母乳育児をしていると、「お腹は満たされているのにおっぱいを欲しがる」「乳首をかまれて痛い」「疲れて母乳の出が悪い」など、思わぬ悩みに直面することも少なくありません。ママたちが悩みがちなことについて、助産師サロンを運営する高杉絵里さんに答えてもらいました。
授乳中の悩みは人それぞれ。少しの工夫で解決できることも
授乳中の悩みはママと赤ちゃんによって、それぞれです。そして、うまくいかない原因は、授乳姿勢や赤ちゃんが飲みやすいおっぱいかどうか以外にあることも多いのです。いつも授乳している部屋の環境を整えたり、授乳のタイミングを調整したり、赤ちゃんとのかかわり方を見直すなどの工夫で解決できることもあれば、赤ちゃんが成長するにつれて解決していくこともあります。ママたちの悩みを解決するためのポイントを紹介しますので、参考にしてくださいね。
助産師が解決!授乳の悩みQ&A
Q しっかり飲んでほしいのに、授乳中に眠ってしまいます。どうすればいいの?
A 新生児期は起こして飲ませてみて
とくに新生児期の赤ちゃんは未熟で、授乳にとても体力を使うため、お腹がいっぱいになる前に体力がなくなり疲れて眠ってしまうことはよくあります。また、おっぱいを吸っているうちに安心して寝てしまうことも。ママと触れ合っていることで温もりや心臓の鼓動を感じて安心しているのかもしれません。
月齢が低いうちは胃の容量も小さく、吸う力も弱いため一度に飲める量も少ないです。また、まだ授乳に慣れておらず上手におっぱいが飲めないこともあります。そのため、お腹がいっぱいになる前に疲れて眠ってしまい、すぐにお腹が空いて泣いて起きるというのを繰り返すことも少なくありません。
あまり飲んでないのに寝てしまったなと感じたときは、赤ちゃんの足の裏をさすったり、おむつを替えたりして起こしてみましょう。新生児期を過ぎてくると徐々にこのような様子は減ってくるでしょう。赤ちゃんの様子によりますが、産後1ヵ月を過ぎて、体重が順調に増えていて、前回の授乳から1~2時間しか空いていないときは無理に起こさずに様子をみていて大丈夫です。
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Q 授乳したばかりで、お腹が減っていないはずなのに欲しがるときがあります
A 赤ちゃんが欲しがったらあげましょう
新生児期は授乳に関して赤ちゃんの欲求が一番強い時期です。そのため頻回におっぱいを欲しがることも多いでしょう。また、母乳量を増やし、安定させるためには赤ちゃんが頻回におっぱいを吸うことが必要でもあります。また、まだ外の世界に慣れていない赤ちゃんがママと常に触れていたい、安心していたいというのもあるかもしれませんね。この時期は赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけおっぱいを吸わせてあげましょう。ママの負担が少ないような体勢で授乳できるといいですね。
産後1~2ヵ月はとくにこのような様子がみられることが多いので、ママが赤ちゃんとの生活に合わせて、赤ちゃんが眠っているときはママも昼夜関わらず休めるように、家事など身の回りのお世話は家族に頼ったり、自治体のファミリーサポートなどを利用したりするといいですね。
Q 飲むときに暴れます
A 暴れる理由はさまざまですが、徐々に減っていきます
授乳のときに赤ちゃんが暴れる理由はさまざまで、成長とともに授乳のときに嫌がる様子がみられることもあります。授乳の体勢がしっくりこないときもありますし、分泌が良すぎて嫌がるときもあります。少し体勢を変えて授乳するとうまくいくこともあります。
飲みはじめに嫌がる、いわゆる「射乳反射」によって嫌がるときは、ママが椅子やソファなどに後ろにもたれるように座った状態で、胸の上に赤ちゃんを抱いた姿勢で飲ませてみましょう。射乳反射により一気に口の中に母乳が入ってくるのを防げます。
また、にんにくなどにおいが強いものを食べた後は、その後3時間程度は母乳にその臭いの影響があり赤ちゃんによっては嫌がることもあります。成長とともに赤ちゃんも上手に飲めるようになり、授乳間隔もあいてくるので、徐々にこのような様子は減ってくるでしょう。
