自然卒乳をすることもあります。
4)卒乳までの日数を親子で確認
カレンダーを使って、卒乳までの日数を子どもと共有しましょう。親子のイベントとして取り組むと子どもの受け入れもスムーズになることがあります。
5)家族と話し合っておく
ママが卒乳についてどう考えているかや思いなどを旦那さんと共有したり話し合ったりして、家族の協力が得られるようにしておくことも大切です。休みの確認などもしておくとよいですね。
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まとめ
母乳育児はいつまでという決まりがありません。ママが卒乳を決めて働きかけるのもよいですし、子どもが突然飲まなくなって急に自然卒乳することもあります。
いずれの卒乳スタイルであっても、ママはわが子の成長をうれしく思う一方で、淋しい気持ちになることがあるでしょう。日々の授乳の時間を大切に過ごして、お互いに納得のいく形での卒乳の日を迎えられるとよいですね。
【プロフィール】
榎本美紀
2001年に助産師免許取得後、杏林大学医学部付属病院・さいたま市立病院・順天堂大学練馬病院の勤務を経て、2013年に埼玉県さいたま市に訪問型の助産院「みき母乳相談室」を開業。病院勤務での経験を元に、地域の母乳育児を支援している。訪問時の相談は、母乳だけではなく離乳食や抱っこひも、スキンケア、寝かしつけなど多岐にわたる。また、おむつなし育児アドバイザーとして、トイレトレーニングなどの相談も受け付けている。自身も一児の母として子育てに奮闘中。
「みき母乳相談室」