夜間授乳や寝かしつけの授乳は虫歯になるの?虫歯の予防方法を歯科医が伝授! 2020.05.14 夜間授乳や寝かしつけの授乳をしていると、赤ちゃんの歯に虫歯ができるのではと心配になるママやパパが多いのではないでしょうか。 そこで今回は、原宿こども歯科の川越院長に、夜間授乳や寝かしつけの授乳が虫歯になるのかどうか、また虫歯予防についてできることを教えてもらいました。 ●母乳やミルク、砂糖、虫歯菌が一緒になると虫歯のリスクになる 虫歯の原因はミュータンス菌と呼ばれる虫歯菌です。ミュータンス菌はお口の中の糖質を分解して歯垢をつくります。この歯垢にミュータンス菌がすみついて酸を作り出し、歯を溶かしてしまうのです。 母乳には乳糖が含まれていますが、ミュータンス菌は乳糖を食べても酸が長時間くっつくことがないといわれています。それどころか母乳にはラクトフェリンという抗菌物質が含まれているため、母乳そのものには虫歯を予防する力があるのです。 なお、育児用ミルクについても糖質のほとんどが乳糖と、母乳の成分と大きな差がなく、最近ではラクトフェリンが配合されたものが多くなっていて、虫歯の発生リスクも母乳とほとんど差がないといわれています。 ところが、離乳食が始まって、糖分の摂取が増えてくるとミュータンス菌は酸を作り出し、歯に酸がくっつくようになってしまいます。 つまり、赤ちゃんが口にするものが母乳やミルクのみの段階では歯が生えたとしても虫歯のリスクはないのですが、離乳食がはじまって糖分の摂取が増えてきて、母乳やミルク、砂糖、虫歯菌(ミュータンス菌)がそろうと虫歯のリスクが発生するということです。歯に歯垢を付着させないよう、歯をきれいにしておくことが虫歯予防のために大切になってきます。 ●寝る前、夜間は唾液の分泌が少ないのでリスクが高い 日中は赤ちゃんのお口は唾液の分泌が盛んです。唾液はプラークが作りだした酸を中和させたり、洗い流したりする働きがあるので唾液の分泌量も虫歯に関係してきます。 ところが寝る前や夜間は唾液の分泌がほとんどなくなってしまいます。そのため、夜間授乳は虫歯の観点でいうと少しリスクが高くなります。とくにすでに虫歯菌がすみついてしまっている赤ちゃんの場合は、寝る前や夜間の授乳は虫歯のリスクを高めやすいといえるでしょう。 ●夜間授乳や寝かしつけの授乳を続けながら、虫歯リスクを減らす6つの対策 夜間授乳や寝かしつけのときに授乳をする場合、赤ちゃんが寝てしまい授乳後の歯磨きができなくなることも多いですよね。そこで、少しでも虫歯のリスクを減らすための対策を6つお伝えします。 【対策1】虫歯菌のコントロールをする! 虫歯菌であるミュータンス菌のコントロールをすることです。つまり、普段の食事後の歯磨きで歯垢を取り除き、口の中の虫歯菌を減らすということ。 歯磨きは食後が望ましいですが、赤ちゃんの場合は嫌がったり機嫌が悪かったりして食後すぐに磨けない場合もあると思います。そのようなときは機嫌がいいときに行うようにしましょう。また、食後と授乳後に乳歯用のナップなどで歯を拭いてあげるのも効果があります。 なお、虫歯菌の定着について調べたい場合、歯医者さんで「カリエスリスクテスト」というテストを行い調べる方法があります。すべての歯医者さんで行っているわけではないので、事前に歯医者さんに確認をしておきましょう。 【対策2】規則正しい食生活のリズムをつくる! 口の中は普段は中性ですが、なにかを食べると虫歯菌が糖分と結びついて酸を作り出し、口の中は酸性に傾きます。酸性になると歯が溶け出し、これが続くことで虫歯になってしまいます。