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Q 乳首をかまれることが増えました。
A かまれるのにはいくつか原因が。かまれたら「ダメ」としっかり伝えて
乳首をかまれるのはいくつか原因が考えられます。個人差はありますが、生後6ヵ月以降、歯が生えてくるとそのむずがゆさから乳首をかむ子もいます。歯茎が盛り上がってきた、唾液が増えてきた、口の中を触ることが増えた、機嫌が悪い、夜よく起きるなどあれば歯が生えてきているかもしれません。
そのむずがゆさから、授乳のときに乳首をかむということはあるようです。一時的なものですが、ママとしては授乳の時間が苦痛になりますよね。授乳以外のときは歯固めや冷やしたガーゼをかませてあげると、赤ちゃんの不快感も少し軽減することがあります。
また、何でも口に入れるようになってくると、ママのおっぱいも遊んでかんでしまう赤ちゃんもいます。かまれたときは、赤ちゃんの目をしっかり見て、怖い顔をしたり、低い声で「噛んだらダメ」と端的に注意したりしましょう。言葉の理解が未熟な赤ちゃんでも、怒られたということ、ママが嫌がっているということはわかります。大きな声を出すと、ママが喜んでいる、楽しいことと思ってやり続けることもあるので、おっぱいをかんだときは上記のようにすぐに注意するといいでしょう。口に指を入れて離したり、鼻を少しつまんだりするとスムーズに乳首を離してくれますよ。
Q 夕方になると頻繁におっぱいを欲しがります
A 生後1~2ヵ月によくあること。お腹にガスなどが溜まってぐずることも
生後1~2ヵ月の間には、夕方になると頻回におっぱいを欲しがるという赤ちゃんは少なくありません。この時期は赤ちゃんの脳が急速に成長しているため、疲れた赤ちゃんが安心できるママやおっぱいを求めているためとも言われています。また、お腹にガスなどが溜まって、それが苦しくて夕方にぐずりが増えるとも言われています。
頻回授乳がつらいということであれば、ママがラクな体勢で授乳したり、搾乳して冷凍しておいた母乳を家族に飲ませてもらったりするといいですね。
Q 離乳食前におっぱいを欲しがります。飲んだ後、離乳食をあまり食べてくれず悩んでいます
A 離乳食の前に少しおっぱいを飲ませても
離乳食を始めてすぐのころは、離乳食で空腹を満たすのがもどかしく、おっぱいを欲しがることはめずらしくありません。離乳食の前に少しおっぱいを飲ませて、落ち着かせてから離乳食にするといいでしょう。離乳食を始めたばかりの1~2ヵ月は、あまり離乳食が進まない赤ちゃんもいます。「食べる」という経験を積む時期なので、そのうち食べられるようになる、とママもおおらかな気持ちで見守ることも大切かもしれませんね。
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まとめ
産後1~2ヵ月は赤ちゃんが授乳や外の環境に慣れるための時期であり、ママも赤ちゃんのお世話に慣れるための時期、赤ちゃん自身を知るための時期です。赤ちゃんと二人でいることで赤ちゃんの要求もわかるようになってきます。ママ自身の身体を休めながら赤ちゃんを知ることを楽しめるといいですね。授乳の悩みはいろいろありますが、一時的なものも多いです。ご家族のサポートなどを受けながら、大変な時期を少しでもラクに乗り越えていけるといいですね。うまくいかないときは抱え込まずに母乳外来などで、専門家に相談しましょう。
【プロフィール】
高杉絵理
看護師、助産師、保健師の資格を取得。国際ラクテーションコンサルタント。総合周産期母子医療センターの産科やNICU、産科クリニックで経験を積む。現在は世田谷区の保健センターで妊婦さんやママたちの相談業務に携わる。助産師にオンラインで相談できる「助産師サロン」も運営。自身も1児の母として育児に奮闘中。
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