母乳

母乳をのむ赤ちゃん

母乳には良いところがいっぱい

赤ちゃんが母乳を飲むことにはいろいろなメリットがあります。母乳には赤ちゃんの成長・発達に必要な栄養がバランスよく、消化吸収しやすい形で含まれています。感染を抑える免疫物質も含まれており、特に初乳(産後、3日~5日くらいの間に出る母乳)に多いことがわかっています。

母乳で授乳することにはママにも大切な意味が。母乳の分泌に関わるホルモンは、母乳の分泌を促すだけでなく、子宮の収縮を促し、元の大きさに戻すなど産後の体の回復を早める働きがあるのです。また、母乳を飲ませるのは、赤ちゃんとママにとって何よりのスキンシップ。母乳育児を通して母子の絆が深まります。

ママの血液が母乳のもと

母乳はママの血液でできています。乳房にある乳腺葉という組織に血液が運び込まれると、血液中の栄養分や白血球などが取り込まれ、白い乳汁に変わります。その働きを促すのが、プロラクチンというホルモン。そして、オキシトシンというホルモンが、作られた母乳を押し出す働きを促します。これらのホルモンは、赤ちゃんがおっぱいを乳輪部まで深くくわえて飲む刺激によって分泌が促されます。母乳の出を良くするには赤ちゃんに吸ってもらうことが大切です。

出産後すぐの母乳は、初乳が少し出る程度ですが、赤ちゃんが欲しがるとき欲しがるだけ飲ませる「自律授乳」を繰り返すことで、だんだん出るようになっていきます。

母乳育児が軌道に乗り、母乳の分泌が良くなってくると、授乳時間が近づき赤ちゃんのことを思うだけでもおっぱいが張って、母乳がポタポタと出てくることがあります。母乳の漏れが多くなったら、母乳パッドを使うと良いでしょう。

母乳育児を続けていくためには、ママ自身が健康でいることが大切です。バランスのよい食事を心がけて、水分補給はこまめにとります。リラックスできる時間を作り、疲れやストレスをためないようにこころがけてください。

母乳の飲ませ方

母乳を飲ませる時は、乳首だけでなく乳輪まで深くくわえさせるのがポイント。ママは授乳クッションを利用するなどして、おっぱいに対して赤ちゃんの体の向きが平行していて、頭、首、背筋、腰までが一直線になる姿勢を取ります。このときに、ママが前屈みになると負担がかかって疲れてしまうので、背筋を伸ばして赤ちゃんをおっぱいに近づけるようにしましょう。

授乳姿勢はいくつかあるので、赤ちゃんとママに合った授乳姿勢を探してみましょう。1回の授乳にかかる時間は、15~20分くらいが目安ですが、授乳に慣れないうちは30分ほどかかることもあります。途中で左右をかえて、どちらのおっぱいも飲ませるようにします。授乳の後は、母乳と一緒に飲み込んだ空気を出すため、縦抱きにしてゲップをさせてあげます。

授乳時間・回数

授乳の回数は、赤ちゃんの成長に応じて変わります。生まれてしばらくは、1回に飲める量が少ないので授乳回数が多く、授乳間隔も不規則です。飲み方が上手になるに従って、回数が少なくなり、間隔があいて規則的な授乳リズムになっていきます。

そして、赤ちゃんの成長とともに1度の授乳で飲む量は増えていきます。離乳食がはじまっても、基本的には母乳は欲しがるだけあげてOK。離乳食を食べることも含めて1日の生活リズムが整うことにより、授乳はだんだんラクになっていくでしょう。

授乳中はおっぱいのトラブルも

授乳のリズムが安定するまでは、乳首に傷ができる、乳房が張って痛い、乳腺炎になるといったトラブルが起こりがち。

乳房が張って痛いときは、こまめに赤ちゃんに飲ませる他、タオルでくるんだ保冷剤などで乳房を冷やします。ママが気持ちいいと感じる程度にやさしく穏やかに冷やすのがポイントです。搾る方法もありますが、母乳は分泌した(出た)量を生産するので、次の授乳まで痛みでつらくならない程度に少しだけ搾るようにしましょう。

乳首に傷ができて直接飲ませることがつらいときは、授乳時間を短くする、さく乳した母乳を哺乳瓶で与えるなど、乳首を休ませることが大切です。乳首にクリームやオイルを塗って保護しておくこともよいでしょう。痛みの程度が軽い場合は、乳頭保護器で乳首をカバーしながら飲ませる方法もあります。

ママの乳首が小さい、または陥没・扁平乳頭で赤ちゃんが飲みにくいという場合は、授乳前におっぱいマッサージをして乳首をやわらかく伸びやすい状態にしておくのがおすすめです。乳頭吸引器で乳首を引き出して赤ちゃんが飲みやすくする方法もあります。また、縦抱きやフットボール抱きで授乳すると、赤ちゃんの口の状態がよく見えて、頭の位置が安定しやすくなるので試してみてください。

乳頭や乳房のトラブルの原因や症状はさまざまなので、症状がひどいときや痛みがおさまらない、うまく授乳できないなどの場合は、出産した産院の母乳外来や助産院などに相談しましょう。

母乳が足りていないかもと思ったら

おっぱいをあげてもすぐ泣く、おっぱいをなかなかはなさないなど、「母乳が足りないのかな」と不安になることがあるかもしれません。体重が増えない、いつも機嫌が悪く眠りも浅い、おしっこや便の回数が少ないなどの様子がみられたら、母乳が足りていないことが考えられます。そんなときは1人で抱え込まずに、赤ちゃんとママの1ヵ月健診時や母乳外来、助産師訪問などで専門家に相談しましょう。赤ちゃんの体重の増えや飲み方、授乳姿勢、ママのおっぱいの状態などをトータルで見てもらうと安心です。

母乳育児が軌道にのるには時間がかかるもの。赤ちゃんが吸う刺激で母乳は作られ分泌も増えていくので、焦らずおおらかな気持ちで授乳タイムを楽しみましょう。

ミルクが必要になるとき

母乳だけで足りないときは育児用ミルクを足します

母乳だけで足りないときは、育児用ミルクを足す「混合栄養」という方法があります。方法はさまざまですが、例えば下記のような方法があります。

・母乳をあげた後で、足りないときにミルクを飲ませる
・夜だけ、あるいは昼だけミルクにするなど、母乳を休んでミルクを飲ませる
・母乳での授乳の際に、1回おきにミルクを足す

母乳は回数が減ると徐々に分泌が悪くなることがあるので、母乳育児を希望していて、足りないなどの理由でミルクをあげるときは、足す量を少し少なめにして、母乳を吸ってもらう回数が減らないように注意しましょう。生後1ヵ月くらいは、1日8回以上の授乳が理想的なので、なるべく母乳をあげる機会が1日8回以上になるよう工夫しましょう。産院からの退院時や母乳外来などで、相談して進めると安心です。

また、おっぱいトラブルで一時的に直接母乳をあげられないときもあります。そんなときは、さく乳した母乳を冷凍保存しておき解凍して飲ませる、乳頭を休ませるために母乳を中断してミルクを飲ませることもあります。トラブルが起きたときは早めに母乳外来や助産院で相談しましょう。

監修してくれた先生

保田典子先生 加藤千晶

杏林大学保健学部看護学科 准教授
助産師として約10年大学病院にて勤務。その後、看護・助産教育に約15年携わり、産科病院にて看護部長を経験。現在、杏林大学保健学部看護学科准教授として助産師教育に携わっている。

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