「母乳が足りているか不安」「授乳の仕方が分からない」など、生まれたばかりの赤ちゃんの母乳育児に不安や悩みを抱えているママは多いのではないでしょうか。
そこで、新生児の赤ちゃんの母乳育児について、新生児の特徴やおすすめの授乳姿勢、授乳のポイントや母乳が足りているかの見極め方を助産師で杏林大学の准教授である加藤先生にお伺いしました。
新生児の過ごし方と授乳の頻度について
生まれてから生後28日間の赤ちゃんを新生児と呼びます。新生児は1~3時間おきにおっぱいとねんねを繰り返し、1日のほとんどを昼夜の区別なく寝て過ごします。
おしっこもうんちも回数が多く、おしっこは生後1週間は1日6~8回ですが、その後は10~15回ほど、うんちは3~4回ですが、母乳を飲んでいる場合は8回前後。そのため新生児期は頻繁におむつを替える必要があります。
授乳は赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけおっぱいをあげる自律哺乳が原則です。目安は3時間おきですが、1日の授乳回数は決めずに赤ちゃんが泣いておっぱいを欲しがったら飲ませてあげましょう。
新生児におすすめの5つの授乳姿勢
おっぱいを飲ませるときの姿勢はいろいろあります。とくに新生児期は授乳回数が1日10回以上になることもあるので、ママの体に負担がなく、赤ちゃんが吸いやすい姿勢であることが大切。
ここでは代表的な姿勢をご紹介します。いろいろ試してママと赤ちゃんに合った姿勢を見つけてくださいね。
1)横抱き
首がすわっていない赤ちゃんを抱っこする姿勢から、母乳を飲ませている方の腕を赤ちゃんの首の下に入れ、赤ちゃんの頭をママの肘の曲がった部分に乗せます。その手でママと赤ちゃんが身体ごと向かい合うようにして赤ちゃんのおしりの辺りを支えます。授乳クッションを使うことで腕の負担を軽減できるでしょう。
さらに詳しく⇒「横抱き」について-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!第26回:さく山さんの母乳育児講座
2)交差横抱き
首すわり前の新生児でも効率よく授乳できる姿勢です。横抱きと基本的には同じですが、異なるのは、飲ませるおっぱいと逆の手と腕で赤ちゃんの頭や体を支えるという点です。
横抱きと同じで、授乳クッションで腕を支えるとより疲れにくく、赤ちゃんにもストレスがかからないでしょう。赤ちゃんの頭を抱きよせやすいので、飲むことに慣れていない、なかなか吸いつかない赤ちゃんなどにもおすすめです。
さらに詳しく⇒「交差横抱き」って?-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!第23回:さく山さんの母乳育児講座
3)縦抱き
赤ちゃんの体を起こしてママの太ももにまたがって座らせて、赤ちゃんの口がママの乳首の高さにくるようにします。新生児は首がすわっていないので赤ちゃんの頭から首にかけて、ママが手のひらでしっかりサポートする必要があります。
乳輪までしっかりくわえやすい姿勢のため、乳頭が短い人や、ママの乳首を深くくわえられない小さめの赤ちゃんなどにおすすめです。また、ママの心臓の音が伝わるためか、赤ちゃんがすんなり眠りにつくことがあるようです。
さらに詳しく⇒「縦抱き」って?-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!第25回:さく山さんの母乳育児講座
4)添い乳
ママと赤ちゃんが横に寝ておなかを向かい合わせて密着させます。タオルなどを敷いて赤ちゃんの頭をママのおっぱいの高さに調節し、赤ちゃんに乳首をふくませて授乳します。ママのからだを休ませながら飲ませることができるので、ママの体調がすぐれないときや、帝王切開の術後で安静が必要なときなどにおすすめです。
ママの温もりを感じて赤ちゃんが眠りにつきやすく、寝かしつけがしやすいのも利点です。ただし、赤ちゃんが寝たあとは、SIDS(乳幼児突然死症候群)予防の観点からベビーベッドなど赤ちゃん用の布団に移動させて仰向けに寝かせる、万が一赤ちゃんの鼻と口をママがふさいでしまわないようにママが眠いときは行わないなどの注意が必要です。
さらに詳しく⇒「添い乳」について知ろう-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!第21回:さく山さんの母乳育児講座
さらに詳しく⇒ 夜中の授乳もラクになる?!添い乳のメリット・デメリットや正しい方法を助産師が解説します!
5)フットボール抱き
赤ちゃんのからだをフットボールを持つようにママの小脇で抱え、赤ちゃんの頭が乳房の方に出て、足がママの背中側にくるようにします。授乳クッションなどで高さを調整すると授乳がしやすくなるでしょう。赤ちゃんの口がよく見えて、深く飲めているか確認ができます。おっぱいの吸い方が弱い、上手でない赤ちゃんにとくにおすすめです。
さらに詳しく⇒「フットボール抱き」って?-授乳は赤ちゃんとママにとってラクな姿勢で!第22回:さく山さんの母乳育児講座
授乳のときに気を付けるポイント
ママのおっぱいで赤ちゃんの鼻や口をふさいでしまうことがないように、赤ちゃんが飲んでいる様子を見ながら授乳するようにしましょう。赤ちゃんが乳輪部までしっかりくわえていないと母乳が出ないので、くわえ方を確認し、赤ちゃんが飲みやすい角度を探るとよいですね。
また、同じ姿勢で授乳し続けたり片方のおっぱいだけ飲ませたりすると、おっぱいの出が偏ることがあります。毎回左右両方のおっぱいを飲ませること、ときどき違う姿勢で授乳することも大切です。
母乳が足りているかどこでみる?
母乳が飲めているのか、足りているのか気になりますよね。以下のことがあてはまれば母乳を飲めているといえるでしょう。
・1日に6~8回のおしっこが出ている
・1日に7~8回以上母乳を飲んでいる
・機嫌がよい
・授乳中、ゴクゴクと飲んでいる音が聞こえる
母乳量が適切かどうかは、体重の増えをチェックして確認することができます。体重が発育曲線に沿って増えているようであれば足りていると考えてよいでしょう。
赤ちゃん用の体重計がなければ、赤ちゃんを抱っこしたまま一般の体重計に乗って測ることができますよ。ママの体重チェックも兼ねて、1週間に1回くらい計ってみるのもよいでしょう。
不安があれば1人で悩まず助産師に相談を
新生児は昼夜の区別がなく頻繁に授乳する必要があるので、ほとんどのママが寝不足に悩まされることでしょう。赤ちゃんの生活リズムが整うのは生後3ヵ月頃からと少し先なので、今は授乳の練習期間と割り切って、いろいろな授乳姿勢を試してママと赤ちゃんに合った姿勢や角度を見つけられるといいですね。
困ったことや不安なことがあれば1人で悩まず母乳外来や母乳相談室などを利用し、助産師に相談してください。
さらに詳しく⇒ 母乳外来はママと赤ちゃんの強い味方!相談できる内容や費用、受診時の注意点を助産師が解説!
親子のスキンシップにもなる授乳タイム。できるだけママと赤ちゃんがリラックスして過ごせるよう願っています。
【プロフィール】
加藤千晶
杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。