その後、なにも食べずにいると唾液が分泌され、唾液が中和してくれるため口の中が少しずつ中性に戻り、歯を溶けにくくします。 これらのことから、だらだら食べるのではなく食事の時間をしっかり決めて、食事と食事、食事と間食の間隔をあけて食生活のリズムを安定させるようにしましょう。 【対策3】よく遊び、よく眠り、生活リズムを整えて免疫力を高める 早寝早起きをして、日中はよく遊んでほどよくからだを動かし、月齢や発達に応じた睡眠をしっかりとって生活リズムを整えると、免疫力が高まり、虫歯予防につながります。食事への意欲も育ててくれるでしょう。 さらに、自律神経も整いやすくなり、自律神経が整うことでお口のお掃除をしてくれる唾液の分泌量が豊富になるメリットも。虫歯予防のためにできるだけ生活リズムを整えるようにしましょう。 【対策4】歯ぐきをマッサージする! 夜間授乳や寝かしつけの授乳は、授乳後に歯磨きができないことが多いと思います。そこで授乳後、赤ちゃんの歯ぐきをママの指でそっとマッサージしてみましょう。そうすることで唾液の分泌が促されます。唾液がお口の中を中和したり、お口を洗い流したりするので虫歯のリスクを減らすことができます。 これは習慣にしておくと、赤ちゃんが歯ブラシをするのを嫌がらないという効果も期待できます。歯が生える前からの歯ぐきマッサージができる、柔らかい素材の専用歯ブラシなどで、歯が生える前からのマッサージを習慣づけておくとよいですね。 【対策5】砂糖の摂取を控える 砂糖はミュータンス菌が酸を作るための材料なので、摂取を控えることで虫歯リスクを減らすことができます。甘いものを食べたり飲んだりすることもあると思いますが、頻度を減らせるとよいですね。 また、甘いものを口にしたらそのあと歯磨きをするという習慣をつけるようにしましょう。 【対策6】大人も一緒に虫歯予防をする 虫歯予防は、赤ちゃんだけでなく大人の家族も必要です。ミュータンス菌は生まれたばかりの赤ちゃんの口の中にはいないのですが、大人に虫歯があると感染するリスクがあることが分かっているからです。 そのため、まずは大人が虫歯を治して、ミュータンス菌のリスクを減らしておくことがとても大切です。歯科クリニックで大人の食事の選び方や口腔内ケアの相談をするようにしましょう。 ●最後に 授乳して赤ちゃんが寝てしまったあとに歯磨きをするのは大変ですよね。しかし、今回お伝えしたように、普段の心がけで、赤ちゃんの虫歯になるリスクを減らすことができます。 授乳タイムはママと赤ちゃんの大切な癒しの時間、かけがえのない時間でもありますよね。ぜひ、安心して授乳が続けられるよう、ママやパパの負担のない程度に、日々の生活に取り入れていただけたらと思います。 【プロフィール】 川越じゅん奈 原宿こども歯科院長 2004年岩手医科大学卒業後、赤ちゃん子供歯科、こばやし歯科クリニック、あーす歯科勤務の後、2015年に原宿こども歯科を開業。怖くない、また来たくなるような場所となることをモットーに、そして「歯医者さんに遊びに行こう!」をテーマに診療を行っている。院内は赤ちゃんの時からご家族で心の負担なく通えるよう幸せ感たっぷりな空間や仕掛けを用意するなど、楽しめる歯医者を目指している。 原宿こども歯科HP https://hk-dental.jp/ シェアする ツイートする LINEで送る 関連キーワード 夜間授乳 離乳期の授乳 医師監修 混合栄養
母乳外来はママと赤ちゃんの強い味方!相談できる... 2020.05.21 母乳の専門家 医師監修 頻回授乳 母乳が出ない 母乳過多 授乳リズム 離乳期の授乳 夜間授乳 混合栄養 授乳姿勢 乳首の傷 乳腺炎 職場復帰